4.4.5 サーボ弁
4.4.5 サーボ弁(servovalve)
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Contents
1. サーボ弁の概要と役割
サーボ弁は、精密なフィードバック制御を行うために使用される電気油圧制御バルブです。油圧システムにおいて、サーボ弁は微小な電気信号を入力とし、これを増幅して大きな油圧エネルギーに変換し、アクチュエータの制御を精密に行います。
高精度な制御が可能なため、サーボ弁を用いるサーボシステムは、航空宇宙産業、産業機械、自動車産業など、いろいろな分野で使用されています。特に、サーボシステムの核となるサーボ弁は、フィードバック制御が不可欠な要素であり、制御精度を向上させるための主要な要素となっています。
サーボ弁は、電気信号を元にして油圧アクチュエータの動きを制御することができるため、高速かつ正確な位置、速度や力の制御が可能になります。また、サーボ弁はフィードバック制御を用いるため、外部環境の変動や負荷の変化に対しても高い安定性を保ちます。
1.1 サーボ弁の基本的な仕組み
サーボ弁は、電子制御と油圧系を組合わせたバルブで、入力電気信号を受け取って、その信号に基づき油圧アクチュエータの動作を制御します。電気信号は、トルクモータやノズルフラッパーなどの油圧要素を用いて増幅されます。サーボ弁は入力信号を増幅し、これを油圧エネルギーに変換してアクチュエータを動作させることで、非常に高い制御精度を実現します。
1.2 フィードバック制御とは
油圧制御弁のうち、サーボ弁の特徴は、閉ループ(フィードバック)制御が適用されることです。フィードバック制御とは、システムの出力(例:アクチュエータの位置や速度)をリアルタイムで監視し、その情報を元に入力信号を調整して目標値に一致させる制御方式をいいます。フィードバック制御は、外部環境や負荷の変動に対して、高い安定性と精度を維持することができます。例えば、航空機の姿勢制御は、サーボ弁がフィードバック制御を用いてエルロンやエレベーターを正確に動作させ、飛行の安定性を確保します。
1.3 サーボ弁の構造と種類
サーボ弁は、その用途に応じていろいろな設計と構造を持っています。
最も基本的な構造は一段形もしくは直動サーボ弁と呼ばれるもので、電気出力で直接主弁を駆動します。リニアモータが直接スプールバルブを駆動します。これにより、入力信号に比例した油圧制御が行われます。
より高度な2段形サーボ弁では、トルクモータに電流に応じた電磁力によりアーマチュアを変位させる電気―変位部(一段目)と、アーマチュアによりノズル・フラッパーや噴射環(ジェットパイプ)ど、さまざまな変位―油圧変換増幅部(二段目)が組み込まれており、用途に応じて適切な制御性能が発揮されます。
これらの2段形構造により、高精度な位置制御、速度制御、力制御を可能にし、複雑で動的なシステムの動作を安定して維持することで、非常に大きな力や流量を精密に制御することが可能です。
1.4 サーボ弁の長所と課題
サーボ弁の最大の長所は、その高精度な制御能力にあります。フィードバック制御を活用することで、外乱や負荷変動に対しても速やかに回復する高い安定性を保ち、システムの性能を最大限に引き出すことが可能です。
また、高速応答性もサーボ弁の大きな長所で、特に動的な制御が要求されるアプリケーションでその力を発揮します。
一方で、サーボ弁は構造が複雑で高価であるため、初期導入コストが高く、定期的なメンテナンスも必要です。さらに、精密機器であるため、使用環境には高い清浄度が求められます。これらの課題に対応するためには、適切な設計と保守が不可欠です。
2. 油圧制御バルブの種類とその特徴
油圧システムにおける制御バルブは、システム全体の動作と性能を決 定する重要なコンポーネントです。これらのバルブは、流体の流れ、圧力、方向を制御し、油圧アクチュエータや他の機器に適切な動作を提供します。
