5.2.4 添加剤
5.2.4_添加剤(Hydraulic oil additives)
スポンサーリンク
アフィリエイト広告を利用しています。
Contents
1. 潤滑油添加剤の概要
潤滑油添加剤は、潤滑油に様々な機能を付与し、潤滑油自体の性能を大幅に向上させるために使用される化学物質です。機械技術の進歩に伴い、潤滑油に求められる性能は多様化し、よ り高い水準が求められています。これに対応するためには、潤滑油自体の改良だけではなく、いろいろな添加剤の力を借りる必要があります。
添加剤は、潤滑油に対して機械的、化学的な特性を付与し、特定の機能を強化する役割を果たします。潤滑油添加剤には、例えば酸化防止剤、清浄分散剤、耐荷重添加剤などが含まれ、それぞれが異なる用途や機能を持っています。これらの添加剤は、潤滑油の性能を向上させるだけではなく、機械の寿命を延ばす役割があります。
ただし、一種類の添加剤で全ての問題に対応できるわけではないので、対象となる機器や使用条件により、目的に応じて適切な添加剤を選択することが重要です。以下に潤滑油用添加剤が、どのような目的で使用されるかを概述します。
1.1 潤滑油の基礎的な役割の強化
潤滑油は、機械の摩擦部分において金属同士の直接接触することを防ぎ、摩擦を低減する役割を果たします。しかし、通常の鉱物油ではこの役割を完全に果たすことができない場合が多く、添加剤が必要になります。添加剤は、潤滑油の持つ基本的な機能を強化し、摩耗、摩擦、腐食などの問題を防止するために設計されています。
1.2 さまざまな環境下での性能の維持
潤滑油は、幅広い温度や圧力、その他の環境条件で使用されますが、これらの条件下ではその性能が低下することがあります。例えば、低温では油の粘度が高くなり過ぎて流動性が失われ、高温では粘度が低下し過ぎて適切な油膜が形成されないことがあります。粘度指数向上剤や流動点降下剤などの添加剤を使用することで、潤滑油はこれらの過酷な条件下でも安定した性能を維持することができます。
1.3 摩耗や腐食の防止
潤滑油に含まれる潤滑油酸化物、酸性物質、硫黄化合物や水分により、金属の表面の直接接触や、摩耗・腐食が進行する可能性が大きくなります。これを防止するために、潤滑油に耐摩耗剤や腐食防止剤が添加されます。これらの添加剤は、金属表面に保護膜を形成し、金属同士の直接接触を防ぎ、機械部品の寿命を延ばします。
1.4 酸化による劣化の防止
潤滑油は、使用中に空気中の酸素と反応して酸化され、劣化することがあります。この酸化が進行すると、潤滑油は粘性を失い、エンジンや機械の摺動部の動作に悪影響を及ぼす可能性があります。酸化防止剤は、この酸化反応を抑制し、潤滑油の寿命を延ばすために添加されます。酸化防止剤の添加により、潤滑油は長期間にわたってその機能を保持することができます。
1.5 清浄性の向上
例えばエンジンでは、燃料の燃焼や潤滑油の劣化によって、エンジン内部にスラッジやラッカーといった沈積物が生成されます。これらの沈積物がエンジンの内部に蓄積すると、エンジンの性能が低下し、最悪の場合、焼付きなどの故障にいたる可能性があります。清浄分散剤は、これらの沈積物を分解し、エンジン内部を清浄に保つ役割を果たします。
1.6 発泡の抑制
潤滑油が使用される環境では、空気が油中に混入し、激しい撹拌などで発泡することがあります。鉱物油自体は数%の空気は混入していることが多いですが、過度の混入や温度上昇などにより、気泡が発生して、潤滑油の潤滑性能を低下させ、油圧システムや潤滑系の効率低下を起こす可能性があります。発泡防止剤は、このような問題を防ぐために使用され、油中で発生した泡を速やかに消す効果があります。
1.7 その他の特殊な機能
潤滑油添加剤には、上記以外にも様々な特殊な機能を持つものがあります。例えば、冷却効果を持つ添加剤や、油の乳化を防ぐ抗乳化剤、バクテリアやカビの繁殖を抑制する防腐剤などが挙げられます。これらの添加剤は、特定の用途や環境に応じて使用され、潤滑油の機能を補完します。
2. 耐荷重添加剤の種類と作用機構
耐荷重添加剤(load carrying additives)は、機械の摩擦面において発生する過大負荷や厳しい潤滑条件下で、潤滑油の性能を維持するために使用されます。耐荷重添加剤は、潤滑油が機械部品を保護し、摩擦や摩耗を低減する役割を果たします。
潤滑性を示す潤滑油膜の構成は以下のようになります。
a. 粘性油膜、b. 物理吸着膜,化学吸着膜、c. In-sutu潤滑膜((ⅰ)摩擦面スポットにおける重合体の形成)+ (ⅱ)固体潤滑剤の生成)、d. 無機反応生成膜、e. 固体潤滑剤
a. 粘性油膜:潤滑油の基本性能である耐荷重機能を担うもので、流体潤滑、弾性流体潤滑における油膜圧力の発生に寄与します。
b. 物理吸着膜、化学吸着膜:油性剤に関連します。
