2.5 研削砥石と砥粒

2.5 研削砥石と砥粒(grinding tool and grain)

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研削用の砥石は、大きく分けて研削砥石と超砥粒ホイールとがあります。研削砥石は砥粒を主に無機質の結合剤で固めて研削対象に適合した形状に成形焼結したもので全体が同じ組織からなっています。そのため、強度上の問題から高速回転に対して限度があります。
高速研削のためには、超砥粒ホイールが用いられます。超砥粒ホイールは、内周部(台金)がアルミニウムのような金属でできており、その外周に1.5 ~ 3mmの厚みの砥粒層で構成されています。砥粒層の構成は、マトリックスタイプとブリッジタイプとがあります。
マトリックスタイプは、砥粒と結合剤との2元系で、砥粒が結合剤中に分散されています。一般に気孔はありません。一方、ブリッジタイプは、砥粒、結合剤、および気孔の3元系で、砥粒と砥粒が結合剤により結合され、気孔が存在し、研削砥石とほぼ同じ組織になります。

 

1.研削砥石の製造方法

通常の精密研削にもっともよく用いられているビトリファイド研削砥石は、原料の砥粒と粘度やケイ酸ソーダなどの無機質の結合剤とを撹拌混合して、混合物を型に入れてプレスにて成形して、その成形体を乾燥して生仕上げした後、炉で焼成して検査の後、表示・包装を行います(図2.5.1)。

図2.5.1 ビトリファイド研削砥石の製造工程

 

2.研削砥石の3要素

研削砥石の組織を拡大すると図2.5.2 のようになります。砥粒を結合剤で固定しています。砥粒は切れ刃の役割を、結合剤は切れ刃を保持するホルダーの働きをしています。そして気孔は切り屑を排出するチップポケットの働きをします。
これら、砥粒、および結合剤、気孔を、砥石を構成する3要素と呼んでいます。それぞれの項目について簡単に示します。

(1)砥粒

切れ刃に相当するもので、工作物を削り取る一方、自らも磨滅して欠け落ちて、次々と新しい切れ刃に交代します。砥粒は、炭化ケイ素系と酸化アルミニウム系に大別されます。材質と粒度とにより分類されます。

(2)結合剤

砥粒を適切な強さで結合させ成形するもので、ボンドと呼ばれます。粘土や、ケイ酸ソーダ、天然樹脂、合成樹脂などが使用されます。

 

(3)気孔

砥粒と砥粒との間の隙間で、研削加工時の切粉溜まりになります。気孔の大小、多少が砥石の組織を決定します。

図2.5.2 研削砥石の組織

 

3.研削砥石の5因子/6要素

2項で述べた3要素を定性的・定量的に規定して、砥石の材質としての性質を決める5つの要因、すなわち砥粒の種類、および砥粒の粒度、結合度、組織、結合剤の種類を、研削砥石の5因子と呼びます。さらに砥石の幾何学的性質を規定する形状・大きさを加えて研削砥石の6要素といいます。

以下に、これらについてもう少し詳しく見ていきましょう。

 

3.1 研削砥石の表示方法

研削砥石にはラベルが貼られていますが、ラベル中には図2.5.3 に示すような表示があり、これにより研削砥石の6要素が規定されます。ラベルが貼られています。

図2.5.3 研削砥石の表示例

 

(1)砥粒の種類

砥粒は大別すると、人造研削材(JIS R6111)と天然産研削材とに大別されます(表2.5.3)。研削砥石には、ビトリファイド砥石には人造研削材の内、アルミナ系と炭化けい素系とが主に使用されます。では、表2.5.4に、JIS R1111に規定される種別/性状、表2.5.5(a),(b) に化学成分と密度を示します。

表2.5.4 砥粒の種類

表2.5.5 人造研削材の区分、種類、記号、製法及び性状

表2.5.6(a) アルミナ質研削材の化学成分及び密度

表2.5.6(b) 炭化けい素質研削材の化学成分及び密度

この他、同一系統の砥粒を混合したものもあります。これは混合砥粒と呼ばれ、表し方は、A/WAやC/GC のように表します。

 

(2)砥粒の粒度

砥粒に粒度とは、砥粒の大きさのことです。砥石の粒度は、粗粒及び、一般研磨用微粉、精密研磨用微粉の3つに区分され、それぞれ試験方法が異なります。

粗粒(F4 ~ F220)はふるい分け試験方法及び、一般研磨用微粉(F230 ~ F1200)は光透過沈降法と沈降試験方法、精密研磨用微粉(#240 ~ #8000)は沈降試験方法と電気抵抗試験方法とが用いられます。

ふるい分け試験方法による粗粒の粒度は、例えば 60 ~ 70% がふるい上にとどまるふるいの目開きは、F4:4.00~4.75mm、F16:1.00~1.18mm,F36:425~500μm、F60:212~250μm、F80:150~180 μm、F220:45~53μmになります。また、一般研磨用微粉と精密研磨用微粉とでは同じ粒度でも粒子径が異なり、例えば、F240:48μmと#240:60μm、F360:27μmと#360:40μm、F800:11μmと#800:18μm、F1200:7.8μmと #1200:13 μm(沈降試験方法によるds-50%粒子径)になります。

