ワーク・サンプリング

ワーク・サンプリング(Work Sampling)
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Contents
1. ワーク・サンプリングとは
ワーク・サンプリングとは、作業現場における作業員や設備機械の稼働状況を、特定の時間にランダムに観測し、そのデータを統計的に分析することで、作業の効率性や問題点を把握する手法です。これは、瞬間観測法とも呼ばれます。
従来から用いられている、ストップウォッチを用いた時間研究では、作業者一人に長時間密着して計測する必要があり、作業者への負担が大きかったり、観測者の主観が入ってしまうなどの問題がありました。
一方、ワーク・サンプリングでは、ランダムな時間に瞬間的な観測を行うため、作業者への負担が少なく、客観的なデータを取得できます。また、多人数での作業や複雑な工程にも適用できるという利点があります。
2. ワーク・サンプリングの目的とメリット
2.1 目的
ワーク・サンプリングを実施する主な目的は、作業のムダを数値化し、生産性向上のための改善点を見つけることです。具体的には、以下の点が挙げられます。
・ ロスの定量化
・ 生産性向上の余地を概括的に把握
・ 各作業や状態のおおよその時間値の把握
2.2 メリット
ワーク・サンプリングには、以下のようなメリットがあります。
・ 少ないサンプル数でも全体の傾向を高精度で推測できる。
・ 短時間で容易に実施できるため、担当者の負担が少なく、他の業務との両立もしやすい。
・ 作業者への負担が少ない。
・ 多様な作業に適用できる。
・ コストパフォーマンスに優れている。
・ 一人の観測者で複数の対象を観測できるため、広い範囲を効率的に観測できる。
・ 観測・計算が簡単で誰にでも観測できる。
・ 対象者に観測を意識させない。
・ 長い期間での観測も可能。
3. ワークサンプリングの実施手順
ワーク・サンプリングの実施手順は、以下のようになります。
(1)目的の明確化:
何を測定し、どのような改善を目指すかを明確にします。例えば、設備の稼働率向上を目指す場合、具体的な目標値を設定します。
(2)観測計画の策定:
・ サンプリングの頻度と期間を決定します。
・ 必要なサンプルサイズを計算する。
/ サンプルサイズが少なすぎると信頼性が低下し、多すぎるとコストや時間の浪費につながるため、信頼度や許容誤差に基づいて適切なサンプルサイズを設定する必要があります。
・ 観測対象を定義し、分類します。
/ 「作業中」「非作業中」などの状態を明確に定義し、対象となる設備や作業者の範囲も具体的に設定する必要があります。
(3)観測ツールの準備:
サンプリングシート、モバイルアプリ、携帯型デバイスなどを準備します。
・ 試験観測を行い、ツールの信頼性を確認することが推奨されます。
(4)データ収集:
・ ランダムなタイミングで観測を行い、状態を記録します。
/ 観測者は、ランダム選択の原則を遵守し、観察者の主観を排除することが重要です。
/ 観測対象の正確な分類や、記録方法を徹底する必要があります。
(5)データ分析:
・ 観測結果を統計的に分析し、稼働率や非稼働率を計算します。
/ 特異値の確認も行って、データの偏りがないかを検証します。
・ 非効率なプロセスの原因を特定します。
/ 時系列データとして観測結果を解析することで、時間帯や日付ごとのパターンやトレンドをつかむことができます。
(6)結果のフィードバックと改善提案:
・ 分析結果に基づき、改善案を提示し、現場での実行を支援します。
/ 得られたデータを現場に効果的に伝え、実行可能な改善策を提示することが重要です。
4. ワークサンプリングの活用事例
ワーク・サンプリングは、製造業、サービス業、物流・倉庫業、建設業など、様々な分野で活用されています。
(1)製造業:
・ 設備稼働率の測定
・ 作業者の稼働状態の分析
・ ボトルネック工程の特定
・ 組立ラインのバランス調整
・ 工程のボトルネック解消
・ 品質問題の原因究明
・ SMTラインの稼働率向上
・ 検査工程の効率化
・ 不良品発生原因の特定
(2)サービス業:
・ 顧客対応時間の分析
・ サービス提供プロセスの効率化
(3)物流・倉庫業:
・ 商品のピッキング作業や梱包作業の効率測定
・ トラック積載効率の評価
・ ピッキング作業の効率化
・ 荷物の仕分け作業の改善
・ 配送ルートの最適化
(4)建設業:
・ 作業者の待機時間や非生産的作業の特定
・ 工事プロセスの最適化
(5)オフィスワーク:
・ 事務作業の効率化
・ 会議時間の短縮
・ 書類作成の改善
5. 稼働分析におけるデータ分析
ワーク・サンプリングで得られたデータは、以下の手順で分析されます。
(1)データ集計:
収集した観測データを基に、各作業ステータスの頻度を集計します。
・ 統計的手法を適用して信頼性を確保します。
(2)稼働率と非稼働率の算出:
データから、機械や人員の稼働率(作業時間の割合)及び非稼働率(待機時間の割合)を算出します。
(3)各作業の時間割合の算出:
以下の式を用いて、各作業の時間割合を算出します。
P = X / N
ここで、
P:各作業の時間割合
X:各作業の発生回数
N:全体の観測回数
(4)価値作業・付随作業・ムダ作業への分類:
各作業を価値作業、付随作業、ムダ作業に分類し、集計します。
・ 例えば、「加工」と「検査」は価値作業、「手待ち」と「歩行」はムダ作業と分類できます。
6. ワーク・サンプリング実施の注意点
ワーク・サンプリングを成功させるためには、以下のような点に注意する必要があります。
・ 計画段階の重要性:サンプルサイズや観測タイミングを科学的に設計する必要があります。
・ 観測者の訓練:観測対象の正確な分類や記録方法を徹底することが不可欠です。
・ 結果のフィードバック:得られたデータを現場に効果的に伝え、実行可能な改善策を提示することが重要です。
・ 柔軟な対応:観測中に発見された新たな課題に応じて計画を見直すことも必要です。
・ 観測時間の無作為性を確保する。
・ 観測項目を明確に定義する。
・ 作業者への適切な説明と協力の確保しなければなりません。
7. ワーク・サンプリングのソフトウェア
ワーク・サンプリング作業を効率化するために、専用のソフトウェアが開発されています。これらのソフトウェアは、データ入力、集計、分析、報告書作成などを自動化し、作業時間を短縮することができます。
8. まとめ
ワーク・サンプリングは、手軽に実施できる上に、客観的なデータを取得できるため、様々な分野で活用されています。
ワーク・サンプリングを効果的に活用することで、現場の作業効率を向上させ、生産性向上につなげることができます。
ORG:2024/12/25