PQ分析

PQ分析(Product Quantity analysis)

 

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1. PQ分析とは

PQ分析は、製造現場における「製品(Product)」と「数量(Quantity)」の関係を体系的に把握し、生産計画や工場の生産性向上を図るためのIE手法の一つです。
「P(製品)」とは、取り扱う製品や部品を指し、「Q(数量)」はそれらの生産量や需要量を示します。
製造業では、多くの問題が日々発生しています。これらの問題の潰し込みを片っ端から行うのは時間の制約も有り、対策に要した工数・費用に、必ずしも改善効果が見合うかとの検討が必要です。
製造業において多品種少量生産が求められる中、生産ラインや設備の稼働効率を最大限に高めるには、製品ごとの生産量や工数を明確に把握し、何が一番の問題であり、その問題を解決することによりどの程度の効果が得られるかを予測して、改善する必要があります。
つまり、製品品種あたりの生産数量や金額が多く、ライン別の設備配置や短いサイクルでの繰返し作業など量産による習熟の促進や、管理の容易かが図れる製品を改善対象とします。
このような分析を体系的に行うのがPQ分析です。
PQ分析は、「我々の工場で生産している製品・部品の中で何を改善対象にしなければならないか。」を分析するためのものです。
PQ分析を具体的に行うものを、PQ分析図といいます。これは、横軸に製品や部品項目、縦軸に数量、金額、重量卯などを取り、大きい順に棒グラフを描いたものです。

 

2. PQ分析図とABC分析図、パレート図との関係

PQ分析図は、QC7つ道具のパレート図と類似しています。PQ分析図の棒グラフにABC分析図の累積線を記入したものがパレート図です。何れも重点管理をする目的は同じです(図1)。

ここで、ABC分析図とは、在庫管理などで用いられる手法です。原材料などが多種に及ぶ場合、管理しなければならない対象の数が多過ぎて、全てを管理するのが困難な場合に、重点管理を行うために使用されます。
ABC分析図について、在庫管理を例にしましょう。多品種の在庫品を消費金額の大きさの順に並べて、その累積曲線を作成します。消費金額及び数量の約70%をAグループとし、Aグループを含めて約90%を占めるものをBグループ、残りをCグループして分類します。この場合は、Aグループを重点的に管理することにより、効率的に在庫管理ができます。

また、パレート図は品質管理でよく用いられる手法です。品質上問題となっている不良、欠陥、クレーム、および故障などの現象や原因などの項目に分類して、データを整理し、不良個数や損失金額などの指標に対して大きい順に並べて、その大きさを棒グラフで表し、さらにそれらの累積和を線グラフで表した曲線を書き加えたグラフです。ちょうど、PQ分析図とABC分析図とを重ね合わせたものになります。このパレートというのはイタリアの経済学者で、所得分布を表わす法則を発表しました。すなわち、ほんの一握りの人が富の大部分を独占していることを表わしたものです。
アメリカの経営コンサルタントであるジュランが、これを応用して横軸に不良項目をその頻度順にならべて、縦軸には不良個数や損失金額などの頻度、およびそれらの類型値を入した、パレート図を提唱しました。

PQ分析図は、簡単に作図することができ、どの製品・部品が重点であるかを容易に見つけることができます。
製品・部品の数量、金額の重要度が一目でわかります。そうすることにより、どの製品・部品が全体のどの程度を占有しているかを目視出来ますので、説得力があります。
PQ分析図を用いることにより、まず効率的に改善効果の大きい製品・部品を選択できます。改善の企画書や報告書作成の際、データの羅列よりPQ分析図にして提示したほうが、理解されやすく説得力もあります。

図1 PQ分析図_ABC分析図_パレート図の例  出典: ORIGINAL,すぐに使えるQC手法

 

3. PQ分析図の活用法

3.1 PQ分析図の活用手順

PQ分析図の活用手順は、以下の通りです。
(1)生産実績や売上台帳から、過去1年くらいの製品・部品名と数量・金額・重量などの量的なデータを調査して、それらのデータを大きい順に並べ替えます。
(2)次に、縦軸に数量・金額・重量などの量的なデータを、横軸に製品・部品名を記入し、製品・部品別に数量・金額・重量などのデータをプロットして、大きい順に棒グラフを描きます。
(3)PQ分析図により、重点製品・部品や対象職場などを選び出します。

