13.3 塗料の種類

13.3 塗料の種類(type of paint)

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1.塗料の構成

塗料の構成を機能から考えると、塗膜形成主要素と塗膜形成副要素、塗膜形成助要素とから形成されます。これらの構成要素からなる透明な媒質はビヒクル(vehicle)よばれ、さらにその内不揮発成分をビヒクルソリッド(vehicle solid)といいます。この塗料に構成において顔料を含まない塗料を透明塗料(クリア; clear lacquer)、着色顔料を含む塗料を着色塗料(エナメル; enamel)といいます(図13.3.1)。また、塗装して塗膜に残る成分(塗膜形成主要素と塗膜形成助要素、それに着色塗料の場合は顔料を含む)を不揮発分(non-volatile)といいます。

図13.3.1 塗料の構成

 

(1)塗膜形成主要素

塗膜形成主要素は、塗膜を形成する主成分です。乾性油や、天然樹脂、合成樹脂、セルロース誘導体などの高分子物質が用いられます。塗料および塗膜の性能を決める重要な要素です。特に工業塗装では、使用環境に応じた特性の各種合成樹脂が主流を占めています。

塗料に使用される合成樹脂の特性を表13.3.2 に示します。

表13.3.2 塗料に使用される合成樹脂の特性

 

(2)塗膜形成副要素

塗膜形成副要素は、塗膜や塗料の性能を向上させる目的で加えられる成分です。可塑剤(plasticizer)や乾燥剤(drier)、硬化剤(curing agent)、皮張り防止剤(anti-skin)、増粘剤(bodying agent)、刷毛目防止または平坦化剤(keveking agent)、たれ防止剤(anti-sugging agent)、防腐剤(preservative)、防カビ剤(anti-mildew)、防食剤(anti-corrosive agent)、紫外線吸収剤(U.V. absorber)、界面活性剤(surfactant)など多種類の化合物があります。これらは塗料添加剤(paint additive)ともよばれます。

通常は、これら添加剤には最適な添加量があり、添加量が多すぎると塗料の性質に悪影響を与えるので、塗料構成の大事な要素です。例えば、たれ防止剤を必要以上に使用するとレベリング性を悪くします。原則として、塗料性能の向上は、主要素および、助要素、顔料の選択、添加量の最適化によって行うべきで、添加剤の使用は極力避けるのが原則です。

 

(3)塗膜形成助要素

塗膜形成助要素は、塗料を液状に保ち、塗料を塗装する際に流動性を調整する目的で使用されます。乾燥過程で蒸発して、形成された塗膜中には残らない成分です。一般には、塗装時の制約が少ない各種の有機溶剤が用いられますが、溶剤成分はすべての塗料に不可欠の成分ではありません。近年は、水を溶剤成分として用いる水系塗料や、溶剤を含まないか、ごく少量しか含まない塗料として無溶剤型塗料、例えば粉体塗料や紫外線(UV)硬化型塗料、ハイソリッド塗料などが広く使用されるようになっています。塗料によく使用される有機溶剤および水の特性を表13.3.3に示します。

表13.3.3 塗料用溶剤の特性

 

(4)顔料(pigment)

顔料は、原則として水や溶剤、油類に不溶性の微粉末です。顔料には以下に示す役割があります。

 

・着色(蛍光、燐光なども含みます)と隠ぺい力を与える。
・錆止めや、防汚、防カビ、磁性、導電性などの顔料特有の性能を付与する。
・塗料に作業性向上のための流動性を付与しかつ、たれを防止して所定の膜厚になるようにする。
・塗膜の機械的性質を向上させ、対候性をよくする。

顔料には、無機着色顔料および、有機着色顔料、体質顔料、機能性顔料、防錆顔料などがあります。

無機着色顔料は一般に隠ぺい力および、耐候性,耐熱性、耐溶剤性に優れていますが着色力に劣ります。

有機着色顔料は一般に着色力および、鮮明度に優れますが、隠ぺい力や耐候性に劣る傾向があります。しかし、最近は高い耐候性をもつ多くの有機着色顔料が開発されており、用途に応じて有機着色顔料と無機着色顔料とを組合わせて用いられます。