c. In-situ潤滑膜:(ⅰ) は重合体の生成により粘性油膜の効果を与え、(ⅱ) は耐摩耗性剤および極圧剤の作用機構です。
d. 無機反応生成膜:耐摩耗性剤および極圧剤の作用機構
e. 固体潤滑剤:グラファイト(黒鉛)や二硫化モリブデン(MoS2)が該当します。
耐荷重添加剤は、前述のように油性剤、耐摩耗剤、極圧剤が該当します。
油性剤は、金属表面に吸着し、物理的または化学的に薄い膜を形成することで、金属間の直接接触を防ぎ、摩擦や摩耗を軽減します。特に、ステアリン酸などの長鎖脂肪酸が代表的な油性剤として使用されます。
耐摩耗剤は、金属表面と反応し、保護膜を形成することで摩耗を抑制します。リン酸エステルや有機金属化合物が代表的な耐摩耗剤として知られています。
極圧剤は、金属間の接触が避けられない極限条件下で使用され、摩擦面に化学反応を引き起こし、強力な保護膜を形成して摩擦や焼き付きの防止に寄与します。硫黄系化合物やハロゲン系化合物が極圧剤として広く使用されています。
これらの添加剤は、潤滑油の機能を大幅に向上させる一方で、使用条件に応じた選択と適用が必要です。
2.1 油性剤(oiliness agents)
油性剤は、潤滑油中で金属表面に吸着し、物理的または化学的な吸着膜を形成する添加剤です。この吸着膜は、金属表面に強固に結合し、金属間の直接接触を防ぎます。これにより、摩擦や摩耗が大幅に低減されます。
油性剤は、通常、長鎖の脂肪酸やエステル化合物で構成されており、ステアリン酸やオレイン酸などの脂肪酸が代表的なものですが、この他長鎖のアルコール、エステル、油脂などがあります。これらの分子は、炭化水素鎖の末端に極性基を持ち、金属表面に物理吸着または化学吸着して強固な吸着膜を形成します。
例えば、図1に示すステアリン酸は、極性基(カルボキシル基)で金属表面に吸着して、また長い炭化水素鎖間の凝集力により吸着膜の油膜強度を大きくします。この吸着膜は金属の表面エネルギーを低下させるとともに、せん断強度が小さいため、金属間のすべりに対して摩擦係数を低下させます。ただ、これらの吸着膜は、摩擦面の温度上昇により脱着して、摩擦低下の効果は消失します。油性剤は、主に低荷重条件下で効果的に機能し、摩擦低減に寄与します。
図1油性剤の化学的吸着 出典:潤滑油添加剤 広中清一郎 他 化学教育Vol.23 No.6
2.2 耐摩耗剤(anti-wear agents)
耐摩耗剤は、金属表面の摩擦面の摩耗を減少させるために使用されます。耐摩耗剤は、金属表面と反応して化学的に安定的な二次的化合物の保護膜を形成し、この膜が摩耗から金属を保護します。
代表的な耐摩耗剤には、リン酸エステル(トリクレジルホスフェートなど)のようなリン系化合物や、ジアルキルジチオリン酸塩のような有機金属化合物などがあります。これらの化合物は、摩擦熱や圧力によって分解し、金属表面と反応して化学的に結合することで、FePO4・2H2Oなどの保護膜を形成します。これにより、摩耗が著しく減少し、機械部品の寿命が延びます。
図 2 耐摩耗剤の働き 出典参考:潤滑油添加剤
2.3 極圧剤(Extreme Pressure Agents)
極圧剤は、非常に高い荷重や高温の条件下で使用される添加剤で、金属表面における極限の摩擦や焼付きから保護する役割を果たします。高温・高圧の状況では、金属表面が直接接触し、摩耗が急速に進行するリスクがあります。極圧剤は、金属表面で摩擦が増加すると、金属と化学反応を起こし低せん断強度の強力な保護膜を形成します。この保護膜は、金属表面のせん断強度よりも強度が低く、金属間の直接的な接触を避けることで、摩擦と焼付きの発生を防ぎます。特に切削油、研削油や、ギア油など、過酷な条件下で使用される潤滑油に多く添加されます。
極圧剤は、
a)硫黄系化合物
b)ハロゲン系化合物(特に塩素系およびヨウ素系)
c)リン系化合物
d)有機金属化合物
e)層状格子構造化合物
に分類されます。ただし、塩素系化合物は環境への負荷が大きいことから使用が減少しています。
2.4 油性剤、耐摩耗剤、極圧剤の相互作用
油性剤、耐摩耗剤、極圧剤は、異なる負荷条件でそれぞれの役割を果たしますが、これらの添加剤は相互に補完的な関係にあります。例えば、軽度の摩擦条件では油性剤が主に機能しますが、摩擦が増加するにつれて耐摩耗剤が機能し始め、極限状態では極圧剤がその効果を発揮します。これにより、機械の摩擦面はあらゆる条件下で保護され、最適なパフォーマンスを維持することができます。
図 3 耐荷重添加剤の相互作用 出典:出典:潤滑剤・潤滑油入門 三洋化成工業(株)HP
3. 金属表面保護剤の種類と役割
金属表面保護剤は、金属の腐食や錆を防ぐために潤滑油に添加される化学物質です。錆止め剤、腐食防止剤、金属不活性化剤の3種類に分類されます。これらの保護剤は、潤滑油中で、金属表面に保護膜を形成することで、外部環境からの有害な影響を防止します。
