2.2 破断面の洗浄(Cleaning of fracture surface)
2.2 破断面の洗浄(Cleaning of fracture surface)
破断面が汚染されている場合は、汚染されている状態の写真を撮影してから、洗浄する必要があります。
まず、油などの有機物で汚れている場合は、界面活性剤を適量加えた清浄な水をビーカなどに入れて、さらにその中に試料を入れて、超音波洗浄器で洗浄します。表面からの汚れの浮き具合を見ながら洗浄時間を調整します。特に、電子顕微鏡で観察する場合は、電子顕微鏡への影響を少なくするため、試料に付着している油分や有機物はできるだけ除去するのが望ましいです。
錆やスケールで表面がおおわれている状態の場合は、その除去を検討しなければなりません。錆の除去方法として代表的なものを表2.2.1に示します。
[表2.2.1] 破面洗浄方法の例
(1)機械的除去方法
破面にアセチルセルロースのフィルムを数枚貼り重ねて、繰返しはぎ取ることによって表面の錆やスケールの除去に適しています。これは、透過型電子顕微鏡による観察の際に良く使用されたブランクレプリカ法になります。この方法は、ごく薄い錆や少量の付着スケールの除去に適しています。通常は、(2),(3)に示す手法を行った後に実施するのが有効です。
(2)化学的除去方法
少量のインヒビターを入れた希塩酸で、酸洗いする方法です。酸洗いは通常数分で終わりますが、超音波洗浄器を利用して洗浄効果を高め、また時間短縮も図ることができます。
(3)電解除去方法
インビビターを入れた希硫酸であるいはシアン系の塩の溶液中で陰極分解して、発生した水素ガスで錆をはく離除去する方法です。
この3種類の方法の内、(1)のアセチルセルロースを貼り付けて除去する機械的な除去が破面の保存状態が最もよいといわれていますが、必ずしも十分に除去できない場合もあります。その場合は(2)の酸洗いを行ってから、(1)のブランクレプリカ法を行うとよいといわれています。この場合、錆を完全に除去するのではなく、軟質部分のみ除去する方が観察面の状態が良いといわれています。
参考文献
100事例でわかる 機械部品の疲労破壊・破断面の見方 藤木榮 日刊工業新聞社
フラクトグラフィとその応用 小寺沢良一 日刊工業新聞社
機械部品の破損解析 長岡金吾 工学図書
引用図表
[表2.2.1] 破面洗浄方法の例 フラクトグラフィとその応用