CASE10:航空機の車輪ハブの破損(Failure of a Wheel Hub in an Aircraft)

CASE10:航空機の車輪ハブの破損(Failure of a Wheel Hub in an Aircraft)

 

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“Failure Analysis of Engineering Structures: Methodology and Case Histories”からの事例です(CASE 10)。
注記:[]内の文言は、管理人の追記です。

1. 概要

航空機のタイヤがエア充填中に破裂し、ホイールのハブが破断しました。破断面にはフランジのフィレット付近に円周方向の亀裂が観察されました。この亀裂は外面から内面に進行しており、破面解析によりへき開モードであることが確認されました。リムは過剰な空気圧によって破損しました。

2. 背景

破損状態をマクロ的に観察すると、ホイールハブが二つに分かれ、三本のタイロッドで保持されていることが確認されました。これらのハブはマグネシウム-アルミニウム合金で作られており、一方のハブが外側に分離し、フランジが完全に欠けている状態が観察されました。

 

3. 一般的な物理的特徴の視覚検査

ハブは等分に配置された3本のタイロッドで接合された2つの部品から構成されています。タイヤは2つのフランジにより所定の位置に保持される構造です。ハブの材質は、マグネシウム-アルミニウム合金です。
破損品の全体を、図CH10.1に示します。図CH10.2は、ハブの半分が外側に向かって分離して、フランジ部が完全になくなっていることを示しています。
図CH10.3は、ハブの破断面のクローズアップを示しています。3本のタイロッドのうち2本がナットが付いたまま残っており、エアバルブ近い方のタイロッドは無くなっており、ボルト穴は斜軸側に広がっていることが観察されました。これは、リムが無くなったタイロッドに対して非常に大きな力を付加したことを示しています。

図CH10.1 破損応対の車輪ハブ  出典:Failure Analysis of Engineering Structures: Methodology and Case Histories CASE 10


図CH10.2ハブの分離  出典:Failure Analysis of Engineering Structures: Methodology and Case Histories CASE 10


図CH10.3ハブの破断面  出典:Failure Analysis of Engineering Structures: Methodology and Case Histories CASE 10

 

4. 検査手順と結果

(1)金属組織:

ハブ材質についての品質を確認するために、破断面付近から一部を切り取り、金属組織の観察を行いました。結果は、図CH10.4に示されているように、均質で、気孔や空隙がありませんでした。

図CH10.4ハブ材料の金属組織  出典:Failure Analysis of Engineering Structures: Methodology and Case Histories CASE 10

 

(2)SEMによる観察:

破断面の全周にわたり照査したとこ、破面と平行なフランジのフィレット付近に円周方向の亀裂が見られました(図CH10.5)。
破断面の小部分を切り取り観察すると、図CH10.5に示されるき裂付近をミクロ的に観察すると、図CH10.6に示すように、延性破壊であることを示すディンプルが観察されます。
破断面の内側では、急速な破壊を示すへき開破壊が観察されます(図CH10.7)。この表面には遅れ破壊の兆候はありません。

図CH10.5 破面付近の円周方向のき裂  出典:Failure Analysis of Engineering Structures: Methodology and Case Histories CASE 10

図CH10.6ディンプルが観察される破断面外周付近  出典:Failure Analysis of Engineering Structures: Methodology and Case Histories CASE 10

図CH10.7割れを示す破断面内部  出典:Failure Analysis of Engineering Structures: Methodology and Case Histories CASE 10

 

5. 考察

金属組織の検査により、ハブ材料の品質については良好であることが確認されました。ハブの破断面は、材料の延性に限界があるため、ギザギザになっています。フランジのフィレットの周囲全体にき裂が観察されることより、タイヤにより均一な力が加えられたことを示します。
周縁部付近の破断の状態は、最終的な急速な破壊の前に、変形があったことを示しています。亀裂はフィレットの外面から内面へ進行しています。

タイヤが破裂した際の充填圧力に関して調査したところ、充填中に圧力計が使用されていなかったことが報告されました。

 

6. 結論と推奨事項

リムの破断は、タイヤへのエア充填時に過剰な空気圧を付与したためと考えられます。遅れ破壊や材質不良についてのエビデンスは認められませんでした。
タイヤを充填する際には、圧力計を使用して圧力を監視することが必須です。また、タイヤの温度に応じて圧力が変化することも考慮することが必要です。
一般的には、タイヤの空気圧は、推奨圧力をわずかに下回る方が、超過するよりも安全側になります。

 

 

原文献
Failure Analysis of Engineering Structures: Methodology and Case Histories, V. Ramachandran, A.C. Raghuram, R.V. Krishnan, S.K. Bhaumik, ASM International, 2005.
CASE 10

図表:出典は何れも、Failure Analysis of Engineering Structures: Methodology and Case Histories CASE 10
図CH10.1 破損応対の車輪ハ
図CH10.2ハブの分離
図CH10.3ハブの破断面
図CH10.4ハブ材料の金属組織
図CH10.5 破面付近の円周方向のき裂
図CH10.6ディンプルが観察される破断面外周付近
図CH10.7割れを示す破断面内部

ORG:2024/07/10