制御バルブには、本コンテンツで記述するサーボ弁の他に、その用途や制御方式に応じていくつかの種類に分類されます。以下に、主要な電気コントローラを使用する油圧制御バルブの種類とその特徴について、さらに詳細に解説します。
2.1 スイッチングバルブ(オン・オフバルブ)
スイッチングバルブは、油圧システムにおいて流体の流れを、オン・オフするために使用される基本的なタイプのバルブです。このバルブは、流体の流れを完全に遮断するか、全開にするかの2つの状態で動作します。スイッチングバルブは、以下のような特徴を持ちます。
・ 単純な構造: スイッチングバルブは構造が単純で、比較的安価であるため、広範な用途で使用されています。
・ 高速応答: バルブの切換え動作が迅速で、特に緊急停止や安全装置としての使用に適しています。
・ 限定された制御: 流量や圧力の制御はできず、オン・オフの切換えしか出来ないので、用途が限定されます。
スイッチングバルブは、基本的な油圧回路や機械装置において流体の流れを制御するために頻繁に使用され、緊急時のシャットダウンや保守作業時の流体の隔離に役立ちます。
2.2比例制御弁
比例制御弁は、入力信号に比例した流量または圧力を制御できるバルブです。比例制御弁は、弁の調整部に比例ソレノイドを用います。比例ソレノイド部は、コイル固定磁極、稼働鉄心より構成されています。コイルに直流電流を流すと、発生した電磁力が可動鉄心に推力を発生させます。この推力により弁調整部を操作します。
サーボ弁と比較すると、
[長所]
・ フィードバック制御が必要ない。基本的にオープンループ制御系で使用される。
・ 弁構造が比較的簡単である。通常のソレノイド弁と同程度。
・ 通常の油圧機器程度の作動油清浄度の管理で良い。
[短所]
・ 応答性が低い。
・ 高精度が得にくい。
などの特徴があります。
比例制御弁には、下記に示すような種類があります(図 1)。
(1)比例電磁式直動形リリーフ弁:
(2)比例電磁式リリーフ弁:比例電磁式直動形リリーフ弁をパイロット部とし、本体はバランスピストン形の大容量リリーフ弁です。
(3)比例電磁式流量調整弁:流量制御弁の絞り開閉部に、比例ソレノイドを取付けた弁です。
(4)比例電磁式方向流量制御弁:方向切換弁のパイロット部の両側に比例ソレノイドを配置して、各々のソレノイド電流を制御することにより、流量と方向を制御可能にした弁です。
(5)簡易比例方向流量制御弁(マイクロプロセッサ搭載):切換弁にマイクロプロセッサを搭載して、ディジタルインジケータを確認しながら、押ボタン制御によりスプールの切換え速度を調整できるようにした弁です。ショックレス動作に不可欠な加速・減速時間が独立に設定できます。弁の機差によらず必要な条件を設定できます。
図1比例制御弁 出典:実用油圧ポケットブック2012年版
2.3サーボ弁
サーボ弁は、最も高精度な制御が可能な電気油圧制御バルブであり、クローズドループ(フィードバック)制御システムで使用されます。このバルブは、入力信号を増幅し、非常に高い精度で流体の流量や圧力を制御します。サーボ弁の特徴は以下の通りです。
・高精度制御: サーボ弁は、フィードバック制御によって非常に高精度な流量や圧力の制御が可能です。これにより、航空機の姿勢制御や高精度な産業機械の制御に適用されます。
・高速応答: サーボ弁は、入力信号に対する応答性に優れ、動的な制御が可能です。これにより、リアルタイムでの調整が必要なシステムで使用されます。
・複雑な構造: サーボ弁は、構造が複雑で高価であるため、特に精密な制御が必要な場合に限定して使用されます。作動油の清浄度が悪い場合は詰まりなどにより作動不良を起こしやすくなります。
定期的なメンテナンスが必要です。
サーボバルブは、航空宇宙産業、精密機械、自動車の電子制御システムなど、非常に高い精度と応答性が求められる分野で不可欠な油圧機器です。
2.4 デジタルバルブ
デジタルバルブは、マイクロプロセッサを使用して制御されるバルブです。マイクロプロセッサがステッピングモータに離散信号パルスを送信し、ステッピングモータがバルブの開度を制御します。デジタルバルブの特徴は以下の通りです。