錆止め剤は、空気中の酸素や水分と反応して金属表面に生成される酸化物の形成を防ぎます。代表的な錆止め剤には、脂肪族アミンや有機リン酸エステルがあります。
腐食防止剤は、潤滑油中の酸化生成物や酸性物質が金属表面に与える化学的影響を抑制します。代表的な腐食防止剤には、ジチオリン酸亜鉛や硫化テルペンがあります。
金属不活性化剤は、金属が潤滑油の酸化を促進する触媒作用を抑制するために使用されます。シッフ型化合物などが金属不活性化剤として利用されています。
これらの金属表面保護剤は、機械装置の寿命を延ばし、信頼性を向上させるために不可欠な添加剤です。
3.1 錆止め剤(Rust Inhibitors)
錆止め剤は、主に鋳鉄や鋼などの金属表面で発生する酸化反応、すなわち錆を防止するために使用される添加剤です。錆は、金属が空気中の酸素と水分と反応することで生成される酸化物です。錆止め剤は、潤滑油中に溶解して金属表面に物理吸着し、酸素や水分が金属と直接接触するのを防ぐことで、錆の発生を抑制します。
分子構造は、一方は鉄に吸着する極性基、もう一方は油に溶解する親油基を持つ構造です。脂肪族アミン類、有機リン酸エステル、有機スルホン酸塩や、脂肪酸類が代表的な錆止め剤として使用されています。これらの化合物は、金属表面に薄い保護膜を形成し、この膜が酸素や水分が鉄に接触するのを防ぎます。
3.2 腐食防止剤(Corrosion Inhibitors)
腐食防止剤は、金属が潤滑油中の腐食性物質(例えば、酸性物質や硫黄化合物)と反応して腐食が進行するのを防ぐために使用される添加剤です。腐食は、金属が化学的に反応し、金属部材が損傷したり、機械性能が低下したりする原因となります。腐食防止剤は、潤滑油中で金属表面に吸着し、保護膜を形成することで、腐食性物質が金属と直接接触するのを防ぎ、腐食性物質と化学反応を起こして、無害な物質に変換することで金属表面を保護します。
腐食防止剤としては、ジチオリン酸亜鉛、硫化テルペン類や、硫化オレフィン類などが広く使用されています。
3.3 金属不活性化剤(Metal Deactivators)
金属不活性化剤は、金属が触媒として作用し、潤滑油の酸化反応を促進するのを防ぐために使用される添加剤です。金属触媒作用により、潤滑油の酸化が加速されると、潤滑油の劣化が早まり、エンジンや機械の性能が低下する可能性があります。金属不活性化剤は、金属表面に吸着し、不活性膜を形成することで、金属が酸化反応を促進する触媒として機能するのを防ぎます。シッフ型化合物やアミン誘導体が代表的な金属不活性化剤として使用されています。
3.4 金属表面保護剤の適用と選択
金属表面保護剤の選択は、機械の使用環境や潤滑油の特性、金属の種類に依存します。錆止め剤、腐食防止剤、金属不活性化剤は、それぞれ異なる環境条件や金属材料に対して選択されます。
例えば、高湿度環境下では錆止め剤が重要であり、酸性ガスの存在下では腐食防止剤が必要となります。そして、これらの保護剤を組み合わせて使用することで、金属表面を総合的に保護します。
4. 酸化防止剤(antioxidants)とその重要性
潤滑油は、使用中に酸化されることでその性能が劣化します。潤滑油が酸化すると、粘度の増加、スラッジやラッカーの不溶解物質の形成、酸性物質の生成などが起こり、機械の性能に悪影響を与えます。酸化防止剤は、酸化による劣化を抑制し、潤滑油の寿命を延ばし、機械の信頼性を維持する役割を果たします。
酸化防止剤は、フリーラジカル反応を阻害する連鎖停止剤と、ヒドロペルオキシドを分解するペルオキシド分解剤に分類されます。前者は酸化の進行を防ぎ、後者は酸化生成物を無害な物質に変換する役割を果たします。
2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールやフェニル-α-ナフチルアミンなどが代表的な酸化防止剤です。酸化防止剤の使用により、潤滑油の劣化を抑制します。
4.1 酸化のメカニズム
潤滑油の酸化は、主に空気中の酸素との反応によって引き起こされます。この反応は、特に高温環境下や金属触媒の存在下で加速されます。酸化が進行すると、潤滑油中に過酸化物やフリーラジカルが生成され、これらがさらなる酸化を促進します。酸化が進むにつれて、潤滑油は次第に劣化し、エンジンや機械の動作不良や部品の摩耗を引き起こす原因となります。
酸化のメカニズムは以下のとおりです。RHは炭化水素を意味します
・ 連鎖開始反応: RH + O2 → RO (または、RO2・,・OH) (1)
(フリーラジカルの生成)
・ 連鎖成長反応: RO2・ + RH → RO2H + R・ (2)
(ヒドロペルオキシドの生成)
R・ + O2 → RO2・ (3)
(ペルオキシフリーラジカルの生成)
