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Contents
二次電池の種類(secondary battery type)
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1. はじめに
別のコンテンツでも述べましたが、「化学電池」は、放電のみが可能で使い切った後に廃棄する一次電池と、充放電が可能で繰り返し使用可能な二次電池とがあります。これらの化学電池は、何れも電解質の両端に正負の電極が設けられています。
二次電池は、酸化還元反応を行う正極/負極の2つの活物質(active materials)と、電解質(electrolyte)、電極(electrode)、セパレータ(separator)から構成されており、電子のやり取りを行います。
ここで、言葉の意味を少し述べておきましょう。
・活物質:その酸化還元反応によって電⼦の受け渡しを⾏う物質を活物質といいます。還元されやすい正極活物質、酸化されやすい負極活物質を⽤いて、両活物質に共に逆反応が進⾏する物質を使うことで蓄電池となります。
・電解質:全体のイオン平衡を保つためセパレーターを介して移動するイオンのことを電解質といいます。
・電極:活物質の酸化還元反応の反応場となります。
・セパレータ:正/負極の活物質が混ざらないようにする役⽬と、電解質をスムーズに透過させる役⽬を同時に満たす仕切り材料が求められます。
本コンテンツでは、二次電池として一般的な、鉛蓄電池、ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池について、簡単に見て行こうと考えます。
2. 二次電池の比較
代表的な二次電池の特性について、定性的に比較した文献を見つけました。これを参考に、もう少しわかりやすくしたものを、表1 に示します。
表1二次電池の特性
3.二次電池の特徴
代表的な蓄電池について、それぞれの特徴を簡単に示します。
(1)鉛蓄電池
鉛蓄電池は二次電池の中でも、その歴史は古く、1859年にフランス人のプランテ(Gaston Planté、1834-1889)により発明されました。イタリア人のボルタ(Alessandro Giuseppe Volta、1745-1827)がボルタ電池と呼ばれる化学電池を発表してから60年後のことでした。
鉛蓄電池は、製品として多くの改良は加えられているものの、現在に至るまで広く使われています。身近な例としては、自動車のバッテリーに使われて、ガソリン車のエンジンを起動する際などに用いられています。
鉛蓄電池は,正極活物質に酸化鉛(PbO2) ,負極活物質に 鉛(Pb),電解質に希硫酸(H2SO4)、電極には鉛または鉛合⾦(鉛とスズ、カルシウムの合金など)を用いて、電極上での酸化還元反応により充放電が⾏われます.
(2)ニカド電池(ニッケルカドミウム電池,NiCd電池)
ニカド電池は、1899年にスウェーデンのユングナー(Waldemar Jungner、1869-1924)が発明し、正極にニッケル、負極にカドミウム、電解液にアルカリ水溶液が用いられました。当初の問題点であった、充電時に発生するガスによる内圧上昇とそれに伴うケース破裂を、1948年にフランスのノイマンにより、完全密閉化技術の確立により解決してから実用化が進みました。
商品化は1960年にアメリカではじまり、⽇本でも1963年に三洋電機が、翌年には松下電器産業(現パナソニック)がそれぞれ商品化しました。なお、この電池の名称としてよく使われている「ニッカド電池」や「カドニカ電池」は三洋電機の商標ですので、JIS規格では「ニカド電池」と記述されています(JIS C 62841-1:2020)。
ニカド電池は過充放電に強く、⼤電流の放電が可能な特性があり、充電式⼯具や掃除機等のモータ駆動、⾮常⽤の電源等に⽤いられてきました。
ニカド電池には構造上2種類が存在します。モータ駆動のための⼤出⼒の放電が可能な焼結式、電源としての⽤途に適した⽐較的⼤容量の発泡式がありますが、特に後者の⽤途においてはでニッケル⽔素電池やリチウムイオン電池に置換えが進んでいるようです。これは、ニカド電池はメモリー効果が顕著で継ぎ⾜し充電に向かないことも理由になっています。
ニカド電池は正極に水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、負極に水酸化カドミウム(Cd(OH)2)、および水酸化カリウム(KOH)水溶液(電解液)と不繊維で構成されたセパレータで構成されており、1.2Vの公称起電⼒を持ちます。
(3)ニッケル水素電池
ニッケル水素電池は,ニカド電池の負極を水酸化カドミウムから水素吸蔵合金(M)に置き換えた電池です。
1990年頃からニカド電池からの置き換えが進みましたが、2005年に、三洋電機が自己放電特性を改善した”eneloop”を発売して、乾電池型二次電池の分野では主流になっています。ニカド電池の2.5倍程度の電気容量(単三型充電池;2500mAh)を実現しており、またカドミウムを含まないこと、電圧がニカド電池と同じ1.2Vであることなどより、ニカド電池からの置き換えが進みました。
ニッケル⽔素電池の充放電は、⽔素を吸蔵して⽔を⽣じるという単純な反応によって起こるものです。 例えば、⾃動⾞のバッテリーに⽤いられる鉛蓄電池は、電極の析出溶解反応で充放電を⾏うため、充放電を繰り返すと電極の劣化が避けられません。ニッケル⽔素電池にはそのような劣化モードはないため、 1000回以上の放充電サイクル寿命があると言われています。
(4)リチウムイオン電池
リチウムイオン二次電池のルーツは、1970 年代に一次電池として実用化された小型軽量、かつエネルギー密度の大きなリチウム電池にさかのぼります。リチウムは、酸化還元電位が3.03Vで最も卑な金属ですので、電池の負極として用いると非常に大きな容量を得ることができます。しかし金属リチウムは二次電池とした場合、充電時にリチウムの電極上にリチウムの針状結晶が生成(デンドライト析出)して、セパレータを破損する危険性がある為、リチウム二次電池の実用化は困難でした。
多くの研究者が、この問題の解決に取組みましたが、旭化成工業の吉野彰博士が、負極活物質にリチウムを吸蔵出来る黒鉛(グラファイト)を、正極活物質にコバルト酸リチウム(LiCoO2)、有機電解質の組合せによる、リチウムイオン二次電池の基本概念を確立しました(1985年)。
リチウムイオン電池は、有機電解液を使用しており、ニカド電池。ニッケル水素電池のような水系電解液を用いた場合の起電力1.2V(理論上1.5V以上の起電力は得られない)と比較して、約3.6Vの起電力が得られてエネルギー密度が飛躍的に向上しました。
正極活物質、負極活物質ともいろいろな材料が実用化されています。
参考文献
リチウムイオン二次電池用電極材料 石井壮一郎他 東海大学紀要工学部Vol.,No.,2000,pp.
リチウムイオン電池総論 吉野彰 ぶんせき 2013 10
Wikipedia
引用図表
表1 二次電池の特性比較 参考:ペンギンワックス株式会社様HP(https://www.penguinwax.co.jp/) Li-ionバッテリー資料
ORG: 2022/10/30