・デジタル制御: デジタルバルブは、離散的なステップでバルブの開度を調整します。これにより、非常に正確で再現性の高い制御が可能です。
・プログラム可能性: マイクロプロセッサを使用して、複雑な制御ロジックやプログラムが実装でき、システムの柔軟性が向上します。
・高度な機能: デジタルバルブは、システムの状態をリアルタイムでモニタリングし、必要に応じて自動的に調整する機能を持つことができます。
デジタルバルブは、特に複雑で高度な制御が要求されるシステムにおいて、その能力を最大限に発揮します。たとえば、プロセス産業や精密加工産業において、非常に精密な流量制御や圧力制御が求められる場合に使用されます。
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3. サーボ弁の動作原理
サーボ弁は、最も高精度な制御が可能な油圧制御弁であり、クローズドループ(フィードバック)制御システムです。
電気―油圧サーボ機構は、電気信号を力や機械的変位に変換するための電気―変位変換部と、力や変位を油圧に変換し増幅する変位―油圧変換増幅部、フィードバック機構の3つの主要要素からなります。この内、電気―変位変換部、変位―油圧変換増幅部の最初の2段階を合わせて、サーボ弁のパイロット部と呼びます。3つの主要要素について概述します。
(1)電気―変位変換部:
電気ー変位変換部は、コントローラから出力された電気制御信号が、電磁モータに入力されて、比例機械信号に変換します。電磁モータには、比例ソレノイド、リニアフォースモータなどがありますが、一般的に用いられるのはトルクモータです。トルクモータとは、永久磁石を挟む形で固定されたN極(上部磁極)とS極(下部磁極)との間隙の中間にコイルを巻いたアーマチュアが位置したものです。アーマチュアに巻かれたコイルに直流電流を加えると、両側のコイルに流れる電流差に比例した電磁力により、アーマチュアが変位します。上下の両磁極と変位したアーマチュアとの間に磁気的な力が働き、コイルへの電流の極性と大きさに比例したトルクが、アーマチュアに発生します。
(2)変位―油圧変換増幅部:
二段目では、アーマチュアの変位を油圧に変換しますが、アーマチュアにより油圧噴射管を駆動して、入力信号に比例した噴射圧油を受圧部に分配させる噴射管方式と、対向ノズル間に置かれた、アーマチュアに接続されたフラッパーが入力信号により移動して、ノズルから噴射される対向ノズル間の流量差異により、ノズル内の圧力を制御する、ノズル・フラッパー方式とに、大別されます。
(3)フィードバック機構
フィードバック機構は、スプールの位置を検出し、その情報をコントローラに送り返す役割を果たします。このフィードバック信号は、コントローラが入力信号と比較し、必要に応じて調整を行うことで、目標の制御状態を維持するために使用されます。
詳細は、次項で説明します。
4. サーボ弁のフィードバック制御メカニズム
サーボ弁は、精密なフィードバック制御を行うために設計された電気油圧制御バルブです。フィードバック制御とは、システムの出力をリアルタイムで監視し、その結果に基づいて入力信号を調整することで、目標値に対して出力を一致させる制御方法です。サーボ弁においては、アクチュエータの位置、速度、力などの物理量を正確に制御するために、このフィードバック制御が不可欠です(図 2)。
図2 電気油圧サーボ機構 出典: 実用油圧ポケットブック2012年版
サーボ弁のフィードバック制御は、主に以下のステップで行われます。まず、制御対象(例:アクチュエータ)の現在の状態をセンサーで検出します。次に、その情報をコントローラが受け取り、目標値(設定値)と比較します。目標値との差(偏差)がある場合、その偏差を最小化するようにコントローラが制御信号を生成し、サーボ弁に送信します。サーボ弁はこの信号に基づいて油圧流体の流量や圧力を調整し、アクチュエータを動作させます。この一連のプロセスが継続的に行われることで、システムは高い精度で目標値に従った動作を維持します(図 2)。
