2. セル生産方式の起源と歴史的発展

2. セル生産方式の起源と歴史的発展
(2. The origin and historical development of cellular manufacturing)
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Contents
1. セル生産方式の起源と日本的セル生産方式
セル生産方式の用語の起源は、類似の部品やプロセスをグループ化・集約化して大量生産が容易なようにするという概念です。この概念は、グループテクノロジー(GT:Group Technology)として知られており、セル生産方式に先行するものであり、その基礎となる概念です。
USAの実業家ラルフ・フランダースは 1925 年に GTのアイデアを紹介しました。組織的な研究としては、1930年代にソビエト連邦セルゲイ・ミトロファノフが、GTの概念を発展させることに始まりました。
(ラルフ・フランダース氏についての言及は、USのセル生産方式のWikipediaによります。元文献も確認しましたが、GTの起源になるかについては、管理人としては判断を保留します。)
更に、1970年代、スウェーデンのボルボ社は自動車組立作業をコンベアラインからセル生産に切換えました。目的は、作業者の労働意欲やモラルの向上ですが、結局1990年代には廃止されました。取扱いについては、セル生産方式とは異なるといわれています。
また、1980年代の終わりごろからUSAのパソコンメーカ(コンパック(現HP)など)をはじめとする電子機器メーカで少人数チームによるセル生産方式が導入されました。多品種少量、短納期の要求に対して、フレキシブルかつ低コストで対応でき、その威力を発揮しました。そしてこの業界の標準的な製造方法として世界中に拡がりました。
これらについても、セル生産方式と言われますが、基本的には大量生産方式の一種で、その枠組の中で運営されています。
日本の製造業では、1990年代半ばに大手電機メーカなどが、リードタイムや在庫の削減を図るためにセル生産を始めたのが、日本でのセル生産方式の初めだといわれています。熟練技術者の養成・定着が前提のセル生産方式は、日本以外では難しいと考えて、国内生産の生き残りの切り札として導入したといわれています。その有用性から、電機メーカのみならず精密機器メーカにも、広く普及したといわれています。
ただ、セル生産方式という表現は取らないですが、トヨタでは1960年代には、トヨタ生産方式の考え方や手法を導入した、U字ラインを立ち上げていました。これはセル生産方式と言う文言では無いですが、日本で言うセル生産方式の始まりだといえます。
私たちが、セル生産方式というものは、この日本で開発された多品種少量生産に適用される生産方式といえます。
2. セル生産方式の源流:トヨタ生産方式(TPS)
日本におけるセル生産方式のルーツを考えると、その源流はトヨタ生産方式(TPS)に深く根ざしていることがわかります。第二次世界大戦後の資源が限られた時代において、トヨタは、トヨタ生産システム(TPS)として知られる、リーン生産の思想を核とする独自の生産システムを構築しました。
TPSの基本的な考え方は、徹底的なムダの排除と、必要なものを、必要な時に、必要なだけ生産することにあります。従来の大量生産方式のように、見込み生産による過剰な在庫を持つのではなく、顧客の注文に応じて、効率的に製品を供給することを目指しました。
セル生産方式は、このTPSの思想を実現するための具体的な手法の一つとして、工程の流れ化と多能工化を促進する中で発展してきました。
3. セル生産方式の初期の導入と発展
セル生産方式が具体的に導入され始めた時期については、明確な定義がないものの、1990年代から2000年代初頭にかけて、特に電機産業や精密機械産業で普及が進んだとされています。
初期の導入事例として、NEC長野での取組みが挙げられます。
トヨタ生産方式に詳しい生産コンサルタントである山田日登志氏の指導を受け、JIT生産方式への転換の一環として、組立工程における在庫削減やリードタイム短縮を追求して、一人屋台と呼ばれる一人で製品を組み立て挙げるセル生産方式をワープロに適用したのが始まりといえます。
また、コンサルタントの指導を受けなかった場合でも、独自に自動車・同部品企業を訪問して学習し、そのレイアウト、特に部品加工のU字型ラインを模倣して組立工程を組むケースが多く見られました。
このように、元々のジャストインタイム(JIT)を中核とするトヨタ生産システムで、U字ラインが進化し、その後「一人屋台方式」が登場し、それらを合わせて、セル生産方式と総称されるようになりました。
