7.6 環境衛生設備(environmental sanitation)
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7.6 環境衛生設備(environmental sanitation)
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鋳造工場は砂を多用するので、比較的粉じんが出やすい環境です。作業環境の保全から、工場内の通気を考慮しなければなりません。発生個所では、局所排気装置の設置などの局所対策が必要です、
(1)集塵装置(dust collector)
鋳造工場のキュポラ、電気炉、砂処理装置、注湯場などから出るばい煙や粉じんの対策には、乾式や湿式の集じん装置が用いられます。
労働安全衛生法では、土石等の粉じんの取扱い職場については作業環境測定が義務付けられています。
鉱物性粉じんの管理基準は、次式であらわされます。
ここで、
E: 管理濃度(mg/m3)
Q: 当該粉じんの遊離ケイ酸含有率(%)
です。
得られた結果により、第1から第3管理区分に分けられており、第1管理区分は維持継続、第2,第3管理区分は改善が要求されます。 これらの測定は、労働安全衛生法により義務付けられています。ちなみに、鋳物工場は粉じん以外にも、暑熱、騒音等作業環境上、注意を払わねばならない場合が多く、注意が必要です。
粉じんは、鋳物工場内の発生個所により性状が異なり、溶解ヒューム系、生砂系、中子(シェル砂)系、仕上げ系に分けて管理されます(図7.6.1)。
作業場の粉じんを集めるにはフードを設け、ダクトを通して排出します。フードは粉じん発生箇所をできるだけ包むように設け、ダクトはできるだけ曲がり部などが無いように設計します。粉じんをフードに吸引するために必要な風速は粉じんの発生条件によって異なりますが、注湯作業場、砂混練作業場、型ばらし場の順に大きくする必要があります。
ダクトでの抵抗損失などを考慮して、フード入口でこの値になるように排風機の容量を選定する必要があります。
フードは、シェイクアウト(型ばらし)、コンベヤの落とし口、スクリーンなどに設置されています。シェイクアウト部からの蒸気含じんガスの吸引については、ガス中の水分を考慮して吸引ガス温度が露点に達しないように、高温排ガスを引き入れます。
バグフィルタは、円筒または扁平な袋で、ろ布に付着したほこりの層によって粉じんをろ過します。ポリエチレン製の織布で、微細な粉じんまで捕捉することができ、しかも圧力損失も比較的小さいので、特に高い集じん効率を必要とする場合に用いられます。ろ布についた粉じんは、一定時間ごとに揺動、逆圧、圧縮空気噴射により払い落とします。
(2)気中有害物質(ガス)と臭気
鋳造工場のにおいは、炭素系物質の不完全燃焼による焦げ臭さによるものです。成分濃度は低く健康上大きな問題にはなりませんが、嫌悪感が強くなります。対策としては、脱臭装置が用いられます。従来の薬液洗浄・吸着方式から(触媒)燃焼方式に移行しています。
(3)騒音対策
一般的には、騒音発生源を覆って騒音の低減を図ることが多く実施されています。目標値として騒音レベルを工場内80dB 以下、工場境界線で50dB 以下としています。
集じん機の送風機とモータについては、防音室へ格納し、消音器設置、ラギング処理を行います。
シェイクアウトマシンは、砂落とし時に100dB(A)を超えるので、防音室へ格納し、製品の出入口も扉で遮断するなどの対策を行っています。建屋壁自信を防音壁としたり、工場境界線に遮音塀を設けることも行われています。
(4)振動
振動加速度の大きいジョルトを使用しなくなってきているので、振動は低減されてきています。
大型のシェイクアウトマシンなど、振動の大きい装置は、装置の固有振動数を考慮した基礎工事を行う必要があります。
(5)産業廃棄物
廃棄物は、溶解材の種類によって異なりますが、鋳物廃砂、スラグ、ダスト(溶解およびその他)、れんがくず等があります。
金属の再資源化率は高いですが、従来は廃棄・埋立処分をしていた廃砂やダクトなども分別処理されて、骨材やセメントなどへの有効利用が進み、ゼロエミッションへの試みが進められています(図7.6.2)。
参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章
引用図表
図7.6.1 鋳物工場の集じん測定例 機械工学便覧 第6版 β03-02章
図7.6.2 集じんダスト分散システム 機械工学便覧 第6版 β03-02章
2016/11/5
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。