サーボ弁のフィードバックメカニズムには、主に機械式フィードバック、電気式フィードバック、気圧式フィードバックの3種類があります。機械式フィードバックは、サーボ弁内のスプール位置をフィードバックワイヤやばねなどを用いてフィードバックします。電気式フィードバックでは、スプール位置を電気的に検出し、電気信号としてコントローラに戻します。気圧式フィードバックでは、スプールの動きに伴う圧力変化を利用してフィードバックを行います。
以下に、二段式電気油圧サーボバルブについて、各形式のフィードバックについて概要を示します。
(1)機械式フィードバック付きバルブ
図 3 は、機械式フィードバックの二段式電気油圧サーボバルブの構造を示します。
二段式電気油圧サーボ弁の第一段は、電磁式トルクモータとダブルノズル、フラッパーで構成されます。第二段は、フラッパーによって、両側ノズルに発生した圧力差によりスプールが油圧駆動されます。
機械式では、第二段と第一段との間のフィードバックは、フィードバックワイヤ(8)により実現されます。フィードバックワイヤは、一方の端がフラッパーに接続され、他端はスプール(9)の溝に噛み合っています。
スプールがゼロ位置から移動すると、フラッパーにトルク (フィードバックトルク) が発生して、アーマチュアトルクに対抗します。スプールの変位がフィードバックトルクとアーマチュアトルクとが等しくなると、フラッパーはほぼ中立位置に戻り、スプールの動きが止まります。実際には、フラッパーは中立位置からわずかに変位します。
フラッパー部は、フィードバックスプリング力を平衡化するのにちょうど十分な、非常に小さな圧力差を生成します。この配置により、スプールの変位と制御電流の比例関係が確保されます。
図3 機械式フィードバック付きバルブ 出典: Fluid Power Engineering
(2)電気式フィードバック付きバルブ
図 4 は、二段目の電気フィードバックを備えた、二段式電気油圧サーボバルブの構造を示します。スプール(9)は、誘導位置トランスデューサ(12)のコア(11)に接続されています。コアはトランスデューサのコイルシステム内で変位して、測定アンプの出力に電圧を生成します。電圧値はスプールの変位に比例します。フィードバック信号をコマンド信号値と比較することで、偏差を判定できます。結果として生じる偏差(エラー信号)は、電子制御システムを介して第一段に送られます。
この信号により、フラッパープレート (3)がジェットノズル(6)間を移動します。これにより、スプール側チャンバー(10)間に比例した圧力差が発生します。次に、スプール(9)とそれに取り付けられたコア(11)が、実際の値がコマンド値と一致するまで移動し、制御信号が再びほぼゼロになります。
作動油流量を制御するために、スリーブ(13)に対するスプール(9)の変位によって開口部が作成されます。開口部の面積と流量は、スプールの変位とコマンド電流に比例します。
図4電気式フィードバック付きバルブ 出典: Fluid Power Engineering
(3)気圧式フィードバック付きバルブ
気圧フィードバック付きバルブでは、スプールはスプリングで中心に配置されます (図 5 )。電源オフの状態では、スプール(9)は圧力バランスが取れており、スプリング(14)によって中立位置に保持されます。フラッパープレート(3)が電気信号によってオフセットされると、入力信号に比例して、スプールサイドチャンバー(10)間に圧力差が発生します。次に、スプールは、サイドチャンバーと制御スプリングの圧力差によってスプールに加わる力が平衡になるまで移動します。スプリングは、実際のスプール変位の小さな範囲に対して線形特性を持っています。したがって、制御スプールのストロークとサーボバルブを通過する流量は、入力電流に比例します。
図5気圧式フィードバック付きバルブ 出典: Fluid Power Engineering