 

3.2 PQ分析図の作成手順

ここでは、ある工業製品を製造・販売しているA社を例として説明します。A社は、出来高をアップさせるために、製造重量が大きい製品を対象に改善したいと考えています。そのために、PQ分析図を作成して改善すべき主力製品を摘出したいと考えます。

(1)製品・部品一覧表を作成する。
A社が製造する製品の生産実績を調査しました。調査対象は、各製品毎の重量、数量、期間は1年間としました。
表1にその結果を示します。

表2 A社の製品生産実績  出典:ORIGINAL

(2)数量(もしくは重量)が大きい順にデータを並べかえる
製品を数字の大きい順に並べ替えます。一般的には、数量を元にして並べ替えを行います。ただし、製品の特性によって異なるものを用いるほうが適切な場合があります。数量を元にして並べ替えしたものを、表2に示します。

表3 A社の製品生産実績_数量順  出典:ORIGINAL

(3)PQ分析図を作成します
表2の基づいて、横軸に数量の大きい順に製品名を記入し、対応する数量や重量などを縦軸に取ります。
図3に、PQ分析図を示します。

図4 PQ分析図  出典:ORIGINAL

 

3.3 PQ分析図の見方

図3から、どの製品・部品が主力であるかが判断できます。A社の製品の中でどれくらい生産されているのか、がグラフ上から読み取ることができて、主力となる製品を中心に改善を進めれば、大きな改善効果が期待できるはずです。
一般的には、PQ分析図の横軸を三等分した一番左が売れ筋の製品であり、真中が中間製品、一番右側は言わば死筋製品といわれるものになります。従って、改善対象は一番左側の部分から決定します。
横軸の分類項目の取り方は、①原材料(製造メーカ別)、②製品(自社製品の名称、商品名)、③職場(自社内の各職場)、④事業所(自社内の事業所別)、⑤外注(外注メーカ別)などで分類します。
縦軸の数値については、①金額(生産金額、販売金額、粗利益)、②重量(生産重量)、③数量(生産数量)などを用います。

 

4. PQ分析の実際の活用事例

事例として、電子部品工場の生産性改善を取り上げましょう。
(1)課題:
多品種少量生産が増加し、設備の稼働率が低下。

(2)PQ分析の実施:
1. 当該工場で生産する、製品別の生産数量と工数を集計。
2. PQ曲線を作成し、主要製品(累積工数の80%を占める製品)を特定。
3. 主要製品の生産ラインに改善策を集中して投入する(設備の段取り時間短縮、作業標準化など)。

(3)結果:
・ 主要製品の生産性が20%向上
・ 生産設備の稼働率が改善し、他の少量生産品への対応力も向上

 

5. PQ分析のメリットと課題

5.1 メリット:

・ 重点的な改善が可能:主要製品にリソースを集中することで、大きな改善効果を得ることができます。
・ 生産性向上:ボトルネックの解消により、効率的な生産が可能になります。
・ コスト削減:無駄な工数や生産ラインの非効率を排除し、コスト削減につなげられます。

5.2 課題:

・ データ収集の手間:製品別の詳細な生産量や工数データの収集には時間がかかることがあります。
・ 少量生産品の対応:少量生産品をどのように管理・改善するかが課題となる場合があります。

 

6. PQ分析を効果的に実施するためのポイント

PQ分析を成功させるためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
(1)データの正確な収集
生産数量や工数のデータは正確に収集し、現場の実態を反映させる必要があります。

(2)優先順位の明確化
PQ分析図を活用して、改善すべき優先順位を明確にすることにより効率的な改善が可能です。

(3)現場との連携
改善策を実行する際は、現場作業者と連携しながら取り組むことで現実的な改善が実現できます。

(4)PDCAサイクルの継続
改善効果を測定し、定期的にPQ分析を行うことで、継続的な生産性向上が可能になります。

 

 

参考文献
コストダウンのためのIE入門  岩坪友義 日本経済新聞社 1995年

引用図表

図1 PQ分析図_ABC分析図_パレート図の例  出典: ORIGINAL,すぐに使えるQC手法
表2 A社の製品生産実績  出典:ORIGINAL
表3 A社の製品生産実績_数量順  出典:ORIGINAL
図4 PQ分析図  出典:ORIGINAL

ORG:2024/12/19