また無機着色顔料には、アルミニウムやマイカなどのフレーク顔料をメタリック塗料として用いる場合や、特殊な表面処理を施した顔料(例えば、パール顔料をチタンコーティングするなど)を、光輝性塗料として用いる場合があります。

体質顔料には、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、クレー(Al2O3・SiO2・2H2O)などが用いられます。これらの物質は、樹脂成分と屈折率が大差無く、混合するとほぼ透明になります。体質顔料を加えることにより、塗膜を強く厚くしたり、研磨しやすくしたりする効果があります。

機能性顔料は、塗料に様々な機能を付与するために用いられる顔料です。例えば、蛍光顔料や、示温顔料、導電性顔料、断熱性・遮熱性顔料、潤滑性顔料、光触媒顔料など色々な顔料が開発されています。

防錆顔料は、金属の錆発生を抑制するために下塗りに用いられる顔料です。例えば,亜鉛末(Zn)は電気化学的に防食効果を、ジンククロメート(ZnCrO4)はクロムイオンを供給、鉛シアナ ミド[Pb(CN)2]は表面をアルカリ性にするなどの役割を持ち、防錆には効果がありますが、近年は重金属を含む顔料の使用はできなくなってきています。

 

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2.塗料の分類

塗料の分類には様々なものがあります。例えば、塗膜形成要素別(品目別)では、油性塗料および、合成樹脂塗料、水系塗料、無溶剤系塗料、無機質塗料などに分類されます。需要区分別では、建物用塗料や、道路車両用塗料、船舶用塗料、金属製品用塗料,家庭用塗料などに分類されます。

本項では、合成樹脂塗料について塗料の形態別に、環境対応型塗料を中心に記述します。合成樹脂塗料は形態により、粉体塗料および、水系塗料(水溶性型、エマルジョン型、水性ディスパージョン型)、有機溶剤系塗料(溶剤型、溶液型、非水ディスパージョン型)に分類されます。

 

(1)粉体塗料(powder coating)

粉体塗料、有機溶剤や水などの揮発性成分を含まず、数μmから数十μmに微粉砕した固形樹脂が用いられます。塗装後に、熱により溶融させて堅牢な塗膜を形成する塗料です。

固体の樹脂や、硬化剤、顔料等を予備混合したものを、エクストルーダーとよばれる装置で溶融混錬させます。設定温度は樹脂の融点以上かつ、硬化反応に至らない温度、おおよそ110℃に設定されています。粉体原料はエクストルーダーのスクリューで押し出される際、出口付近で受ける圧力で顔料等を均一に分散させます。その後、冷却ロール・冷却コンベアで移動冷却の過程でペレット状に粉砕されます。さらにペレットはハンマーミルなどで機械的に微粉砕されます。粉砕された粉体は、サイクロンやバグフィルターで捕捉された後、振動ふるいや気流分級機などにより、粒子径を揃えたものが製品になります。粒子径が大きすぎると塗膜の外観性が劣り、小さすぎると流動性が低下したり静電塗装時の帯電量が低下するため、通常は数十μmになるように調整します。

粉体塗料の特徴はほぼ無溶剤であること、回収・再利用が可能な点で環境の優しい塗料といわれています。ただ、薄膜での仕上がり性(ゆず肌)、色替え時の作業性が悪い、被塗装物の材質に制限がある、硬化するために熱エネルギーを必要とするなどの問題点もあります。

また、その需要量は着実に伸びていますが、まだ一部の限られた分野での使用にとどまっています。

 

(2)水系塗料(waterborne coating)

