6.2.1 固体潤滑剤の種類

6.2.1  固体潤滑剤の種類(Solid lubricant type)

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1.固体潤滑剤の特徴

固体潤滑剤に使用される固体は、荷重を支えることが出来てせん断抵抗が小さいという性質を持ち、一般には潤滑油やグリースと比較して性状が安定で、蒸発しにくく周囲を汚染しにくい特徴があります。

以下に示す条件で使用される機器の場合、固体潤滑剤の効果が特に大きいと言われています。

/ 高荷重
/ 高温・低温
/ 低速
/ 往復動
/ 軌道と停止が頻繁に行われる
/ 衝撃荷重
/ なじみ運転・慣らし運転
/ コンタミナントが多い環境
/ 腐食性雰囲気
/ 長期間無給油が要求される機器
/ 放射線環境
/ 真空

 

2.固体潤滑剤の種類

固体潤滑剤の分類例として、無機物質と有機物質とに大きく分けたものを表6.2.1.1に示します。

表6.2.1.1 固体潤滑剤の分類

 

3.固体潤滑剤の製品形態と特徴

(1)粉末またはそれを加工して使用するもの

対象となるのは、グラファイト(黒鉛)や二硫化モリブデン(MoS2)、窒化ホウ素(BN)などの層状格子構造を持つ物質が該当します。
ここでは、グラファイト(黒色)、二硫化モリブデン(鉛黒色)、常圧相窒化ホウ素(h-BN)の分子構造を見ていきましょう。何れも六方晶系で六角網面の層間をつないでいるのは弱いファンデルワールス力ですので、層間ではお互いに滑りやすい性質があります。この滑りによりせん断分離することにより潤滑性を示します。

図6.2.1.2 にそれぞれの結晶構造を示します。

図6.2.1.2 層状格子構造固体潤滑剤の結晶構造

黒鉛は、層間のファンデルワールス力を弱くするために、水蒸気が必要ですのでしんっく用には適しませんが、大気中での耐熱温度は500~600℃まで使用できます。
二硫化モリブデンは、耐熱温度350~400℃まで使用でき、また真空中でも使用できます。
常圧相窒化ホウ素は、大気中で700℃程度まで使用できます。ちなみに、常圧相窒化ホウ素は白色で、白い黒鉛ともよばれています。

これらの固体潤滑剤の粉末の適用方法を図6.2.1.3 に示します。

図6.2.1.3 固体潤滑剤による潤滑方式

 

(2)軟質金属の薄膜の形成

鋼などの硬質の下地金属の上に、金や銀、鉛などの軟質金属をイオンプレーティングやスパッタリングなどの物理的めっき法で,1~10μm程度の厚みで付着させて薄膜が形成されます。この面に負荷される荷重は、図6.2.1.4(a)に示すように、荷重は下地金属で支えて、運動によりせん断力が付加されれば軟質金属層が塑性流動して、軟質金属の摩擦係数を乗じた抵抗力を受けます。
なお、軟質金属のみで荷重を受ける場合(図6.2.1.4(b))、接触面積が大きくなるため摩擦力が大きくなります。一方、下地金属のみの場合、硬質金属層でのせん断抵抗により摩擦が大きくなります(図6.2.1.4(c))。

薄膜の材料は、金や銀などが真空中の潤滑に用いられます。銀については油中でも使用されることがあります。

図6.2.1.4 金属の摩擦抵抗

 

(3)自己潤滑性材料

自己潤滑性材料とは、構造体自身がその表面で潤滑性を持つものをいいます。高分子材料及び、高分子材料に固体潤滑剤を添加したものがその代表例です。
高分子材料としては、ポリアミド(ナイロン)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリエチレンなどが用いられます。これらの高分子材料は、表面エネルギーが小さいので相手面との凝着力が弱いため、摩擦係数が小さくなります。摩擦係数の一例を表6.2.1.5に示します。

図6.2.1.5 高分子材料の摩擦係数

これらの高分子材料に、固体潤滑剤を混入して成形した複合材料は、更に摩擦を低減する効果があります。混入される固体潤滑剤は、二硫化モリブデンが使用される場合が多いです。このような複合材料は、材料強度も低下するので、補強材としてガラス繊維などを混入して成形されます。

 

 

 

参考文献
トライボロジー入門  岡本純三他  幸書房
潤滑故障例とその対策   日本潤滑学会編   養賢堂
The Tribology Handbook  2nd edition  M. J. Neale  Butterworth-Heinemann 1999
Modern tribology Handbook   Bharat Bhushan  CRC press 2001
固体潤滑剤の種類と適切な⽤途 | ジュンツウネット21  https://www.juntsu.co.jp/qa/qa0901.php

 

引用図表
表6.2.1.1 固体潤滑剤の分類   潤滑故障例とその対策
図6.2.1.2 層状格子構造固体潤滑剤の結晶構造  Modern tribology Handbooksan_参考
図6.2.1.3 固体潤滑剤による潤滑方式   トライボロジー入門
図6.2.1.4 金属の摩擦抵抗   トライボロジー入門
図6.2.1.5 高分子材料の摩擦係数    The Tribology Handbook_参考

 

ORG:2019/7/2