・ 連鎖停止反応: 2RO・
RO2・ + R・ → 不活性物質 (4)
2R・
・ ヒドロペルオキシドの分解:
RO2H → RO・ + ・OH (5)
2RO2H → RO・ + RO2・ + H2O (6)
潤滑油の酸化は、(1)、(5)、(6)の何れかの反応が優勢か明確ではないですが、金属表面が触媒となり酸化が促進されます。
4.2 酸化防止剤の種類と作用機構
酸化防止剤は、その作用機構に応じて大きく2つに分類されます。
(1)連鎖停止剤(chain breaking agents):
連鎖停止剤は、フリーラジカル反応を阻害することで酸化を防止します。具体的には、フリーラジカルと反応して安定した分子を生成し、(2)、(3)の連鎖成長反応を妨げます。
代表的な連鎖停止剤として、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(DBPC)やフェニル-α-ナフチルアミン(PANA)が挙げられます。これらの化合物は、フリーラジカルと迅速に反応し、酸化反応の進行を効果的に抑制します。
(2)ペルオキシド分解剤(peroxide decomposers):
ペルオキシド分解剤は、潤滑油中に生成される過酸化物(ヒドロペルオキシド)と迅速に反応してラジカルでない不活性物質として酸化を防止します。
ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、有機硫黄系酸化防止剤などが代表的なペルオキシド分解剤です。
連鎖停止剤とペルオキシド分解剤の例を、図4 に示します。
図 4 酸化防止剤の例 出典:潤滑油添加剤
4.3 酸化防止剤の重要性
潤滑油の酸化防止は、エンジンや機械の長期的な信頼性と性能維持において極めて重要です。酸化防止剤を使用することで、潤滑油の寿命が延びるだけでなく、以下のような具体的なメリットがあります。
・ 油粘度の安定化::
酸化によって潤滑油の粘度が増加すると、エンジン内部での流動性が低下し、適切な潤滑が行えなくなります。酸化防止剤はこの粘度の変化を抑え、潤滑油の安定した性能を維持します。
・ スラッジやラッカーの形成防止:
酸化によって生成される不溶性のスラッジやラッカーは、エンジン内部に蓄積し、エンジンの性能を低下させる原因となります。酸化防止剤は、これらの生成を防止し、エンジンを清浄な状態を保つ役割を果たします。
・ 酸性物質の生成抑制:
酸化により生成される酸性物質は、エンジン内部の金属部品を腐食させる原因となります。酸化防止剤は、酸性物質の生成を抑制し、金属部品の長寿命化に貢献します。
4.4 酸化防止剤の選択と適用
酸化防止剤の選択は、潤滑油の使用環境や要求される性能に応じて行う必要があります。高温環境下で使用される潤滑油には、より強力な酸化防止効果を持つ添加剤が必要となることがあります。また、酸化防止剤は他の添加剤と組み合わせて使用されることが多く、全体としてバランスの取れた性能を発揮するように設計されています。
5. 清浄分散剤(detergents-dispersants)の役割と機能
清浄分散剤は、エンジン内部のピストンリング・壁面や潤滑系の汚れや沈積物を抑制し、潤滑油の性能を維持するために使用されます。エンジン内部で生成されるラッカーやワニス、スラッジは、エンジンの動作に悪影響を与える可能性があります。これらの沈着物は、エンジンの性能を低下させ、長期間にわたる運転に悪影響を及ぼす可能性があります。清浄分散剤は、エンジン内部の汚れを分解し、潤滑油中にスラッジやカーボン粒子を分散させることで、エンジン内部や機械装置を清浄に保つ役割を果たします。清浄分散剤は、主に高温で生成される沈積物を抑制し、分散剤は低温で生成されるスラッジやカーボンを分散させます。カルシウム塩やバリウム塩のような金属塩型添加剤と、ポリマー型添加剤が主に使用されます。これらの添加剤は、エンジンの効率を維持し、長期的な運用を可能にするために重要な役割を果たします。
主として、ガソリンやディーゼルエンジンのクランクケースの潤滑油の添加剤として用いられます。
5.1 清浄分散剤の基本的な役割
清浄分散剤は、エンジンや潤滑系に生成される汚れ(スラッジ、ラッカー、カーボンなど)を除去する役割を持っています。これらの汚れは、主に燃料の不完全燃焼や潤滑油の酸化によって発生し、エンジンのピストンリングやシリンダーの壁に付着することで、エンジンの効率低下や動作不良の原因となります。清浄分散剤は、潤滑、油中でこれらの汚れを分解・分散させ、エンジン内部に蓄積するのを防ぎます。
5.2 清浄剤と分散剤の違い
清浄分散剤の作用である清浄と分散とはその機構は理論的には同様と考えられますが、清浄剤と分散剤とに分けて使用されています。それぞれの機能は以下のようになります。
(1)清浄剤(Detergents):
