4.1 マクロ的な破面観察の重要性(Importance of macroscopic fracture observation)

4.1 マクロ的な破面観察の重要性

スポンサードリンク

 

マクロフラクトグラフィは、破面解析の第一歩で、通常は最初に、肉眼や実体顕微鏡、または走査型電子顕微鏡による低倍率観察で行います。
ミクロフラクトグラフィの基礎になるもので、事故解析の場合は、マクロフラクトグラフィのレベルで、破面の特徴的なパターン時より破壊機構が推定できることが多いです。破断部と構造物全体との関連も把握できるので非常に重要な方法です。
特に、破壊の起点の位置や伝ぱ経路を特定することは、フラクトグラフィの第一歩になり、非常に重要な事項ですが、多くの場合、マクロ的な破面観察により判定できます。

延性破壊の場合に観察される繊維状破面、及びせん断破面や、脆性破壊の破面に観察される結晶質破面、及び粒界破面、さらに疲労破壊の場合に観察されるビーチマーク状破面(貝がら状破面)は。何れも肉眼で観察されます。
また、脆性破壊の破面にあらわれるひだ模様、山脈模様や、疲れ破面のラチェットマークやこれに類する放射状のひだは、破壊が伝ぱした方向をに一致します。

これらの模様のマクロ的な破面観察は、破面に生じた細かい凹凸による光学的なコントラストによるので、照明の状態が非常に重要です。照明の方向は、破面に垂直よりも斜め方向に照射するのが有効な場合が多く、光線に対して破面の向きをいろいろ変えることによって破面全体の様相が明らかになります。
従って、一方向からの照明による写真は、部分的に適当であっても全体の記録として不完全になる場合が多く、いろいろな角度からの撮影と、破面のスケッチによる観察図の作製が必要となります。。

材料の破面は、一般に形式の異なる幾種類かの破壊形態を含みます。別項目で述べる平滑軸材のカップアンドコーン型破壊では、引張方向に垂直な繊維状破面(F:Fibrous)とその周囲の放射状破面(R:Radial)、及びさらにその周囲の引張方向とほぼ45°の最大せん断応力方向にせん断破壊した部分(SL:シャーリップ;shear lip)からなっています(図4.1.1,図4.1.2)。

 

衝撃荷重による破面の場合も、基本的には上記の静的な引張荷重の場合と変わりがなく、3つの領域にあらわれます。その割合も、静的な場合と同様に、温度や試料の形状、寸法によって異なります。低温なほど、
放射状破面の割合が多く、高温になるに従って繊維状破面の割合が多くなります。

また、疲労破壊の場合は、一般的に疲労破面の他に、脆性破面、せん断破面が観察されます。破壊の発生から最終破断に至る過程において、破壊に関与する力学的な条件が変化するため、異なる形式の破面が現れます。
異なる破面が形成される順序を判断することにより、破壊の開始点がわかります。一般的には、延性破壊、脆性破壊では、引張応力が作用する方向もしくは部材表面に直角な破面が先に形成されます。続いてシャーリップが発生して完全に破断します。
もちろん、破壊の過程で、負荷条件が著しく変化した場合は、あるいは部材断面が複雑な形状の場合は、破面の形成順序が標準的な順序とは異なる場合もあります。

実際の機器損傷やそれに伴う事故発生時の調査で、マクロフラグトグラフィはまず発生現場でその威力を発揮します。マクロフラクトグラフィによる調査の特徴は、破損部材の破面をそのまま手を加えずに観察対象にできることです。そのため、損傷現場で発生原因に関係がある破損部材を選択して、詳細な調査のための試料をどのように採取するかの判断は、破損解析の担当者のマクロフラクトグラフィに対する知識と、それをミクロフラクトグラフィで観察される現象との関連付けができる知識に依存します。
しかし、試験室で観察を行う場合と比較して、観察条件が悪いなどの多くの制約を受けます。また、多数の部材が破損した場合は主要な破壊原因がどれにあるかを見落とす重大なリスクがあります。繰返しになりますが、損傷現場でのフラクトグラフィの応用には、時間的、空間的な制約を前提とした、速やかな判断を行える能力を養成する必要があります。

破損解析の担当者に対して、マクロフラクトグラフィの教育と訓練を行うためには、実物の破壊結果を数多く観察することからはじめるべきです。 そのために最もよいのはそれには、材料試験における試験片の破面を観察することです。丸棒および板材の引張り試験片について機械的特性の異なる金属の延性破壊を観察し, さらに衝撃試験片の破面について温度を変化させた場合のせ’い性破壊を観察するようにして教育を進めればよいと考えます。疲労破壊の実例については、実際の機械部材の破損品が適当です。工場全体で、客先よりの破損解析依頼品や、保全時の修理品から観察試料を残すようにすべきと考えます。本原稿筆者のわずかな経験上からは、機械部品の破損のほとんどは、疲労破壊と考えられます。

 

参考文献
100事例でわかる 機械部品の疲労破壊・破断面の見方  藤木榮 日刊工業新聞社
フラクトグラフィとその応用   小寺沢良一   日刊工業新聞社
機械部品の破損解析   長岡金吾   工学図書
Fractography   ASM Handbook Vol.12   ASM International

 

引用図表
[図4.1.1] 引張破断面の3要素   機械部品の疲労破壊・破断面の見方
[図4.1.2] 実際の張破断面     Fractography   ASM Handbook Vol.12