6.3応力(stress)と強さ(hardness)
6.3応力(stress)と強さ(hardness)
スポンサーリンク
1.応力と強さとの関係
部品に引張りや圧縮などの負荷を加えると、材料が内部で変形を起こして、同時にその変形に対する抵抗力が発生します。この内部に生じる抵抗力を「応力」と定義します。
一方、硬さはある物体を他の物体に押し込んだ際に発生する抵抗の大きさとして定義されます。ただし、硬さは、塑性変形に対する抵抗の度合いを示すものです。
何れも場合も、物体から受ける抵抗の大きさを示し、単位もN/mm2で同じになります。
ただ一方で、応力は原則として負荷が消滅するとゼロになるのに比較して、硬さは塑性変形を伴なうところは異なります。
金属材料の硬さは、熱処理や加工方法によって大きく変化します。熱処理や加工の結果、応力が材料内に残り、この残留程度によって硬さは変化します。
2.応力の付加方向による硬さの変化
元のデータは不明ですが、大和久先生が著わされた入門書(やさしい熱処理)に示された事例ですが、例えば軟鋼では、応力をかけないでフリーの状態での硬さが、例えばHRB72とすると、この軟鋼を引張応力を負荷しながら硬さを測定すると軟らかく出ますし(HRB65)、圧縮応力を負荷しながら測定すると硬くなります(HRB74)。
また、曲げた鋼板の、凸側の硬さを測定すると、その鋼板の本来の硬さよりも軟らかい値が測定されます。またその反対側の凹側の硬さを測定すると硬い値が測定されます。
これらに共通していえることですが、曲げた方の凸側は引張り応力が発生しているので軟らかい値が、一方凹側には圧縮応力が発生しているので硬い値が測定されます。
また、これらの応力は活応力と呼ばれるものですが、残留応力の場合でも同様で、引張りの残留ストレスがあると軟らかくなり、圧縮の残留ストレスがあれば硬くなります。
残留応力の影響は、圧縮応力によるプラスの効果より引張応力によるマイナスの効果のほうが大きいですが、圧縮残留応力をうまく利用した例が、ショットピーニングです。
3.応力を開放したときの硬さの変化
鋼材を焼入れすると、硬くはなりますが、残留応力が残った状態です。このまま硬さを測ると、その状態での真の硬さが求まります。しかし、細かく切断して測定すると、硬さは変化します。これは、切断することにより残留応力が解放されるためです。
切断により、硬さが高くなるか低くなるかは、残留応力の状態によります。圧縮応力が解放されると硬さは低くなります。一方、引張応力が解放されると硬さは高くなります。
したがって、硬さの本当の値を求めるには、出来るだけ製品そのままの姿で測定するのが正しい方法といえます。硬さを測るために試験片を切り出すことは正しい硬さを求めることにはならないことに留意する必要があります。