清浄剤は、主にエンジン内部で生成される高温運転によるラッカーやワニスなどの堆積物を抑制・除去する役割を果たします。これにより、エンジン内部の高温部品が清浄に保たれ、効率的な動作が維持されます。代表的な清浄剤としては、中性または塩基性のホスホネート、フィネートおよびスルホネートのカルシウム塩やバリウム塩などの金属塩型のものが使用されます。これらの化合物は、汚れを化学的に中和し、エンジン内部を清浄な状態に保ちます(図 5)。
(2)分散剤(Dispersants):
分散剤は、エンジンの低温運転時に生成されるスラッジやカーボンなどの微小な粒子を潤滑油中に分散させる役割を果たします。これにより、スラッジやカーボンが潤滑油中に分散され、エンジン内の部品に沈着するのを防ぎます。代表的な分散剤には、コハク酸イミドやポリポーラー型の高分子化合物などの無灰型が使用されます(図 5)。
図 5 清浄分散剤 出典:潤滑油添加剤
5.3 清浄分散剤の作用機構
清浄分散剤は、潤滑油中で汚れに吸着し、ミセルを形成することで、その汚れを油中に分散させます。ミセルは、界面活性剤分子が集まった球状の構造であり、汚れを取り囲むことで、汚れが油中に溶解したまま保持されます。このため、清浄分散剤は、汚れのエンジン部品への沈着を防ぎ、エンジン内部をクリーンな状態に保つことができます。
また、清浄分散剤は、潤滑油の酸化によって生成される酸性物質も中和する働きがあり、これによりエンジン内部の腐食も防止します。清浄分散剤は、これらの複合的な機能を持つため、エンジンや潤滑系の効率的な運転を支える重要な添加剤です。
図6 清浄分散剤分子の役割 原出典:潤滑油添加剤
5.4 清浄分散剤の重要性
清浄分散剤は、特にエンジンのように燃焼によるスラッジの発生が潤滑系に侵入する環境での、潤滑油の長期的な信頼性を維持するために必要な添加剤です。その重要性を以下に示します。
(1)エンジンの効率維持:
エンジン内部の汚れや沈積物が蓄積すると、エンジンの効率が低下し、燃費の悪化や作動不良の原因となります。清浄分散剤はこれらの問題を防ぎ、エンジンが常に効率的に動作が出来るようにします。
(2)部品の寿命延長:
汚れやスラッジの沈積は、ピストンリングやシリンダーなどの部品に摩耗や損傷を引き起こします。清浄分散剤は、これらの汚れを分散させることで、部品の摩耗を防ぎ、機械の寿命を延ばす役割を果たします。
(3)潤滑油の寿命延長:
潤滑油中にスラッジや汚れが蓄積すると、潤滑性能が低下し、潤滑油の交換頻度が増加します。清浄分散剤は、潤滑油中で汚れを分散させ、潤滑油の寿命を延ばす効果があります。
6. 流動点降下剤(pour point depressants)とその効果
流動点降下剤は、潤滑油が低温環境下での使用においても流動性を維持するために使用される添加剤です。鉱物油中には、1%から数%のろう分(ワックス)が含まれています。低温環境下では、このろう分が板状に結晶化して互いに絡み合い、流動性を著しく低下させます。流動点添加剤は、ろう分の結晶化を抑制し、潤滑油の流動点を低下させることで、寒冷地での使用を可能にします。
6.1 流動点とは
流動点とは、潤滑油が流動できる最低温度を指します。潤滑油中に最大数%含まれる成分であるろう分(ワックス)は、低温になると板状に結晶化し、油中でお互いに絡み合って三次元の網目構造を形成し、油分を包み込んでしまいます。この結晶が増えると、潤滑油の流動性が低下し、最終的に流動が停止してしまいます。
潤滑油の流動点は、粘性(ガラス流動点)またはろう分の結晶化(ワックス流動点)により決まります。流動点が高い潤滑油では、低温環境下で油が流れなくなるため、エンジンや機械の運転が難しくなります。
6.2 流動点降下剤の作用機構
流動点降下剤は、潤滑油中でろう分(ワックス)の結晶化を阻害することで、低温環境下でも油の流動性を維持する添加剤です。流動点降下剤は、以下に示す2つの主な作用機構で機能します。
(1)吸着による結晶化の抑制:
流動点降下剤の分子が、ろう分の結晶に吸着し、その結晶が大きく成長するのを防ぎます。ろう分の結晶が小さく留まることで、油中での相互干渉が減り、油の流動性が保たれます。
(2)結晶化そのものの抑制:
一部の流動点降下剤は、ろう分分子の間に入り込み、ろう分が結晶を形成する前に、その形成過程を妨げることで、結晶化を根本的に抑制します。
図7に、流動点降下剤の作用の有無により、ろう分の成長の差異について示します。
図7流動点降下剤の作用 原出典:EVONIK INDUSTRIES流動点降下剤カタログ
6.3 流動点降下剤の種類
流動点降下剤には、いくつかの異なる種類があります。代表的なものは以下の通りです。
(1)ポリアルキルアクリレート:
ポリアルキルアクリレートは、潤滑油中のろう分(ワックス)結晶に吸着してその成長を抑制する効果があります。特にエンジンオイルなど、低温環境での使用が求められる潤滑油に広く使用されます。
