13.5 塗装欠陥

13.5 塗装欠陥(painting defects)

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1.塗料および、塗装、塗膜の欠陥

塗装における欠陥には、塗料および塗装、塗膜それぞれについてあり、その原因および発生の状態は極めて多種多様です。これらについて以下のように分類します。

 

(1)塗料自身、および貯蔵中に起こる欠陥

(2)塗装工程での欠陥

 1)塗装用具の選定が不適切、もしくは使用方法を誤る。
 2)塗料の適用が不適切、もしくは要求水準に達していない。
 3)塗装対象物の表面状態が不適切、素地調整が不十分で錆、油分などが残っている。
 4)塗装雰囲気が不適切、例えば、高温・低温、高湿度など。
 5)安全衛生へ配慮が不適切、例えば有機溶剤中毒、引火による火災の発生。

(3)塗膜の欠陥

 1)プライマと上塗り塗料との組み合わせが不適
 2)塗装時の塗膜状態
 3)塗装の乾燥工程が不適切、乾燥時間や乾燥温度など。
 4)塗膜乾燥後、あるいは塗装後の使用環境が不適切。

 

2.塗装欠陥の原因

塗装欠陥の原因についても、以下のように分類できます。

 

(1)塗料または塗膜に起因する欠陥の原因

 1)原料の選択ミス、あるいは組合せが不適当
 2)製造工程が不適切、不注意。あるいは塗料製造機器の不適切な使用
 3)温度および、湿度、紫外線などの外界の雰囲気の影響

(2)塗装時の欠陥の原因

 1)不適切な塗料の使用。品質が劣る塗料
 2)塗装用具が不適切、使用上の不注意。
 3)塗装条件が不適切。塗装対象物の前処理の不備、塗装環境の不良。

塗料の選択、塗装方法の選択を行う上で、塗装欠陥の原因をつかみ、発生を防止することが大切です。

 

3.主な塗装欠陥と対策

主な塗装欠陥の原因と対策について、以下に示します。

 

(1)ゆず肌(orange peel)[1589]

塗面が平らにならないでゆずの身の皮のような小さな凹凸がある塗膜の外観をいいます。吹付塗装の場合に、塗料の流展性が不足する場合に起こる塗料または塗装上の欠陥です。

塗料の粘度が高すぎる場合や、吹付圧力の不足、吹付距離が不適当、希釈剤(シンナー)の蒸発が早すぎることが原因です。

対策としては、蒸発の遅い希釈剤を用いるか、希釈剤を多く添加することで行います。

 

(2)かぶり(blushing)[1522]

塗面が白くぼけて、色、艶がなくなる状態で白化ともいいます。溶剤の蒸発により空気が冷却され凝縮した水分が塗膜表層に侵入したり、溶剤の蒸発中に溶剤の成分間のバランスが崩れて塗膜成分の一部が析出するために起こります。

速乾性のラッカー系塗料、ウォシュプライマなどを梅雨時に塗装すると頻繁に発生します。

対策としては、一般的には高湿度のときは塗装を避けるか、塗装対象物を加熱する。空気圧を低くする。寒冷時の吹付塗装を避けるなどがあります。ラッカー系塗料については湿度が75%を超える雰囲気での塗装を避ける。もしくはリターダーのような高沸点の溶剤を添加します。

また、かぶりを起こした塗膜は、低湿度の状態でシンナーを吹き付けると元に戻ります。

 

(3)ピンホール(pinhole)[1573]

塗膜でできた針でつついたような小さい穴をいいます。素地まで達しています。焼付塗装時に急激に加熱乾燥すると起こります。塗料が低温すぎたり吹付時のエアや塗装対象物が冷たすぎる場合に起きます。塗料の希釈率が高い場合や蒸発が早いシンナーを使用したときにも発生しやすいです。

対策はセッティング時間を十分に取り、低沸点の溶剤を蒸発させてから加熱乾燥させる。リターダーのような高沸点溶剤を添加して希釈剤の蒸発速度の調節をする。厚塗りをしないなどがあります。また、塗料や塗装対象物を加温することもよい対策です。

 

(4)刷毛目(brush mark)[1571]、ロール目(roll mark)

塗膜の表面に刷毛のあとやロールのあとが筋になって残ることをいいます。塗料の粘度が高く、流動性が悪い場合に起こります。油性調合ペイントやエマルション塗料、速乾性ラッカー系塗料、顔料分の多い艶消し塗料で発生しやすいです。

また、刷毛が硬すぎたり、力を入れすぎたりあるいは気温が低い場合に刷毛目が残りやすくなります。

対策としては、塗料を希釈率を適正にするか、高沸点の希釈剤を用いる。素材に吸い込みがある場合はシーラーなどを下塗りして吸込みを防止するか、吹付塗装を採用します。ロールコータ―の場合は、ロール間の圧着を強めに調整します。また、合成樹脂系の塗料の適用でも改善されます。

 

(5)割れ(cracking)[1594]

