2.10 せきによる開水路流量計

2.10 せきによる開水路流量計(Open channel flow meter by weir)

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当初は、堰(せき)については、記述しない方針でしたが、今でもJIS B8302-2002 「ポンプ吐出し量測定方法」には、吐出し量の測定方法としてせきによる方法が記載されています。最初の勤務先では、超音波流量計を購入するまでは、中流量から大流量の流体機器の性能試験での流量測定に、三角せきや四角せきを使用しました。液位の読みだけで流量測定が可能なので、簡便で使いやすかった記憶があります。

2.1~2.9項に示した流量計は、何れも管路を液が充満した流れを測定する閉水路流量計であるのに対して、せきは開水路を流れる流体の測定に使用される流量計です。筆者は、ポンプの吐出し量の測定に用いましたが、一般に使用頻度が高いのは、工場排水や下水などを測定します。工場排水は、上部が開放された開水路ですし、下水はヒューム管などの円形管路内を自由表面を持って流れていますので、やはり開水路流れになります。

せきとは、上方に自由表面を持ち、重力により流出する際の水路に直角に設けた流出口をいいます。流出口の形状により、三角せき、四角せき、全幅せきなどがあります。

せきを超える流れの様子を図2.10.1 に示します。流れの自由表面は上流から少しずつ加工して近寄り速度で席に近づき、せきを超える付近から急激に位置エネルギーを失い、速度エネルギーに変化しながら下流側に落下します。

せきの下縁から流出する流れは薄刃せきの場合、まず刃部で鉛直上向きに流出します。流れは漸次下流方向に押し曲げられて最頂部に達します。収縮状態なった後、その後は重力により加速落下しておおむね放物線を描きます。せきの高さDと水深D+Hとの関係のより収縮の程度は異なります。

図2.10.1 せきを越す流れ

図2.10.1に示すAの部分は大気圧になるように空気穴が設けられます。大気と絶縁された場合、Aの部分は負圧になり流量が増加します。

 

それぞれのせきを通過する流量は以下のように計算されます。

(1)直角三角せき(図2.10.2)

ここで

Q:流量 (m3/min)
h:せきのヘッド(m)
K:流量係数
B:水路の幅(m)
D:水路の底面から切欠底点までの高さ(m)

この式の適用範囲は、

B=0.5~1.2m, D=0.1~0.75m, h=0.07~0.26m(ただし、h ≦B/3)

図2.10.2 直角三角せき

 

(2)四角せき(図2.10.3)

ここで

Q:流量 (m3/min)
b:せきの幅(m)
h:せきのヘッド(m)
K:流量係数
B:水路の幅(m)
D:水路の底面から切欠下縁までの高さ(m)

この式の適用範囲は、

B=0.5~6.3m, b=0.15~5m, D=0.15~3.5m(ただし、bD/B2≧0.06 とする), 

h=0.03~0.45√b m

図2.10.3 四角せき

 

(3)全幅せき(図2.10.4)

ここで

Q:流量 (m3/min)
b:せきの幅(m)
h:せきのヘッド(m)
K:流量係数
D:水路の底面から切欠下縁までの高さ(m)
ε:補正項
  D≦1m;ε=0
  D≧1m;ε=0.55(D-1)

この式の適用範囲は、

B=b≧0.5m, D=0.3~2.5m, h=0.03~D m(ただし、h≦0.8m かつh≦b/4) 

図2.10.4 全幅せき

 

 


関連項目

2.1 差圧式流量計
2.2 電磁流量計
2.3 超音波流量計
2.4 容積流量計
2.5 面積流量計
2.6 タービン流量計
2.7 熱式質量流量計
2.8 コリオリ流量計
2.9 渦流量計
2.10 せきによる開水路流量計

 

 

 

参考文献
流量計ガイド    黒森健一   インターネット
機械工学便覧改訂第5版 8.水力学及び流体力学
JIS B8302-2002 「ポンプ吐出し量測定方法」

 

 

引用図表
図2.10.1 せきを越す流れ   機械工学便覧改訂第5版 8.水力学及び流体力学
図2.10.2 直角三角せき   JIS B8302
図2.10.3 四角せき     JIS B8302
図2.10.4 全幅せき     JIS B8302

 

 

ORG:2018/9/8