(2)ポリアルキルメタクリレート:
ポリアルキルメタクリレートは、潤滑油中でろう分と結晶化する際に結晶の形成を妨げる効果を持ちます。これにより、低温での潤滑油の粘度が低下しにくくなります。
(3)塩素化パラフィンとナフタレンまたはフェノールの縮合物:
塩素化パラフィンは、ろう分の結晶化を抑制し、潤滑油の流動性を向上させる効果があります。この添加剤は、潤滑油の基油の組成に影響を与えず、低温環境での性能向上に寄与します。
図 8 流動点降下剤の例 出典:潤滑油添加剤
6.4 流動点降下剤の効果
流動点降下剤を添加することによる主な効果は、潤滑油の低温特性を大幅に改善できる点です。具体的には、次のような効果があります。
(1)低温環境下での潤滑性の維持:
流動点降下剤を使用することで、低温でも潤滑油が十分な流動性を保ち、機械のエンジンやギアボックスなどが適切に潤滑されます。
(2)エンジンの始動性向上:
寒冷地では、低温時にエンジンが始動しにくくなることがありますが、流動点降下剤を使用した潤滑油は、低温でもエンジンがスムーズに始動できるようサポートします。
(3)潤滑油の多用途化:
流動点降下剤を使用することで、潤滑油の適用範囲が広がり、異なる気候条件や温度範囲でも使用できる汎用性の高い潤滑油を作ることができます。
6.5 流動点降下剤の適用と選択
流動点降下剤は、使用される潤滑油の種類やその用途、また使用環境に応じて選択されるべきです。寒冷地で使用されるエンジンオイルやギアオイルには、強力な流動点降下剤が必要となりますが、温暖な地域ではその必要性は低くなります。また、基油の組成や潤滑油の他の特性(粘度、酸化安定性など)とのバランスを考慮して適切な流動点降下剤を選択することが重要です。
7. 粘度指数向上剤(viscosity index improvers)の仕組み
エンジン油や作動油などの潤滑油は、しばしば低温から高温までの広い温度範囲で使用する必要があります。その場合、低温では粘度が比較的小さく、高温でも粘度の低下が少ない、すなわち温度上昇による潤滑油の粘度変化が小さいことが必要です。
粘度指数向上剤は、潤滑油の温度依存性を改善し、広範囲の温度条件下でも安定した粘度特性を保つために使用される添加剤です。粘度指数向上剤は、このような温度変化に対する粘度の変動を抑え、エンジンや機械装置が広範囲の温度条件下でも安定して運転できるようにする重要な役割を果たします。
7.1 粘度指数とは
粘度指数(VI:Viscosity Index)とは、潤滑油の温度変化に対する粘度の変動の度合いを示す指標です。粘度指数が高いほど、温度変化に対して粘度の変動が小さく、逆に粘度指数が低い潤滑油は、温度が上昇すると粘度が急激に低下します。
例えば、エンジン油は低温で十分に流動しつつ、高温でも潤滑性能を維持する必要があります。このため、粘度指数向上剤を添加することで、潤滑油の温度範囲を広げ、過酷な温度環境でも性能を保つことができます。
通常の溶剤精製の潤滑油(API;Group 1)は粘度指数が小さいものが多く、粘度指数向上剤の添加により補っています。
図 9 粘度指数向上剤による効果 原出典:トライボロジーの有効性 RMFジャパン(株)
7.2 粘度指数向上剤の作用機構
粘度指数向上剤は、主にポリマー(高分子化合物)で構成されており、潤滑油中での分子の挙動によって粘度の変動を抑制します。温度による潤滑油の粘度変化を抑える作用機構は次の通りです。
(1)低温での挙動:
粘度指数向上剤は低温では、分子がコイル状に丸まった状態で存在します。このため、潤滑油全体の粘度にはほとんど影響を与えず、流動性が維持されます。低温環境では潤滑油が固化しやすいのですが、粘度指数向上剤が添加された潤滑油は流動性を保ち、エンジンや機械の始動がスムーズになります。
(2)高温での挙動:
温度が上昇すると、粘度指数向上剤の分子がコイル状から伸びた状態に変化し、潤滑油中で広がります。これにより、潤滑油の流動性が抑制され、粘度が低下しにくくなります。特に高温で潤滑油の粘度が低下すると、潤滑膜が薄くなり、金属間の摩擦が増加する危険がありますが、粘度指数向上剤の働きでこのリスクを回避できます。
ポリマーの鎖が長いほど効果的ですが、逆に長すぎるとせん断に対して安定性が劣り、鎖が切断されて低分子量になり、粘度の低下を招きます。ポリマーの分子構造とせん断安定性の関係が重要です。
図10ポリマー系粘度指数向上剤の油中における挙動 原出典:トライボロジーの有効性 RMFジャパン(株)
7.3 粘度指数向上剤の種類
粘度指数向上剤には、いくつかの異なる種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。以下に代表的な種類を紹介します(図 11)。