これらのフィードバック制御メカニズムにより、サーボ弁は高い精度でアクチュエータの動作を制御することが可能となります。また、フィードバックループの設計や調整により、制御系の安定性と応答性を最適化することができます。たとえば、システムの固有周波数やゲインを適切に設定することで、外乱に対するロバスト性を高めることが可能です。
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5. サーボ弁の種類と構造
サーボ弁は、油圧システムにおいて精密なフィードバック制御を行うための重要なコンポーネントであり、その種類と構造によって様々な用途に適用されます。サーボ弁は主に1段式と2段式に分類され、それぞれに特有の構造と機能を持っています。以下に、サーボ弁の代表的な種類とその構造について詳述します。
(1)一段式サーボ弁
一段式サーボ弁は、シンプルな構造を持つサーボ弁で、主に小規模なシステムや低流量の制御に使用されます。このタイプのサーボ弁は、リニアモータと直結したスプールバルブ、および変位検出部で構成されています。リニアモータは電気信号を受け取り、その信号に比例してスプールを直接駆動します。これにより、バルブの開度が調整され、流体の流れや圧力が制御されます。1段式サーボ弁の利点は、構造が単純であるため、応答性が高く、信頼性が高いこと、および製造コストが比較的低いことです。製鉄設備などに用いられています。(図 6)
図6 一段式サーボ弁 出典: 実用油圧ポケットブック2012年版
(2)二段式サーボ弁
2段式サーボ弁は、より複雑な構造を持ち、主に高精度な制御が求められるシステムに使用されます。このサーボ弁は、1段目として小さなトルクモーターとノズルフラッパーシステムあるいはジェットパイプ(噴射管)システムが配置され、2段目としてメインスプールが配置されます。
トルクモーターが小さな入力電流を受け取ると、アーマチュアが動作し、フラッパーの動きによる両側ノズル間の圧力差、または噴射管によるフィルディックス的な噴流流れによる圧力差が発生します。この圧力差がメインスプールを駆動し、最終的に流量や圧力を制御します。2段式サーボ弁は、スプールの動きを機械的または電気的にフィードバックすることで、精密な制御が可能です。高圧、高流量のシステムにおいても安定した制御を提供することができるため、産業機械や航空宇宙システムなどで広く使用されています。
(a) ノズルフラッパ型
ノズルフラッパ型は、トルクモータのアーマチュアがフラッパーを動かし、そのフラッパが両側ノズルとの隙間が広くなったり狭くなったりすることで圧力差を生み出す構造です。フラッパの位置により、ノズルからの流体の流れが制限され、圧力が増減して、これがスプールの動作を引き起こします。この方式は、応答性が高く、非常に精密な制御が可能です。ただし、ノズル部分が詰まりやすいという欠点もあります。そのため、使用環境には清浄度の高い作動油が要求されます(図 7)。
図7 ノズルフラッパ型 出典: 実用油圧ポケットブック2012年版
(b)ジェットパイプ(噴射管)型
ジェットパイプ(噴射管)型は、フラッパの代わりにジェットパイプ(噴射管)を使用する構造です。ジェットパイプはトルクモータのアーマチュアによって動かされ、高圧流体を2個所の受圧部に向けて噴射します。ジェットの向きが変わることで、スプールの両側に圧力差が生じ、その圧力差がスプールを駆動します。このタイプのサーボ弁は、フラッパ型と比較すると、詰まりにくく、汚染耐性が高いため、厳しい作業環境でも信頼性の高い動作を維持します(図 8)。
図8ジェットパイプ型 出典: 実用油圧ポケットブック2012年版
6. サーボ弁のアプリケーションと応用事例
サーボ弁は、高精度で迅速な制御が求められるさまざまな分野で広く応用されています。その高い制御性能と信頼性から、産業機械、航空宇宙、自動車、ロボティクス、医療機器など、多岐にわたるアプリケーションに使用されています。以下に、サーボ弁の主なアプリケーションと具体的な応用事例について詳述します。
