13.1 塗装の概要

13.1 塗装の概要(Summary of coating)

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1. 塗装とは

塗装は製品として市場に供される場合は、塗装により生成された塗膜は、一般的には多層構造をとります。大きなくくりでは、下塗り層、中塗り層、上塗り層の3層構造をとります。最終製品でない場合は、主に保管中の防錆を目的として下塗り層のみで次工程(顧客)へ送られる場合もあります。

耐久性があり美観に優れた塗膜を形成するためには、素地調整が重要です。また塗装の各工程についても、塗装方法や作業方法について十分な考慮が必要です。また製品によっては、磨き工程も必要になります。一般的な塗装作業の工程については別項で示します。

装はその対象によって、工程の中身は大きく変わります。製品に要求される塗装効果やコストに応じて、最適な塗料の選定や、養生の仕方や塗装回数、乾燥時間、研磨要否(要の場合は研磨番手の決定)、塗装用具、治工具類の点検等に準備が必要です。

 

2. 塗装の歴史

塗装の歴史は、先史時代にさかのぼれますが、紀元前1万5千年前といわれるフランスのラスコーの洞窟壁画(図13.1.1)は、狩猟に関わる絵で動物が描かれているので有名です。赤鉄鉱や黄土、マンガン鉱を細かく砕いたものや骨を焼いて作った黒色顔料などに、獣脂や血液などを混ぜて描いたものといわれています。これが塗料の始まりではといわれています。


図13.1.1 ラスコーの洞窟壁画

紀元前4000~3000年頃、古代エジプト文明では、墳墓内に壁画が残っています、カーボンや、赤土、黄土、石膏、などで彩られています。顔料の壁面に付着・結合させるために、結合剤に乾性油や、膠(にかわ)、卵白などを結合材に使用されるようになったのは紀元前2000年頃からといわれています。

日本での塗料の歴史は、おおよそ1500年前中国から日本に仏教が伝来したときにもたらされた仏像や仏具に起源があるといわれています。金メッキされていたり漆が塗られたりしていました。この時期に漆による塗装技術が伝来したとされています。同じ頃渡来したであろう漆塗りの技術者は、塗師(塗師)と呼ばれて、主として美術工芸品にその技術を伝えてきました。その技術は時代が下るにつれて著しい発達を遂げ、お椀などの実用食器にまで対象が広がりました(図13.1.2)。


図13.1.2 漆器

明治時代になると、欧米文化の輸入とともに、欧米式の塗料が主としてイギリスから輸入されるようになり、続いて製造もおこなわれるようになりました(1973年)。
しかし、大正初期までは、ボイル油や、固練ペイント、鉛丹などの製造に限られて、その品質も欧米からの輸入品にははるかに及ばないものでした。第一次世界大戦後、日本の諸工業の発展に伴って、塗料産業も著しい発展を示しました。生産額の増加と同時に、種類も整備されて、それまでの塗料の輸入入超から、かえって南太平洋やインド、アフリカ方面にも輸出されるようになりました。

合成物質が塗膜形成のための主要な成分として、大量に消費されるようになったのは、1920年代以降のニトロセルロースにはじまります。速乾性の光沢塗料としてフォード社の自動車塗装に用いられて、日本にも輸入されるようになりました。昭和初期には、フェノール樹脂、フタル酸樹脂などの合成樹脂が相次いで開発され、合成樹脂塗料の先駆けになりました。第二次世界大戦中は戦時需要優先で、飛行機用や船底用塗料の研究が中心で大きな進展はありませんでした。

第二次世界大戦後、1948年に日本塗料工業会が設立されました。1951年頃には、メラニン樹脂や、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂などが相次いで開発されて、本格的な合成樹脂時代が到来しました。1955年以降は、高度成長時代の流れに乗り、塗料の生産量は大幅に増加し、また品質も各分野の要求に応じて高いものに進歩していきました。

1973年、1982年の2度の石油ショック、1990年代初めから始まったバルブ崩壊とその後の長期の景気低迷で、塗料の生産高も落ち込みました。しかし、近年は中国をはじめとするアジア諸国の発展により、海外展開は目覚ましいものがあります。

 