(1)ポリメタクリレート(PMA):
PMAは、優れた粘度指数向上効果を持つポリマーで、特に高温環境での粘度安定性を向上させます。また、せん断安定性にも優れ、長期間にわたって安定した性能を発揮します。エンジンオイルやトランスミッションオイルに広く使用されています。
(2)ポリイソブチレン(PIB):
PIBは、低コストで粘度指数向上効果を得るために使用されるポリマーで、特に中低温環境での使用に適しています。ただし、高温でのせん断安定性がやや劣るため、過酷な条件下では使用が制限されることがあります。
(3)エチレン-プロピレン共重合体(OCP):
OCPは、優れた高温安定性を持つ粘度指数向上剤で、特に産業用潤滑油や重機用の潤滑油に適しています。また、せん断安定性にも優れ、長期間にわたり安定した性能を発揮します。
図11粘度指数向上剤の例 出典:潤滑油添加剤
7.4 粘度指数向上剤の効果
粘度指数向上剤の添加により、潤滑油の性能が大幅に改善されます。具体的な効果は以下の通りです。
(1)温度範囲の拡大:
粘度指数向上剤は、潤滑油の使用温度範囲を広げ、低温から高温までの幅広い条件下で安定した粘度を提供します。これにより、潤滑油は多様な環境に対応できるようになります。
(2)潤滑性能の向上:
高温環境でも潤滑油が十分な粘度を保つため、潤滑膜が安定し、金属表面間の摩耗や摩擦が減少します。これにより、エンジンや機械部品の寿命が延び、性能も向上します。
(3)燃費の改善:
低温での粘度変動を抑制することで、エンジンの始動性が向上し、燃費効率が改善されます。これにより、特に寒冷地でのエンジン性能が最適化されます。
7.5 粘度指数向上剤の選択と適用
粘度指数向上剤の選択は、使用する潤滑油の種類や用途、使用環境に応じて慎重に行う必要があります。
例えば、自動車エンジンオイルでは、高温下でのせん断安定性が重視されるため、ポリメタクリレートやエチレン-プロピレン共重合体が適しています。また、産業用の潤滑油では、長期間にわたる安定した性能が求められるため、せん断安定性に優れたタイプの粘度指数向上剤が必要となります。
8. その他の重要な添加剤
潤滑油には、さまざまな添加剤が使用されており、それぞれが特定の機能を発揮して機械の性能を最適化します。これまで紹介した添加剤に加え、以下に示すいくつかの重要な添加剤も機械の保護や効率的な運転に欠かせない役割を果たしています。
8.1 抗乳化剤(anti-emulsifing agent)
抗乳化剤は、潤滑油中に水分が混入した際に、水と油の分離を助けるために使用される添加剤です。水が油中に分散して乳化すると、潤滑性能が低下し、機械の故障や腐食の原因となるため、これを防ぐために抗乳化剤が配合されます。
抗乳化剤は、油中の水分を細かく分散させず、大きな液滴の形で存在させることにより、これらの水滴が重力で沈降して分離するのを助けます。これにより、潤滑油から水分を容易に除去することが可能になります。特に、海洋機器や食品加工機械などの水分が混入しやすい環境では、抗乳化剤が非常に重要です。
抗乳化剤として用いられる界面活性剤は、アニオン活性剤として硫酸化油、カチオン活性剤として第四級アンモニウム塩、およびノニオン活性剤としてエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドのブロックポリマーが挙げられます。
8.2乳化剤(emulsifier)
金属加工油や油圧作動油では、冷却性、難燃性を目的として水系潤滑油が用いられる場合があります。乳化剤によって鉱油や油脂と水との安定なエマルジョンにして使用されます。この場合、乳化剤が用いられ、主な働きとして2つあり、油―水の界面張力を下げる作用と生成した液滴を安定化させる作用があります。
界面活性剤の親水基と親油基とのバランス(HLB:Hydrophile-Lipophile-Balance)に応じて、油/水(O/W)型エマルジョンと水/油(W/O)型エマルジョンの2種類のエマルジョンが生成されます。
乳化剤としては、アニオン系とノニオン系の界面活性剤があります。アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸金属塩、脂肪酸の硫酸エステル、スルホン酸塩、リン酸塩が挙げられます。一方、ノニオン系界面活性剤には、ポリオキシエチレンなどが挙げられます。
図12エマルジョンのモデル 原出典:潤滑油添加剤
8.3消泡剤(anti-foam additives)
潤滑油添加剤は、ある種の界面活性剤です。従って、潤滑油添加剤が配合された潤滑油は、使用中に激しく撹拌されると、空気を巻きみ泡立ちやすいという性質があります。
発生した泡が油中に安定して存在すると、潤滑不良による摩擦部の摩耗や焼付き、油圧系では巻き込まれた気泡が、油ポンプ通過時の加圧異常や、動作不良などが発生します。