(1)航空宇宙産業
航空宇宙分野では、サーボ弁は飛行制御システムにおいて重要な役割を果たしています。例えば、航空機のフライバイワイヤ(Fly-By-Wire)システムでは、パイロットの操作を電気信号に変換し、その信号をサーボ弁が受け取って油圧アクチュエータを制御します。これにより、エルロンやエレベーターなどの飛行制御面が正確に動作し、航空機の姿勢や飛行経路を調整します。サーボ弁の精度と応答性が航空機の安全性に直接影響を与えるため、この分野では非常に厳格な信頼性と耐久性が求められます。
(2)産業機械と自動化設備
産業機械の分野では、サーボ弁は数多くの精密加工機械や自動化設備に使用されています。例えば、CNC(コンピュータ数値制御)工作機械では、サーボ弁がアクチュエータを制御して工具の位置を高精度で調整します。この制御により、非常に細かい加工や複雑な形状の切削が可能になります。また、プレス機や射出成形機などの大型機械でも、サーボ弁が圧力や位置を制御し、製品の品質や生産効率を向上させます。これらのアプリケーションでは、サーボ弁の高速応答性と精密制御が、製造プロセスの安定性と効率性を大幅に向上させる鍵となっています。
(3)自動車産業
自動車産業においても、サーボ弁は重要な役割を担っています。例えば、電子制御ブレーキシステム(EBS)や電動パワーステアリング(EPS)システムでは、サーボ弁が油圧または電気信号を制御し、車両の操作性や安全性を向上させます。これにより、ドライバーの操作に応じて迅速かつ正確に車両の挙動が制御され、運転の快適性と安全性が向上します。また、自動車のサスペンションシステムでも、サーボ弁がショックアブソーバーの減衰力をリアルタイムで調整し、路面状況や運転条件に応じた最適な乗り心地を提供します。
(4)ロボティクス
ロボティクス分野では、サーボ弁は精密な動作制御が求められるロボットアームや産業用ロボットに使用されています。サーボ弁によるフィードバック制御により、ロボットの関節部分が正確な角度で制御され、複雑な動作や精密な位置決めが可能になります。これにより、ロボットは繊細な作業を自動化し、人間には難しい精密作業や危険な作業を代行することができます。例えば、医療用ロボットでは、サーボ弁を用いて手術器具の精密な動作を制御し、外科医の手助けをすることが可能です。
(5)医療機器
医療機器においても、サーボ弁の精密な制御性能が活用されています。例えば、人工呼吸器や血液ポンプなどの医療機器では、サーボ弁が流体の流量や圧力を精密に制御し、患者の状態に応じた最適な治療が行われます。また、MRI(磁気共鳴画像装置)やCTスキャナーなどの高度な医療装置においても、サーボ弁が重要な役割を果たしています。これらの装置では、非常に高い精度での制御が要求されるため、サーボ弁の高性能が不可欠です。
(6)その他の応用事例
その他にも、サーボ弁は石油・ガス業界の掘削機械、船舶の操舵システム、発電所のタービン制御など、多くの分野で応用されています。これらの分野では、サーボ弁が高度な制御を行うことで、プロセスの安全性や効率性が向上し、最適な運用が可能となっています。
7. サーボ弁の保守とトラブルシューティング
サーボ弁は、精密なフィードバック制御を行うための重要な機器であり、適切な保守と迅速なトラブルシューティングがその性能を維持するために不可欠です。サーボ弁は非常に高精度な動作を要求されるため、定期的な点検やメンテナンスを怠ると、システム全体の動作不良や性能低下を引き起こす可能性があります。以下に、サーボ弁の保守における重要なポイントと、トラブルシューティングの手順について詳述します。
(1)定期的な保全
サーボ弁の保守において最も重要なのは、定期的な保全と清掃です。特に、油圧システム内の作動油の清浄度を維持することが、サーボ弁の正常な動作を保つために不可欠です。油圧油に異物や汚れが混入すると、サーボ弁内のフラッパーやノズルが詰まり、制御性能が低下する原因となります。そのため、以下の点に注意して保守を行う必要があります。
