8.4 爆発圧接

8.4 爆発圧接(explosion welding)

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1.爆発圧接の概要

爆発圧接は、爆薬によって加速された一方の部材(flyer plate)を、静止部材(target plate)に衝突させることによって接合する方法です(図8.4.1)部材の衝突部から前方に放出されるメタルジェットによる表面清浄化と、衝突圧力(数千MPaのオーダといわれています)による接合表面の密着化の効果を利用して接合します。

図8.4.1 爆発圧接の原理    Welding Science and technology

 

メタルジェットは、衝突点に高速で流入する金属が質量と運動量保存のため、衝突点前方に向かう運動量をもつため発生するといわれています。メタルジェットを発生させるためには、衝突点の移動速度を被接合金属の音速以下に抑える必要があり、火薬の爆発速度を制御する必要があります。

また、衝突角度および速度を適正に設定することにより、接合界面を図8.4.2に示すような波状界面にすることができて、接合面積の増加とアンカー効果による接合強さの改善が図られます。爆発圧接の特徴は、冷間溶接のためHAZ(熱影響領域)無しの接合ができることです。

図8.4.2 波状界面の例   日本機械学会誌 2019.5

一般に爆発圧接では、衝突速度と角度の適正な制御によって、非常に強固な接合界面が得られます。爆発圧接の接合機構は、液相の形成を前提とせず固相接合と考えられますが、爆発のエネルギーのため、接合部は相当の温度上昇が生じると考えられます。そのため、異種金属間の拡散・反応による金属化合物層が界面領域に形成される場合や、局部的に溶融領域の生じる場合があります。後者の場合に、詳細に界面近傍の金属組織を観察すると、非晶質などの非平衡相が形成されていることが観察されています。

爆発圧接の最も重要な適用分野は、異種金属間の接合です。現在適用されている接合法の中では最も多様な組合せに適用が可能で、クラッド鋼の製造に広く用いられています。例えば、ステンレス鋼と銅、鋼材もしくはチタンとアルミニウムなどの組合せは爆発圧接により製造が容易になりました。また、通常の溶融溶接が困難な異種金属を接合する際の遷移継手(transition joint)の製作にも多く用いられています。継手形状としては、環継手のような円環形状も可能です。

 

2.爆発圧接の特徴

以下に、下記に示す参考文献から抽出した爆発圧接の特徴を述べます。

(1)面接合である。
(2)定盤(anvil)の上に固定された基板(target plate)の上に、基板に対して15~24°に保持された駆動板(flyer plate)を、駆動板の厚みの1/4~1/2程度の隙間を空けた状態で設定します。
(この方法は、傾斜法と呼ばれます。基板と、駆動板を平行に設置する平行法も用いられています。)
(3)炸薬層は、駆動板の上にゴム板のスペーサを挟んで保持されます。
(4)炸薬が爆発すると、駆動板は下方に押し下げられ基板に高速(2400~3600 m/s)で衝突します。その結果2枚の板は対抗する面で接合します。
(5)本プロセスは異材の接合に用いることが出来ます。また、接合面は波状界面になっています(図8.4.2)。
(6)金属表面の酸化皮膜や汚れは、発生する高圧により破壊されたり吹き飛ばされてしまい活性な性状面が露出して接合します。
(7)本プロセスでは、0.7~2m2の面積が接合できます。
(8)爆発圧接は、単純で、高速で、かつ精度よく厚みを制御できます。
(9)低融点で耐衝撃性能が低い材料は、爆発圧接の適用は困難です。
(10)炸薬の爆発速度はおおよそ2400~3600 m/sです。爆発速度は炸薬層の厚みと充填密度によります。                                                                                                                                           

 

3.爆発圧接が適用される異種金属接合の組合せ例

爆発圧接が適用可能な異種金属接合の組合せ例を図8.4.3に示します。大部分の金属の組合せが適用可能ですが、鋳鉄のように爆発の衝撃で割れやすいもろい金属や、Mgを含むアルミニウム合金は接合が困難です。ただし、純アルミニウムは接合可能です。

図8.4.3 爆発圧接が適用される異種金属接合の組合せ例  (社)日本溶接協会

 

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参考文献
機械工学便覧 6th ed. ɤ03-03章  日本機械学会
Welding science and technology   Md. Ibrahim Khan   2007 
衝撃圧接による異種金属の接合  熊井 真次   日本機械学会誌 Vol.122 No.1206  2019.5
JWES((社)日本溶接協会)HP;接合・溶接技術Q&A1000 Q08-06-07

 

引用図表
図8.4.1 爆発圧接の原理    Welding Science and technology
図8.4.2 波状界面の例   日本機械学会誌 2019.5
図8.4.3 爆発圧接が適用される異種金属接合の組合せ例  (社)日本溶接協会

 

ADD:2024/02/23
ORG:2020/12/06