図2.5.7に、粗粒の粒度分布曲線を示します。図上で”#数字” は現在のJIS規格では”F番号” になります。

図2.5.7 粗粒の粒度分布曲線

(3)結合度

結合度は、砥粒と砥粒との結びつきの強さを示します。通常、砥粒と砥粒との結びつきの強さは、結合剤の質が同一であればその含有量(結合比率)、つまり結合橋の太さによります。すなわち結合剤率が高く、結合橋が太い砥石ほど結合度が高くなります(図2.5.8)。

図2.5.8 研削砥石の結合度

 

結合度の表示は、AからZまでの26段階に区分されます(表2.5.9)。最も柔らかいものはA、最もかたいものはZで示されます。通行はH ~ N程度の結合度のものが用いられます。
普通、軟らかい砥石、かたい砥石というのは、この結合度のことをいいます。砥粒のかたさではありません。

図2.5.9 結合度の分類

結合度の測定は、JIS R6410に規定される大越式結合度試験機が一般に用いられます(図2.5.10)。試験方法は、図2.5.11に示す二またビットに所定の荷重と回転を与えて、その時のビットの食い込み深さから砥石結合度を決定します。

図2.5.10 大越式結合度試験機

図2.5.11 大越式結合度試験用二またビット

粒度は、切れ刃の大きさを表しています。粒度が低い砥石は、切れ刃が大きいですが、作業面における切れ刃の密度は小さくなります。一方粒度が高い砥石では、切れ刃は小さくなりますが、切れ刃密度は高くなります。ここで切れ刃の密度は砥石の作業面にできる隙間や凹みの割合によります。この隙間や凹みのことをチップポケットといいます。チップポケットは、砥石によって研削された工作物の切り屑を一時的に捕集して適宜排出することにより、研削作業を効率的に実施できるようになります。切り屑は、砥石の目詰まりとそれに起因する切れ味の低下の原因となりますので、その程度は砥石の性能に大きく影響します。

図2.5.12 粒度と切れ刃密度との関係

 

(4)組織

研削砥石は、砥粒および、結合剤、気孔の3元系で構成されています(図2.5.8 参照)。それぞれの要素の体積分率を、砥粒率、結合剤率、気孔率とするとそれらの和は100%となります。従って、これら3因子の内、2つを決めると残りの1つも決まります。現行のJIS規格では砥粒率を組織として間接的に規定しています。また、結合剤率は間接的に結合度で規定されます。

組織番号と砥粒率Vgとの間には次式の関係があります。

組織番号=1/2(62-Vg)

組織番号が小さいほど、砥粒の密度が高くなります。0:62% から 14:34% まで2%刻みに定められています。一般には砥粒率が50%前後(組織番号:6 前後)のものが用いられています。
砥石径が大きくなると、工作物との接触面積が広くなって研削焼けが発生しやすくなるので、気孔率を大きくした多気孔砥石が用いられることがあります。

 

(5)結合剤の種類

結合剤の種類としては、無機質及び、有機質、金属まで多くのものがあります。表2.5.13に研削砥石に用いられる結合剤の種類と用途を示します。

表2.5.13 結合剤の種類、性質と用途

これらの結合剤のうち 一般に多く用いられているのは、ビトリファイドとレジンです。また、メタルおよび電着は超砥粒ホイールに用いられます。

 

(6)研削砥石の形状・大きさ

JIS規格では、砥石の形状および外周端面の形状(縁形)及び寸法が決められています。代表的な研削砥石の形状および、縁形を示します。

表2.5.14 代表的な研削砥石の形状

表2.5.15 標準縁形

 

3.2 超砥粒ホイールの表示方法

超砥粒ホイールについても、呼び記号の付け方はJIS B4131 に規定されています。
呼び方は、規格番号と、砥粒の種類、砥粒の粒度、結合度、コンセントレーション、結合剤の種類、形状および寸法の順に表します。但し、電着メタルボンドの場合砥粒層の厚さを省略します。

表2.5.16 超砥粒ホイールの表示例

(1)砥粒の種類

超砥粒には、ダイヤモンドとcBN(立方晶窒化ホウ素)が該当します。ダイヤモンドには、D:天然ダイヤモンド、SD:合成ダイヤモンド、SDC:金属被覆合成ダイヤモンドがあります。窒化ホウ素には、BN:立方晶窒化ホウ素、BNC:金属被覆立方晶窒化ホウ素があります。ダイヤモンドは、あらゆる材質の中で最も硬くて摩擦係数が低い、熱伝導率が高いなど、極めて優れた工具材料です。ただ、酸化を開始する温度が低く、かつ鉄と反応して摩耗しやすいので、鉄系の材料の研削にはほとんど用いられません。
一方、cBNはダイヤモンドより硬さは低いですが、鉄と反応しにくく高温での使用に耐えるため鉄系の難削材の研削に用いられます。