水系塗料は、塗装作業性向上のために少量の有機溶剤を含有していますが、大部分は溶剤として水を使用した塗料です。揮発性有機化合物(VOC)低減対策や、悪臭防止などの環境対策、危険物対策などに期待がかかり、早くから使用されています。

水には、樹脂を溶解することができない問題があるため、樹脂の一部を水に親和性のある構造にして樹脂を溶解させる(溶剤型)か、樹脂を水中に分散させる(水分散型)かの方法になります。さらに、水分散型はコロイダルディスバージョン型とエマルジョン型に分類されます(表13.3.4)。

ただし、親和性を強くして溶解性を良くし過ぎると、塗膜の耐水性が低下するので、通常は水分散型を塗料用樹脂として用いられます。

表13.3.4 水性塗料用樹脂の特性

この他の課題として、水の蒸発の遅さがあります。塗料の有機溶剤として用いられることが多いトルエンと比較すると蒸発速度は約5分の1しかありません(表13.3.3参照)。例として、自動車用水性メタリックベースコートでは、有機溶剤型と異なり、スプレー塗装時に水分が蒸発することによる粘度増加が期待できないので、スプレー時には低粘度、塗着時には後年度になるように塗料が設計され、たれやアルミニウム顔料がムラになるのを防いでいます。さらに次工程のクリア塗装前に赤外線や熱風を用いて水分を蒸発させます。水分蒸発は雰囲気の湿度に影響されるのが大きな特徴です。また、水性塗料は表面張力が大きいため、はじきやわきを生じやすいことも課題にあげられます。

 

(3)ハイソリッド塗料(high solids coating)・無溶剤型塗料(solvent-free coating)

通常は、塗装時の不揮発分が70~75%以上をハイソリッド塗料と定義しますが、目標値は80%以上です。これは、もっとも一般的な従来の有機溶剤型塗料の延長線上にあり、粉体塗料や水系塗料のようにVOC規制に対して飛躍的な効果は期待できませんが、原則的に既存の塗装設備が使用できて、塗装条件の大幅な変更を必要としないので、切換えが最も容易にできる種類の塗料の一つです。

ハイソリッド塗料製造のもっとも基本的な方法は、樹脂の分子量を小さくして、塗料系の粘度を下げて固形分が多くても有機溶剤系塗料と同じような粘土で塗装できるようにすることです。しかしながら、樹脂分子量を小さくすると、硬化塗膜の硬さなどの諸物性が低下して、また耐候性(屋外使用時の塗膜の耐久性)も著しく低下します。これを防止するためには、樹脂が硬化する際の反応点を多くして、十分に分子同士を結合させる必要があります。具体的には、2成分以上の反応により塗膜を形成させる2液反応型や他液性塗料の方向での開発が進められています。

無溶剤型塗料は、溶剤量がゼロの塗料です。例えば、スチレンモノマーを反応性希釈剤として溶解した不飽和ポリエステル樹脂塗料、アクリルモノマーを反応性希釈剤として使用した紫外線硬化塗料などがあげられます。

ハイソリッド塗料、無溶剤型塗料とも、各種工業用、船舶用、重防食塗料などの分野での開発が続けられています。塗装作業性、塗膜外観性などの改良が続けられています。

 

 

 

参考文献
機械工学便覧 第6版  β02-05章   日本機械学会
トコトンやさしい塗料の本 中道俊彦/坪田実   日刊工業新聞社
JIS使い方シリーズ 改訂版塗料の選び方・使い方  日本規格協会  1992

 

引用図表
図13.3.1 塗料の構成   参考:機械工学便覧 第6版  β02-05章
表13.3.2 塗料に使用される合成樹脂の特性     機械工学便覧 第6版  β02-05章
表13.3.3 塗料用溶剤の特性     機械工学便覧 第6版  β02-05章
表13.3.4 水性塗料用樹脂の特性     機械工学便覧 第6版  β02-05章+トコトンやさしい塗料の本

 

ORG:2019/10/29