・油圧流体の管理: 定期的に油圧流体のフィルターを交換し、汚れや異物が混入しないように管理します。フィルターの詰まりや交換時期をチェックすることも重要です。
・サーボ弁の清掃: サーボ弁の外部と内部を定期的に清掃し、作動油の漏れや汚れの付着がないか確認します。特に、フラッパーやノズル周辺の清掃は、動作精度を維持するために重要です。
・キャリブレーション: サーボ弁のフィードバック機構やセンサーのキャリブレーションを定期的に行い、正確な制御が行えるように調整します。キャリブレーションにずれが生じると、制御精度が低下し、システム全体に悪影響を及ぼします。
(2)サーボ弁のトラブルシューティング
サーボ弁が正常に動作しない場合、迅速にトラブルシューティングを行うことが求められます。以下は、一般的なトラブルシューティングの手順です。
・作動流体の確認: まず、作動流体の清浄度を確認し、フィルターが詰まっていないかをチェックします。また、作動流体の圧力や流量が適切かどうかも確認する必要があります。これにより、サーボ弁の動作に必要な油圧エネルギーが確保されているかを確認します。
・サーボ弁の動作確認: 次に、サーボ弁自体の動作を確認します。トルクモータやフラッパー、スプールの動作に異常がないかをチェックし、手動で操作して動作状況を確認します。異常な音や振動がないか、スムーズに動作しているかを確認します。
・電気系統の確認: サーボ弁に供給される電気信号が正常であるかどうかを確認します。コントローラからの信号が正確に伝達されているか、配線やコネクタに問題がないかをチェックします。また、センサーの動作も確認し、フィードバック信号が正確に送信されているかを検証します。
・フィードバックシステムの点検: フィードバック機構に異常がある場合、サーボ弁が正確に制御できなくなります。機械式フィードバックの場合は、リンクやばねが破損していないか確認し、電気式フィードバックの場合は、センサーや配線に問題がないかを確認します。
・周辺機器の確認: サーボ弁に接続されている周辺機器(アクチュエータや配管など)も点検し、異常がないか確認します。特に、アクチュエータの動作不良や配管の漏れが原因でサーボ弁が正常に機能しない場合があります。
(3)トラブルシューティング後の対応
トラブルの原因が特定されたならば、速やかに対応を行います。必要に応じて、部品交換や修理を行い、システムの正常な動作を回復させます。修理後は、再度キャリブレーションを行い、システム全体の調整を行うことが重要です。また、トラブルが発生した原因を分析し、今後同様の問題が発生しないよう、予防策を講じることが必要です。
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参考文献
Fluid Power Engineering Chap.9 M.Galal Rabie, Ph.D. McGraw-Hill 2009年
実用油圧ポケットブック(2012年版) (一社)日本フルードパワー工業会 2012年
機械工学便覧6th ed. γ02-05-02章 日本機械学会
引用図表
図 1 比例制御弁 出典:実用油圧ポケットブック2012年版
図 2 電気油圧サーボ機構 出典: 実用油圧ポケットブック2012年版
図 3 機械式フィードバック付きバルブ 出典: Fluid Power Engineering
図 4 電気式フィードバック付きバルブ 出典: Fluid Power Engineering
図 5 気圧式フィードバック付きバルブ 出典: Fluid Power Engineering
図 6 一段式サーボ弁 出典: 実用油圧ポケットブック2012年版
図 7 ノズルフラッパ型 出典: 実用油圧ポケットブック2012年版
図 8 ジェットパイプ型 出典: 実用油圧ポケットブック2012年版
ORG:2024/08/30