それぞれの材料特性について、表2.5.17に示します。

表2.7.17 超砥粒の性質

(2)砥粒の粒度

超砥粒の粒度については、JIS B4130 に規定されています。規格では粒径が421 ~1180μmの超砥粒について規定しています。粒度には、目開き寸法が互いに隣り合う2枚のふるいを用いた場合の粒度を表すナローレンジと、目開き寸法を1段飛ばした2枚のふるいを用いた場合の粒度を示すワイドレンジの2つの区分があります。また、それそれぞれにA,Bの2方式の表示が規定されています。

(3)結合度

超砥粒ホイールの構造は、台金に1 ~ 3mm程度の砥粒層があるだけですので、研削砥石のような二またビット法の適用は困難なので、JIS規格では結合度表示のみが規定されています(表2.7.18)。そのため、超砥粒ホイールの結合度は、メーカ独自の方法で評価されており、メーカ間の互換性がないことに注意する必要があります。

(4)コンセントレーション

超砥粒ホイールの場合、組織の代わりにコンセントレーションにより砥粒率を規定しています。図2.7.18 にコンセントレーションの考え方を示します。粒度は一定ですので切れ刃の大きさは一定です。コンセントレーションが大きくなると切れ刃の数が増加します。その一方で、チップポケットの大きさは減少します。現在JIS B4131では、25から200までの8種類のコンセントレーションが規定されています(表2.7.19)。通常よく使用されるコンセントレーションは100で、体積分率で25%になります。この状態は砥粒を球と仮定して、立方体に詰め込んだ場合、立方体に占める球の体積はπ/6となり、おおよそ50%の体積を占めます。従って、コンセントレーションの200は、体積分率が50%となり、砥粒が完全に詰まった状態と考えられます。

図2.7.18 コンセントレーションの考え方

表2.7.19 コンセントレーション

(5)結合剤の種類

超砥粒ホイールの場合は、JIS規格では、レジンボンド及び、メタルボンド、ビトリファイドボンド、電着メタルボンドの4種類が規定されています(表2.7.20)。各種ボンドの特性を表2.7.21 に示します。

メタルボンドは、他の結合剤と比較して引張強さが大きいことより、砥粒の保持能力が高いと考えられます。レジンボンドは、他の結合剤と比較して弾性係数が小さいので、砥石と工作物間の弾性変形が大きく、切り残しが他の結合剤と比較して大きくなる傾向があります。

表2.7.20 超砥粒ホイールの結合剤

表2.7.21 各種結合剤の機械的特性

 

 

 

 

 

 

参考文献
機械工学便覧 6th ed  日本機械学会
絵とき研削加工の基礎のきそ  海野邦昭   日刊工業新聞社
若手技術者のための研削工学_第2回_研削砥石の特性と使用法  奥山繁樹  砥粒加工学会誌 Vol59 No3  2015 Mar
データ活用ハンドブック工作編  技術評論社
JIS B4130,JIS B4131,JIS R6111

 

引用図表
図2.5.1 ビトリファイド砥石の製造工程  ノリタケセラミックスアーカイブス
図2.5.2 研削砥石の組織  若手技術者のための研削工学_第2回_研削砥石の特性と使用法
図2.5.3 研削砥石の表示例    データ活用ハンドブック工作編
表2.5.4 砥粒の種類    データ活用ハンドブック工作編
表2.5.5 人造研削材の区分、種類、記号、製法及び性状   JIS R6111
表2.5.6(a) アルミナ質研削材の化学成分及び密度   JIS R6111
表2.5.6(b) 炭化けい素質研削材の化学成分及び密度   JIS R6111
図2.5.7 粗粒の粒度分布曲線    データ活用ハンドブック工作編
図2.5.8 研削砥石の結合度     絵とき研削加工の基礎のきそ_参考
図2.5.9 結合度の分類    データ活用ハンドブック工作編
図2.5.10 大越式結合度試験機    新編機械製作 下巻
図2.5.11 大越式結合度試験用二またビット  若手技術者のための研削工学_第2回_研削砥石の特性と使用法
図2.5.12 粒度と切れ刃密度との関係     絵とき研削加工の基礎のきそ
表2.5.13 結合剤の種類、性質と用途     絵とき研削加工の基礎のきそ_他
表2.5.14 代表的な研削砥石の形状     絵とき研削加工の基礎のきそ
表2.5.15 標準縁形    データ活用ハンドブック工作編
表2.5.16 超砥粒ホイールの表示例    JIS B4131
表2.7.17 超砥粒の性質     絵とき研削加工の基礎のきそ_他
図2.7.18 コンセントレーションの考え方     絵とき研削加工の基礎のきそ
表2.7.19 コンセントレーション    JIS B4131
表2.7.20 超砥粒ホイールの結合剤    JIS B4131
表2.7.21 各種結合剤の機械的特性     絵とき研削加工の基礎のきそ

 

ORG:2019/6/15