割れは、老化により塗膜がだんだんかたくなって柔軟性がなくなり、表面が縮むことにより起こります。その程度により以下のように名付けられています。

・ヘアクラック(hair cracking):最上層塗膜の表面だけに起こる極細かい割れ。形状は不規則で、所かまわず起こる。
・浅割れ目、チェッキング(checking):最上層塗膜の表面だけに起こる細かい割れ。散らばった模様になって分布する。
・クレージング(crazing):浅割れ目よりも深く幅広い。
・深割れ(cracking):少なくとも1層の塗膜を貫通した割れ。塗膜の最終的な欠陥の一つ。
・わに皮割れ(alligatoring, crocodiling):深割れの激しいもの、わに皮模様ができたもの。

発生原因は、下の皮膜がやわらかく、上塗りがかたい場合など、上塗りと下塗りとの塗料の相性が悪い場合に起こります。

対策は、下塗り塗料の厚塗りを避けて、十分に乾燥させてから上塗りするようにします。

 

(6)はじき(cissing, crawking)[1572]

はじきとは、塗料が水や油分にはじかれて塗面に天井に不連続部分ができることをいいます。

塗面が平滑すぎる場合や、塗面に油分や水分が付着している場合、スプレーガンのカップや刷毛などに油分や水分が混入している場合、吹付用エアに油分や水分が含まれている場合などに起こる不良です。特にシリコン油の場合はじきが大きくなります。

対策は、下地処理をした後は、汚れた手などで触れないようにする。塗装器具を良く洗浄するなどの処置を行います。塗料によっては、表面張力を低くし流動性を調整するために、界面活性剤を添加する場合もあります。

 

(7)にじみ(breeding)[1566]

にじみとは、塗料を塗り重ねた際に下の塗膜の一部が滲んで、上塗りが異なった色になることをいいます。赤色やマルーンなどの有機顔料を成分とする下塗り塗料の場合に起きやすいです。

原因は、下塗り塗料の顔料やビヒクルに可溶性の成分が含まれている場合や、上塗り塗料が溶解力の強い溶剤を含む場合、下塗り塗膜の乾燥が不十分な状態での上塗り塗装する場合などがあります。

対策は、下塗り塗料としてノンブリード形の塗料を使用する。石油系溶剤に溶解しないワニス(ラックニスなど)で押さえてから上塗り塗装をする。上塗り塗装の溶剤を蒸発速度の速いものや下塗り塗装に対して溶解しないものを使用する。下塗りと上塗りとの間にアルミニウム粉末やMIO入りの塗料などのブリード止め塗料を塗るなどがあります。

 

(8)透け(lack of hiding)[1539]

透けとは、塗膜が薄いため下地が見えることをいいます。塗料を希釈しすぎた場合や使用前の撹拌が不十分で顔料が均一に分散されていない状態での使用が原因となることが多いです。黄色系塗料で着色顔料が少ない場合や、吹付塗装で塗膜厚が薄い場合にも透けが起こります。

対策としては、着色顔料成分が多い塗料を使用する。塗料粘度を調整して塗膜厚みが十分になるようにする。下塗りと上塗りとの色調を近づけるなどがあります。

 

(9)目やせ(grain depression)[1586]

乾燥後の塗膜がやせて、生地面や下地面の高低や組織の不均等が隠すことができない状態をいい、木材塗装やプラスター塗装によく見られます。塗料を希釈率が高すぎて膜厚が薄い場合や、下地研ぎのサンドペーパが粗すぎる(木材塗装など)場合に起こります。

対策は、木材やプラスター面では研ぎを十分に行い表面を平滑にします。また塗料はハイブリッド形など固形分の多い塗料や、色の濃い塗料で塗装するのが有効です。

 

(10)リフティング(lifting)

乾燥した下塗りの塗膜の上に、上塗りしたときに下塗りの塗膜が軟化して、ふくらみ、浮き上がったり、しわができる状態をいいます。上塗りの溶剤が下塗り塗料のビヒクルを犯します。下塗り塗装の効果が不足している場合、下塗り塗料と上塗り塗料との組み合わせが不適切な場合、例えばアルキド樹脂塗料の上にラッカーシンナーを上塗りした場合やアクリル塗料を塗った場合に多く起こります。また、密着が悪い古い塗膜の上に塗装した場合にしばしば起こります。

対策としては、下塗り塗料を十分乾燥させてから上塗りするか、ウォッシュプライマーやラックニスなどを中塗りした上に塗装する。塗装系を検討する、例えばアルキド樹脂塗料の下塗りの上に塩化ビニル樹脂塗料を塗るなど塗装系の組合せを変更する。古い塗膜は剥離させてから再塗装するなどします。

 

(11)剥がれ(peeling)[1568]

塗膜の内側で塗装対象物表面で錆が発生成長したり、油分や水分が残っている上に塗装した場合などに起こります。また、下塗り塗料と上塗り塗料との性質が異な場合に乾燥時の縮みの違いではがれる場合もあります。これは層間剝離と呼ばれます。寒冷時に塗膜がもろくなったり、チェッキングやクラッキングが進行してははがれる場合もあります。さらに化成処理後の水洗が不十分な場合にも起こります。

対策としては、素地調整、下塗り、上塗りなどの塗装系を見直して、塗膜のひずみが大きくならないようにします。

 

 

 

 

参考文献
塗装実務読本 第2版  副島啓治他  日刊工業新聞社
塗料と塗装の知識 関西ペイント(株)  S54.6
JIS K5500

 

 

ORG:2020/05/03