太平洋セメント、バイオマスで売電参入

太平洋セメント、バイオマスで売電参入

概要
太平洋セメントは、バイオマス(生物資源)発電による売電事業に参入します。
岩手県の大船渡工場に子会社を通じて発電プラントを新設します。投資額は235億円で、発電された電力は、新電力大手のイーレックスに販売します。
今まで使用が困難だったパームヤシ廃棄物を燃料化できる技術を開発して、コスト競争力を高めます。

主力のセメント事業は、2020年の東京オリンピックの特需は見込めますが、2020年以降の需要が不透明で、長期的には需要減傾向が続くと考えられます。

電力販売には、国の買い取り制度を利用して年間110億円程度の売上げを想定しており、東京オリンピック後の安定的な収入源とします。

1.発電プラントの概要

太平洋セメントは、2016年8月に電力卸売りの子会社を設立します。資本金は40億円です。この子会社が、岩手県大船渡市の太平洋セメント大船渡工場の敷地内に発電プラントを建設します。

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発電能力は、75,000kW時で、バイオマス発電としては国内最大規模になります。稼働開始は2019年秋を計画しています。

発電した電力は、国が制定した再生可能エネルギー買取り制度(FIT)の価格で、全発電量をイーレックスに販
売します。

燃料は、パームヤシ殻や、低価格のパームヤシ空果房(FEB)を使用します。このうち、FEBは、パーム油を製造する際に残る房で、水分や不純物が多く、これまでは燃料としての使用が困難なため、廃棄していました。

太平洋セメントは、FEBの加工技術を独自に開発して、燃料として利用可能にしました。パームヤシ殻は、発電用需要が増えて価格が値上がりしています。FEBの採用で発電コストを下げる予定です。

2.太平洋セメントの事業に占める発電事業の役割

太平洋セメントは、2015 ~ 2017年度に約1,000億円の成長投資を計画しています。今回建設されるバイオマス発電設備は、投資の4分の1を占める規模になります。本業のセメント事業では過去10年、200億円を超える設備投資はありません。

太平洋セメントは、運転期間が40年を超えた火力発電設備を、バイオマス発電設備に変更する検討も始めました。藤原工場(三重県いなべ市)と大分工場(大分県津久見市)の設備切換を視野に入れています。

3.セメント市場の現状

国内のセメント市場は、縮小傾向が続いています。セメント協会(東京都中央区)によると、2015年度の国内需要は、前年比6.3%減の4,266万トンで、2年連続のマイナスになっています。
2016年4 ~ 6月の需要も前年同期を6.7%下回りました(2016/7/28公表)。2020年の東京オリンピックに向けての特需は見込めますが、オリンピック後の反動減も予想されます。

セメントの国内需要の推移_frm セメント協会HP

セメント各社は、海外市場に活路を求めていますが、製品の性質上セメントは現地の建設業者との関係が重視される地域性の高い製品です。業界最大手の太平洋セメントは、2015年に米国のセメント企業から工場を買収しましたが、海外売上高比率は25%にとどまっています。

4.セメント業界の発電事業への関わり

バイオマス発電事業は、国の固定買い取り制度により、長期的に安定した収入が見込めるが、セメント各社は、生産設備の停止が問題になるため、もともと自家発電設備を使用しています。そのため、既につちかっている発電設備運用のノウハウが生かせます。

5.セメント業界以外のバイオマス発電への取組み

バイオマス発電には、内需型の企業の参入が相次いでいます。
製紙業界では、王子ホールディングスと三菱製紙は、青森県に木材チップなどを燃料にする発電所を建設します。大王製紙は、パルプ製造時の廃液を使用する発電所を建設する計画です。
その他、産業用ガスのエア・ウォーターは2020年に福島県で、バイオマス発電所を稼働させる予定です。

これら、セメント、製紙、産業用ガスのいずれの業界も、国内市場の縮小が経営課題になっています。バイオマス発電は、内需型製造業の収益確保の、一つの手段になりつつあります。

引用元: 日本経済新聞 2016/7/29朝刊
      (社)セメント協会

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