6.2.2 固体潤滑剤の用途

6.2.2 固体潤滑剤の用途(Solid lubricant application)

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1.固体潤滑剤の特徴

相対する二面の理想的な潤滑状態は、流体潤滑状態です。流体潤滑状態は、流体の膜により二面間が完全に分離された状態です。しかし、油による潤滑には温度が上昇した場合の粘度変化など、潤滑条件の保持に注意が必要です。
油による潤滑を補う形で、比較的シビアな条件でも対応が可能な固体潤滑剤が適用されます。固体潤滑剤と油などの液体潤滑剤を比較すると、

[固体潤滑剤の長所]
・固体潤滑剤は、潤滑面から流出しないこと、物質的に安定なことから、固体潤滑剤を使用した機器は、長期にわたって休止状態でも、直ちに使用することが出来ます。
・雰囲気が高温の場合や、真空中でも使用できるものがあります。
・周辺を汚染することが少ないです。
・適切な材料、潤滑方法を選択することにより、機器のメンテナンスが軽減されます。

[固体潤滑剤の短所]
・摩擦係数が液体潤滑の場合より大きな値をとります。
・固体粒子のため移送が難しく、潤滑面には、原則事前に供給しておく必要があります。
・適用可能条件については、ある程度経験が必要です。

 

2.固体潤滑剤の用途

(1)組立用潤滑剤

二硫化モリブデン(MoS2)または、二硫化モリブデンとグラファイトとを高濃度に含有するペースト状の製品、または塗布作業性が良好なスプレー製品です。機器の組立を容易にするだけでなく、慣らし運転時のトラブルを防止して、機器のライフサイクルにわたる性能維持に用いられます。

 

(2)油浴式歯車潤滑剤

スコーリングなどの歯面損傷防止のために、二硫化モリブデンをの完全分散液をギア油に添加することは有効であるとされています。適用範囲も広く、製鉄所のピニオンスタンドから、小は印刷機のギアトレインまで幅広く適用されています。ギア油が黒くなることを避けたい場合は、有機モリブデン化合物が添加されます。また、即効性がある有機モリブデン化合物と効果が持続する二硫化モリブデンとの混合物を添加する場合は、より高度な耐スコーリング性を示します。

 

(3)高温部位の油潤滑

熱処理炉内の駆動用チェーン等の高温環境(例えば200℃超)での潤滑では、固体潤滑剤の選定に加えて基油の選定が重要です。
給油間隔を延ばしたい或いは残渣が残らないことを要求される場合は、酸化安定性に優れる合成油のポリアルキレングリコール(≒<200℃)、エステル油(>≒200℃)に、二硫化モリブデンを分散させた製品が適しています。
一方、操業サイクルや保全間隔が短く、オーバホール間隔が比較的短い場合は、カーボン残渣の少ない鉱物油にグラファイトを分散させた比較的安価な製品を使用することもあります。

 

(4)高温部位のグリース潤滑

一般には常時200℃を超える環境のグリース潤滑では、PTFEを増ちょう剤としてフッ素化油を基油としたグリースが適用されますが、非常に高価です。
しかし高粘度合成油に二硫化モリブデン、グラファイトを添加した無機系増ちょう剤グリースでも、dn≒<50,000までの連続運転で温度が250℃くらいまでなら適用可能です。使用温度が150℃前後の場合、リチウムコンプレックスやウレアグリースに二硫化モリブデンを添加したグリースでも、耐熱性だけでなく、耐摩耗性,低摩擦係数など優れた潤滑性が得られます。二硫化モリブデンを含有したベントングリースは、恒温での軟化流出もなく、温度変化によるちょう度の変化も少ないので、自動車のメンテナンスフリー個所やロボットなどのメカトロニクス装置用で、120℃位までの温度範囲で多くの使用実績があります。

 

(5)メカトロニクス機器用グリース

従来は、鉄鋼や造船、セメント等に代表される重厚長大形の産業が主流で、高温、低速、高荷重に耐えるという基本性能が要求され、二硫化モリブデンやグラファイトが主として用いられてきました。しかし近年は、自動車や弱電機器、精密機器等を中心に、塗布作業上や商品の汚染等を嫌い、PTFEや窒化ホウ素、MCAなどの白色固体潤滑剤を含有するホワイトグリースの需要が増加しています。色々な種類のホワイトグリースが専門メーカより準備されています。

 

(6)油やグリースを嫌う部位の潤滑

カメラ部品や真空雰囲気など、オイルやグリースが使用できないもしくは使いたくない部位の潤滑に対する要求が増大しています。これに対応するため、二硫化モリブデンや、グラファイト、PTFEなどの乾燥皮膜固体潤滑剤や、固体潤滑剤を樹脂に配合した塗料を常温または加熱乾燥させて潤滑塗膜を形成させたドライフィルムが多く用いられています。ドライフィルムは、各種使用条件に合わせて調合されることが多く、オーダメイド的な製品です。

 

(7)その他

上記に示した用途のほかに、特定分野別に食品用(ZnO,PTFE)や、塑性加工用(主としてMoS2,グラファイト)、焼付防止剤(超高温ではNi,Cuなどの金属粉末、高温ではグラファイト,Mos2)、高温成形体(hBNなど)、固体潤滑剤を含有した複合材料各種があります。
使用条件に対応した、製品の選定と適用する技術が非常に重要です。

 

 

参考文献
トライボロジー入門  岡本純三他  幸書房
固体潤滑剤の種類と適切な⽤途 | ジュンツウネット21  https://www.juntsu.co.jp/qa/qa0901.php

 

ORG:2019/6/28