3.2 模型の種類
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3.2 模型の種類
1. 現型(solid pattern)
模型として一般に多く使用されている現型、および割り現型(split pattern)を図3.2.1に示します。
図3.2.1(a)は現型を示します。これは鋳物の形状とほぼ同一の形をした模型です。
図3.2.1(b)は割り現型で、模型を上下の二つまたは、それ以上に分割しなければ鋳型から模型が抜き出せない場合、あるいは中空鋳物を製造するときには、外型である主型(master mold)に内型の中子(core pattern)をおさめるので、模型を分割します。この場合の模型は通常上下二つ割りになっていて、中子を支えるため通常は突起物が付いています。この中子を支える部分を幅木といいます。
幅木を付ける目的は、
(1)中子を外型におさめるとき,中子の位置を決めるため。
(2)注湯したとき、中子が浮力で移動しないように、中子を所定の位置に固定するため。
(3)注湯したとき、中子から発生するガスを、幅木を通して外部に抜くため。
などがあります。
なお、中子については、2.3項も参照してください。
2. マッチプレート(match plate)
マッチプレートは,鋳物の製作個数が多い場合に使用されます。これは抜き枠を利用して造型の生産性を高めた模型です。
図2.3.2に、マッチプレートの例を示します。模型を上型、下型に分割して、1枚の定盤の両面に上型,下型模型を取付けた模型になります。定盤には湯口系の湯道、せき、および湯口底が取付けてあります。湯口棒は定盤
には付いていなませんので、上型造型後、パイプで湯口をあけるなどの方法をとります。
マッチプレートは迅速に多量の造型を行うので、造型機(molding machine)を使用して造型します。迅速な造型ができて、しかも型抜きはバイブレータで震動を与えながら行うので、緩みが少なく正確な寸法の鋳物ができるため、品質的にも経済的にも優れた造型法といえます。この模型は作業者が鋳型の反転、型抜きを行いますので、大きさに制限があり、比較的小物の製造に適しています。
定盤は金属あるいは木材を使用します。金属の場合は、軽くて取扱いが容易なアルミニウム合金板が最も多く使用されています。木材の場合は、積層ベニヤ板を使いますが、反りやすいので厚いものを用います。使用寿命の点で摩耗しやすい、定盤と枠抜きの接触面には、鋼板を取付ける場合もあります。
模型は、金属製、あるいは木材製、樹脂製のものがあります。金属製では、アルミニウム合金が多く用いられ、定盤と模型を一体鋳造することが多いです。この場合は、木型の現型模型を用い鋳造して造られます。例えば、鋳物の材料がねずみ鋳鉄であれば、模型材料のアルミニウム合金とねずみ鋳鉄の縮みしろの和を見込んで,その現型模型の木型を製作する必要があります。
3. パターンプレート(single side pattern plate)
パターンプレートは、上型、下型に分割した模型を、別々の定盤に取付けた模型です。これは、上型、下型の鋳型を別々の造型機で、別々に造型してから、抜き枠または枠どうしをピン合わせにより上型・下型を組合わせます。
型抜きを、造型機の機械力で行うので、造型機に合わせて大型化でき、マッチプレートでは扱えないような大物を迅速に造型できます。また小物の場合は多数込めが可能になります。
定盤は強固な構造を必要としますので、鋳鉄製が多く用いられ、その上に模型が取付けられます。模型は耐摩耗性を考慮して金型で鋳鉄製が多く使用されます。
パターンプレートは、マッチプレートの場合より模型の製作費はかさみますが、迅速に造型できますので、造型費の低減により多量生産の場合には採算が十分にとれます。
4. その他
鋳物の形状が大きく、単純で製作個数が少ない場合は、模型費が高価になるため、造型用に特殊な模型が用いられます。
ここでは、引き型(sweeping pattern:回し型)、かき型、骨組型を説明します。
(1) 引き型
図3.2.3は、梵鐘の鋳型を製作するときに使用する引き型を示します。図3.2.3(a)は外型用、(b)は中子用引き型を示します。
引き型は、鋳物の形が円盤形、または円筒など環状の外型および中子を作るときに使用されます。鋳造品断面の半分の輪郭をかたどった引き板を回転軸に取付けて、この軸を中心に引き板を回転しながら造型することができます。
(2)かき型
図3.2.4に、かき型の例を示します。図3.2.4(a))は外型用かき型、(b)は中子用かき型を示します。かき型は鋳物の形が細長く、断面が一様な大物のパイプや、曲がりパイプ、また、断面が円形に限らず、断面が一様なものを作るときに用いられます。
鋳造品断面の半分に等しい形状を板に切抜き、かき板として案内板に沿って移動して造型します。
(3)骨組型
図3.2.5に、骨組型の例を示します。骨組型は製品の要所要所の断面を板に切り取って並べ、この板を骨格状に組立てたものです。骨格の間には粘土水を混ぜた砂をつめて、その表面をならして模型を作ります。
引き型および、かき型、骨組型とも、模型費は現型と比べてはるかに安価ですが、造型作業に特殊な技術と時間を要するので、造型費がかさみます。鋳造作業者の熟練を要します。
(4)おいてこい
図3.2.6においてこい(loose piece)の例を示します。
この例では、模型の垂直面に突起物があるので、鋳型を壊さずに模型を抜くことができません。その対策として、A 部とB 部をあり止めで付けた、おいてこいにすることがあります。あり溝を有しているので、A 部を鋳型から抜き取ると、突起部のB 部は鋳型の中に残ります。次に、B 部を鋳型から抜き取ります。これをおいてこいといいます。
参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章
引用図表
図3.2.1 現型と割り現型 機械工学便覧 第6版 β03-02章
図3.2.2 マッチプレート 機械工学便覧 第6版 β03-02章
図3.2.3 引き型 機械工学便覧 第6版 β03-02章
図3.2.4 かき型 機械工学便覧 第6版 β03-02章
図3.2.5 骨組型 機械工学便覧 第6版 β03-02章
図3.2.6 おいてこい 機械工学便覧 第6版 β03-02章
2016/11/4
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。