消泡剤は、潤滑油中に泡が発生するのを抑制する添加剤です。
潤滑油用の消泡剤は,潤滑油中に発生した気泡を不安定化させることで機能を発揮します。消泡剤として、シリコーン油(ポリメチルシロキサン)、金属せっけん、脂肪酸エステル、リン酸エステルなどがあります。現在では、シリコーン油が、1 ~ 100 ppm程度の微量添加で、優れた抑泡作用があり、基油の特性を損なわない点から、最もよく使用されています(図13)。
図13消泡剤の構造例 出典:潤滑油,潤滑油添加剤 界面活性剤講座(第8講)
8.4 摩擦調整剤(friction modifier)
金属表面に物理的、化学的に吸着し、金属表面と反応して潤滑被膜を形成することにより、潤滑面間の摩擦を制御する成分を摩擦調整剤といいます。広い意味では増摩擦剤も含まれますが、基本的には摩擦低減剤をいいます。
摩擦低減剤としては、無灰型添加剤、固体潤滑剤、有機モリブデン系添加剤があります。無灰型添加剤は吸着型であり、有機モリブデン系添加剤は反応被膜型です。固体潤滑剤は物理的な作用で金属接触を防ぐとともに潤滑被膜も形成し摩擦を低下させます。
無灰型添加剤は、吸着が妨げられる潤滑条件下(高荷重、高温、低速など)では性能を発揮しません。しかしマイルドな潤滑条件では優れた摩擦低減性能を発揮すること、比較的安価なことから広く採用されています。具体的なものには、エステル型、アミン型などがあります。
固体潤滑剤は、性能を発揮させるために添加量を多くする必要があります。具体的なものには、グラファイト、二硫化モリブデン、PTFE(Polytetrafluoroethylene)があります。
有機モリブデン系添加剤は金属表面に吸着した後、こすられることにより分解して、金属表面に 二硫化モリブデンの被膜を形成する添加剤です。Mo濃度で100 ppmのオーダーの低濃度で優れた性能を発揮すること、厳しい潤滑条件下で大きな摩擦低減効果を発揮することから、近年重要性が高まっています。その優れた摩擦低減性能からエンジン油に採用されています。具体的には、MoDTC(Molybdenum dialkyldithiocarbamate)、MoDTP(Molybdenum dialkyldithiohosphate)があります(図 14)。
図14 摩擦調整材の構造例 出典:潤滑油,潤滑油添加剤 界面活性剤講座(第8講)
9. 添加剤の現状と将来の展望
潤滑油添加剤は、近年の機械技術の進歩に伴い、その重要性がますます高まっています。添加剤の需要は増加の一途をたどっており、今後も新たな性能を持つ添加剤の開発が求められるでしょう。熱安定性やせん断安定性に優れた新しいポリマー型添加剤、より高温で使用可能な酸化防止剤や極圧剤、低灰分のさび止め剤や腐食防止剤などが今後の開発課題となるでしょう。また、合成潤滑油との組み合わせによる新しい潤滑システムの構築も期待されています。潤滑油添加剤の進化は、機械技術のさらなる発展を支える重要な要素であり、今後も注目され続けるでしょう。
参考文献
Lubricant Additives Chemistry and Applications 2nd Edition Leslie R. Rudnick CRC Press 2009年
潤滑油添加剤 広中清一郎、桜井俊男 化学教育Vol.23 No.6 1975年
潤滑油,潤滑油添加剤 界面活性剤講座(第8講) 飯野真史 J. Jpn. Soc. Colour Mater. Vol.89 No.9 2016年
トライボロジー入門 岡本純三、中山景次、佐藤昌夫 幸書房 1997年
参照図表
図 1 油性剤の化学的吸着 出典:潤滑油添加剤 広中清一郎 他 化学教育Vol.23 No.6
図 2 耐摩耗剤の働き 出典参考:潤滑油添加剤
図 3 耐荷重添加剤の相互作用 出典:出典:潤滑剤・潤滑油入門 三洋化成工業(株)HP
図 4 酸化防止剤の例 出典:潤滑油添加剤
図 5 清浄分散剤 出典:潤滑油添加剤
図 6 清浄分散剤分子の役割 原出典:潤滑油添加剤
図 7 流動点降下剤の作用 原出典:EVONIK INDUSTRIES流動点降下剤カタログ
図 8 流動点降下剤の例 出典:潤滑油添加剤
図 9 粘度指数向上剤による効果 原出典:トライボロジーの有効性 RMFジャパン(株)
図 10 ポリマー系粘度指数向上剤の油中における挙動 原出典:トライボロジーの有効性 RMFジャパン(株)
図 11 粘度指数向上剤の例 出典:潤滑油添加剤
図 12 エマルジョンのモデル 原出典:潤滑油添加剤
図 13 消泡剤の構造例 出典:潤滑油,潤滑油添加剤 界面活性剤講座(第8講)
図 14 摩擦調整材の構造例 出典:潤滑油,潤滑油添加剤 界面活性剤講座(第8講)
ORG:2024/09/13