2.2.2 焼ならしの種類

2.2.2 焼ならしの種類(Types of normalizing)

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1.普通焼ならし

普通焼ならしは焼なましの場合と同じ加熱温度で、1インチ角当たり30分程度保持した後、大気中で放冷します。これにより微細パーライト組織になります(図2.2.2.1)。

図2.2.2.1 普通焼ならし

比較的小型の部品では大気中での放冷で問題ありませんが、大型品の場合は熱容量が大きいので加熱炉から取出した後、冷却がなかなか進みません。そうすると、微細パーライト組織になりにくく、結晶粒を微細化できません。

対策として噴霧冷却を行います。噴霧冷却は水道のホースにエアを吹き込んで水滴にして広範囲に散布します。さらに大型品の場合は、加熱炉から取出した直後に大型水槽にワーク全体を浸漬して表面温度を硬化させます。表面温度が100℃程度になった頃合いに、ワークを取り出すことにより、内部の熱で表面に赤みが戻ります。この状態で放置すると全体として冷却速度は速くなります。

 

2.二段焼ならし

二段焼ならしとは、焼ならし温度から、ワーク表面に赤み(火色)がなくなる温度(約550℃)まで空冷し、その後はピットまたは箱内で徐冷する方法です(図2.2.2.2)。

図2.2.2.2 二段焼ならし

二段焼ならしは、効果は普通焼ならしと同じですが、大型部品(厚さ75mm以上)や高炭素鋼(0.6~1.0%C)に適用すると、白点や内部き裂を防止できます。白点とは、大型部品の内部に生じる細かい割れ(毛割れ)です。鋼中に含まれる水素が集積して発生するといわれています。この水素を鋼外に逃がすために、550℃以下の温度をゆっくりと冷却します。二段焼ならしは、新幹線のレールや車輪、車軸などの焼ならしに利用されています。

 

3.等温焼ならし

等温焼ならしとは、焼ならし温度で規定時間保持後、約550℃の等温炉に入れて約30分間等温保持した後、等温炉から取出して空冷する方法です(図2.2.2.3)。

図2.2.2.3 等温焼ならし

焼ならし温度から550℃まで冷却するためには、熱風を用いて5~7分間で550℃まで冷却するのが良い方法と言えます。この550℃という温度はS字曲線の鼻温度に相当します。
等温焼ならしは、S-C材や低炭素合金鋼の被切削性を改善する処理としてよく用いられます。

 

 

 

参考文献
鋼・熱処理アラカルト  大和久重雄  日刊工業新聞社
トコトンやさしい熱処理の本  坂本卓  日刊工業新聞社

 

引用図表
図2.2.2.1 普通焼ならし   参考:鋼・熱処理アラカルト
図2.2.2.2 二段焼ならし   参考:鋼・熱処理アラカルト
図2.2.2.3 等温焼ならし   参考:鋼・熱処理アラカルト

 

ORG:2020/08/08