4. セル生産方式の定義と要素
セル生産方式には明確な定義はありません。しかし一般的に、以下の3つの要素が含まれていると考えられます。
(1)人の活性化: 作業者の意欲を高め、主体的な改善活動を促します。
(2)一貫生産: 分業の弊害をなくし、複数の工程を連結して一貫した生産を行います。
(3)少量生産用設備: 大量生産用のコンベアや高速自動機を廃し、少量生産に適した簡便な設備を導入します。
セル生産方式では、「定員の決められていない少人数のチームで、コンベアを撤去しワークを手送りすることで、比較的多くの品種を切り換えながら、一貫生産する」ことを基本とし、更に、「現場主導の自律的生産運営の中で、必要以上の在庫を持たずに、簡便な設備を使って、売れた分だけ、素早く造る」ことを重視し、多品種少量生産方式を構築します。
5. 多様なセルレイアウトの展開
セル生産方式の普及とともに、生産する製品や工程の特性に合わせて、様々なレイアウトが考案・採用されてきました。セルレイアウトの種類については、「1. セル生産方式の概要」に詳しく記述していますので、そちらも御参照下さい。本項では、セルレイアウトとライン運用方法とについて示します。
表1 セルレイアウトのライン形態毎のライン運用方式 出典:ORIGINAL
6. 技術革新とセル生産方式の進化
製造業におけるデジタル化の進展に伴い、セル生産方式はIoT(Internet of Things)や自動化技術と組み合わせることで、さらなる効率化が期待されています。
特に、簡便自働化という考え方が、セル生産における自動化を推進しています。これは、高価な専用設備に頼るのではなく、現場の作業者がDIY感覚で、安価で柔軟な自動化設備を内製化していくアプローチです。異常発生時の自動停止機構や、容易な動作変更・移動が可能な点が重要視されます。
また、タクトタイムに合わせた生産や、後工程が必要な分だけ前工程から引き取るプル生産といったTPSの原則も、セル生産方式の効果的な運用には不可欠です。平準化された生産は、これらの原則を支える重要な要素となります.
近年では、市場ニーズの多様化と変動の激化に対応するため、ダイナミックセル生産方式という新たな概念が注目されています。これは、生産量や製品種類の変化に応じて、セルの構成や人員配置を柔軟に変化させることで、より高い柔軟性と生産性を実現しようとするものです。
参考出典
1から始める同期セル生産方式 柳生俊二 日刊工業新聞社 2003年
コンベア撤去の衝撃走る 一人完結の「セル生産」 日経メカニカル 1005年
セル生産方式の基礎知識 来嶋一弘 イプロス 2017年
Manufacturing cells Edoardo Chiapponi MIKANO 2021年
引用図表
表1セルレイアウトのライン形態毎のライン運用方式 出典:ORIGINAL
ORIGINAL:2025/04/06
管理人の独り言
セル生産方式とは別のお話、GTについての思い出です。
管理人は、卒業後親戚が経営していたターボポンプメーカに就職しました。
基本設計技術でしたが、親戚の会社ということも有り、将来的には技術系の管理職になる予定で、当時工場長をされていた大叔父には、「会社の中をすみずみまで、よく見ておくように。良いところも悪いところもあるので、御前がその立場になったら、修正していくように。」とよく言われていました。
結局は、社長とどうしても意見が合わず、退職することになりました。
退職までの約5年間、設計を担当していた高温用軸流ポンプがどんどん大型化していき、加工をどのようにするかが、喫緊の課題になりました。このポンプは、樹脂の新しい製造方法に適用する主要機器になり、将来的にも比較的大型ですが、いろいろなサイズで製作されることが予想されました。
「加工方法について、考える工数を何とか減らすことができないか。」と、製造から相談を受けながら考える過程で、学生のころ経営工学の科目として、グループテクノロジーについて紹介されたことを思い出しました。
ここから、GTについて中之島図書館で技術書を何冊か借りて、読み進めました(給料がメチャ安かったので、借りることができませんでした)。結局、どのようにしたら適用できるか、考えているうちに転職することになり、中途半端に終わってしまったことを憶えています。
確か、シャフト加工についてはGTコードの割り付けをトライしたと記憶があります。残念ながら、ハウジングやそのほかの主要部品については手つかずで終わりました。
退職した時点で、残念ながらGTの勉強は終わりました。
という管理人の記憶を、ダラダラと述べさせて頂きました。