3. 塗装の目的

塗装は、物体の防食、保護と色彩、特殊な性能を与えることを目的として、塗料を物体表面に塗り広げることにあります。具体的に示すと、

(1)物体の保護:錆止めや、防湿、防食性、耐油性、耐薬品性などを付与します。橋梁や自動車、産業機器などへの塗装がこれに当たります。

(2)物体の美粧:⾊彩や、光沢、模様、美観、平滑性、⽴体性、さわり心地などを付与します。木工家具や、自動車の内装などに適用されます。

(3)(1),(2)項以外の機能付与:例えば、熱・電気などの伝導性の調整、生物の付着防止や殺菌、音の反射や吸収の調整、色の変化による温度指示、割れによるひずみの検出など、工業的に色々な分野で適用が広がっています。

 

4. 塗装の用途

塗装の対象となるものは非常に多く、材質は金属から、木材、コンクリート、皮膚など非常に多くのものが塗装の対象となります。

主な用途を表13.1.3 に示します。

表13.1.3 塗装の用途

 

5. 塗装の分類

塗装は、塗料の種類や工程などの違いにより色々な分類が考えられます。

(1)塗料による分類:ラッカー塗装、エポキシ塗装、メラミン塗装など。

(2)塗装方法による分類:刷毛塗り、吹付け塗装、静電塗装、電着塗装、紛体塗装など

(3)塗装される素地による分類:金属塗装、木材塗装、プラスチック塗装など

(4)工程による分類:プライマー塗装、中塗り塗装、クリア塗装など

(5)仕上がりによる分類:マット塗装、光沢塗装、テクスチャー塗装など

(6)用途による分類:建築塗装、船舶塗装など

(7)乾燥方法による分類:常温乾燥、焼付乾燥、特殊な例として電子線照射、高周波加熱など

塗装については、大まかに上のような分類で表すことができますが、本来は例えば事務所で使うロッカーの塗装は、(6)ロッカー,(3)鉄面,(1)メラミン塗装,(2)静電塗装,(4)上塗り,(7)焼付乾燥,(5)光沢塗装の組み合わせですが、一般的にはロッカーのメラミン静電塗装、または単にメラミン塗装をよんでいます。

その理由は、メラミン塗料は通常吹付塗装か静電塗装に適用され、光沢のある上塗りに使用して、焼付乾燥する場合が一般的であるためです。

 

6. 塗装の工程

塗装は、対象品の差異や塗装時の環境によっても変わりますが、ここではそれらを集約した一般的な工程を示しましょう。

(1)素地調整:脱脂、さび取り(ケレン)、化成処理

(2)下塗り:さび止め

(3)中塗り:サーフェーサー塗り、下地ごしらえ

(4)上塗り:表面を整える

(5)磨き:ワックス仕上

この他、塗り工程それぞれの前後処理として、養生、調合、調色、乾燥、研磨(研ぎ)などの工程があります。
これらの工程は、素地が金属か木材かによって変化しますが、一般的にはこれらの工程を繰返したり、組合わせたり、省略したりして塗装を行います。

例えば、(1)項の素地調整について考えると、鉄系の製品表面の場合、塗装の仕上がりや耐久性を左右する重要な作業になります。塗装する面に油脂や汚れがあると塗料が付着しにくいし、また錆がある状態で塗装しても錆が塗装面に現れたり、剥がれたりします。
(2)項の下塗りは、錆止め効果が高く、素地に対して付着性の良い塗料が、いろいろな種類から選ばれます。
(3)項の中塗りは、上塗りのために被塗装面を平滑にするために行われます。下地ごしらえともいいます。
(4)項の上塗りは、最後の仕上げで塗装の目的に合致した塗料を製品に塗布して、強い塗膜を形成させます。特に美しい塗肌を要求される場合は、さらに仕上塗りが行われます。
(5)項の磨きは、あまり行われることはありませんが、十分な光沢が得られない場合や、塗肌が悪い場合に使用されます。

 

 

 

 

 

参考文献
塗装実務読本 第2版 副島啓治 他  日刊工業新聞社
塗装・塗料の基礎知識   坪田実  イプロスTech Note

 

引用図表
図13.1.1 ラスコーの洞窟壁画  pixabay free
図13.1.2漆器    pixabay  free
表13.1.3 塗装の用途  塗装実務読本 第2版

 

 

ORG:2018/12/18