1. 騒音の定義  ものづくり、ひとづくり

1.騒音の定義

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1. 音(sound)とは

音とは、一般に気体、液体、固体などの媒質中を伝搬する波(音波、弾性波)をいいますが、この入門編では、空気中を伝わる音波について説明していきます。音波は、おおよそ340m/secの速さで伝わる波動現象です。私たちは耳によって、空気中を伝わる波動を聞いています。この波動は、空気の圧力(大気圧)の圧力変動(圧力が高い個所と低い個所の変化(交流的))が連続的に生じることによって発生します。一般に、大気圧(静圧)からの圧力変動を音圧と呼んでいます。
聴力の正常な若い人は、音圧が20μPa ~ 20 Paの範囲の音を聞くことができます。従って、聞こえる範囲の最も小さい音と、最も大きな音では、音圧の比は106に達します。 また、”Pa” (パスカル)は、圧力の単位で、1Paは1m2の面積に1Nの力を加えたときの圧力です。ちなみに、天気予報で高気圧、低気圧の気圧の高さを示すときに例えば983hPaということがありますが、h(ヘクト)は、100倍の大きさを表します。1気圧は1013hPaですので、1Paはとても小さな値といえます。我々は、実に大気圧の10-9の空気の圧力の変化を感じることができるのです。
また、 聴力の正常な若い人が聞くことのできる音の周波数範囲は、約20Hzから20kHzで約1000倍の範囲になります。厳密な区分ではありませんが、音の周波数範囲は一般的には次の3つの領域に分類できます。

20Hz以下   :超低周波音(infrasound)
20Hz~20kHz  :可聴音(audible sound)
20kHz以上   :超音波音(ultrasound)

我々は、音を耳で聞くとき、次の3つの音の特徴から音の違いを聞き分け、判断しています。
これら」、3つの特徴を音の3要素といいます。

(1)音の高さ

高い音、低い音と我々がいっているものが、音の高さです。これは音の周波数の違いから起こります。同じ「ア」の音声でも、人によって高い声の「ア」もありますし、低い声の「ア」がありますが、これは、「ア」としての音の波の形は同じでも、周波数が異なるためです。周波数が高い音はかん高く聞こえ、周波数の低い音は低く、重々しく聞こえます。
音の高さ

(2)音の大きさ

同じ音の高さの「ア」でも、大きな声の「ア」と小さな声の「ア」があります。これは、同じ様な波形をしていても、大きな声の「ア」は振幅が大きく、小さな声の「ア」は振幅が小さいことによります。しかし、人の聴覚は、物理的に定義できる音の強さ(音波の振幅に比例)に比例しません。騒音計では、そのために補正をしています。

(3)音色

同じ大きさ、高さの音を聴いてもピアノとギターでは、明らかに聴こえる音が異なります。 これが「音色」です。実際の音は周波数の異なる波が合成されたものです。 このとき、音の高さを決める周波数の音を基音、それ以外の構成音を倍音といいます。

音色01

音色02

 

 

2.騒音(noise)とは

騒音は、JIS(音響用語規格:JIS Z8106:2000)によれば、“不快なまたは望ましくない音、その他の妨害”と定義されています。ここで、”不快な”もしくは”望ましくない”という形容詞は、我々人が音に対する反応を示すもので、音を聞いた場合に”不快だ”、”うるさい”などの判断をする主観的な心理量に関係します。そしてこれについては、従来は心理学あるいは生理学の分野で取扱われてきました。
一方、”音”の方は物理学、特に音響工学で扱われてきた、物理的、客観的なもので、人間の存在に無関係に媒質中に存在するものです。
定義に示されるように騒音とはこの2つが一緒になったもので、騒音を取扱う場合はいずれか一方のみを考えたのでは不十分です。
物理的な面と心理的な面の二つを一しょに考えるという場合、主観的な「反応」を基準に考えるとするとたとえば同じ音であってもある人はうるさいというが他の人はうるさくないというようにそれを感じる人によってさまざまな反応を示し極めてあいまいなものになります。しかしこの状態では、騒音を一つの客観量として取扱っていくことは非常に困難になります。従って騒音を一つの工学分野として考えていく立場から、物理的な「音」の方を規定し、これに我々の反応を対応させていくという方法がとられます。もちろんこの場合の反応としては平均的な人の平均的な判断を基準にとることになります。たとえば100人の人に音を聞かせ99人の人が「うるさくない」といえばこの音は「うるさくない音」であるとすることです。
また、騒音の評価においては、可聴音である20Hz~20kHz の範囲のうち、主要な帯域である50 Hz~5 kHz位を対象とします。なお、普通の会話では、300Hz~3kHz の範囲が聴取にとって重要となります。大きな騒音の中で長時間働いていると難聴になったりしますが、こうした騒音から人の生活を保護するために法律によって騒音の規制が定められています。