1.1.1 炭素鋼・合金鋼配管

1.1.1 炭素鋼・合金鋼配管(steel pipe, low alloy steel pipe)

スポンサーリンク

 

1.鋼管の製造方法

鋼管の製造方法には、色々ありそれぞれ特徴があります。一般に異なる製造方法で製作された管は、強度や温度・圧力の制限などの特性が異なります。例えば、壁の厚さが同じでも製造方法が異なれば、強度や圧力の制限が異なる場合があります。

ここでは代表的な製造方法として、シームレス管及び、電縫管、スパイラル溶接管の3種類を取り上げます。

 

(1)シームレス管(seamless pipe)

シームレス管(seamless pipe)は、ビレット(billet)と呼ばれる加熱された鋼塊(steel ingot)にマンドレル(mandrel)と呼ばれる棒を押し込むことにより継ぎ目のない管を成形します。図3.2.1にシームレス管の製造工程を示します。

図3.2.1 シームレス管の製造工程    Pipe Drafting And Design

 

(2)電縫管(seam welded pipe)

電縫管は、熱間圧延コイルをシェイパーと呼ばれるロールに通すことにより、管状に成形されたもののエッジ部(シーム:seam)を高周波溶接などで接合します。接合方法は高周波溶接以外でも鍛接やサブマージアーク溶接などいろいろ実用化されています。図3.2.2に電縫管の製造工程を示します。

この他、熱間圧延コイルで管状に成形した後、エッジ部のみ誘導加熱でシーム部を鍛着する鍛接鋼管や、厚板をプレス成形して、エッジ部の開先加工を施した後サブマージアーク溶接でシーム部を接合するUOE鋼管もこの分類に含まれます。

図3.2.2 電縫管の製造工程     Pipe Drafting And Design

 

(3)スパイラル鋼管(spiral-welded pipe)

スパイラル鋼管は、電縫管と同様熱間圧延コイルを素材として使用します。コイルはエッジミラーで端部に開先加工を施工した後、理髪店の看板のポールに似たスパイラル形状に成形されて、内外綿からザブマージドアーク溶接法により溶接することにより製作されます。図3.2.3に溶接前のスパイラル鋼管の形状を示します。

スパイラル鋼管は、壁厚が薄いため、低圧用途の配管系に用いられます。

図3.2.3 スパイラル鋼管の溶接前の形状   Pipe Drafting And Design 

 

これらの鋼管の出来上がりの状態を、図3.2.4に示します。

図3.2.4 それぞれの鋼管の出来上がりの状態    Pipe Drafting And Design

これらの鋼管製造方法には、それぞれ長所・短所があります。例えば、電縫管は肉厚が均一な圧延鋼板から製作されており、成形および溶接の前に欠陥を検査することができます。この製造方法は薄肉・長尺の管を製作する場合に特に有効です。ただし、溶接シームがあるのでシームレス管よりは強度は低く見積もられます。
例えば、ANSIの圧力配管コードB31.1.0では強度係数の概念が与えられ、シームレス管は100%、電縫管は85%、スパイラル鋼管は60%の効率で管理されています。JISでも、電縫管の場合は溶接効率を80%に取っています。

 

2.鋼管の用途

鋼管の主要な用途とその製造方法について、表3.2.5 に示します。
例えば、配管用鋼管は、上水道や都市ガスの供給や、化学プラントの流体移動、建物の空調機器用に使用されます。土木・建築に使用される建築構造用配管、自動車や機械部品に使用される機械構造用配管、石油や天然ガスの清算や輸送に使用される油井管やラインオアイプなどいろいろな用途がありますが、使用目的によりそのサイズや要求される性能が大幅に異なります、

表3.2.5 鋼管の主要な用途とその製造方法   参考:JFE技報

 

3.配管の種類

本項では、配管用鋼管に限定して記述します。また、ステンレス鋼鋼管は別項目で記述します。
JIS規格に規定されている、主な炭素鋼管、合金鋼管を(表3.2.6)に示します。

表3.2.6 主な炭素鋼管、合金鋼管   参考:JFE技報

 

3.1 炭素鋼管
(1)SGP:配管用炭素鋼管(JIS G3452)

一般的にはガス管と呼ばれます。外径及び肉厚について規定されています。350℃以下の比較的低圧の上水以外の水及び、油、ガス、空気などの配管に使用されます。配管用炭素鋼管は黒管と白管とに分けられます。白管は、防食のために亜鉛メッキを施した管をいいます。何れもシーム管で、鍛接法及び電気抵抗溶接法により製作されます。

 

(2) SGPW:水配管用亜鉛メッキ鋼管(JIS 3442)

上水以外の給水用配管に用いられます。配管用炭素鋼管に亜鉛めっきを行ったもので、十分な耐食性を維持するため、亜鉛の付着量を平均で600g/m2以上、最小で550g/m2と規定しています。
当初は、上水道にも使用できたのですが、1997年に水道法に規定する亜鉛の進出性能試験の基準を満足しないことが明らかになり、”上水道を除く” に改定されました。

 

(3)STPG:圧力配管用炭素鋼管(JIS G3454)

350℃以下で使用する圧力配管に用いられます。強度レベルは370MPaと410MPaとの2水準があります。STPGは管の使用圧力の段階を考慮して、スケジュール番号による肉厚系列が規定されており、使用圧力によって材料の強度と肉厚とを選択できます。規格のスケジュール番号は表3.2.7に示します。

表3.2.7 各種鋼管の肉厚系列

 

スケジュール番号は、次式で求めることができます。

Sch. No. = P/S × 1000

で求められます。

ここで、
P:使用圧力(MPa)
S:材料の許容応力(MPa)

例えば、3MPaの圧力でSTPG370の鋼管を使用する場合、材料の許容応力を引張強さの1/4とすると、必要なスケジュール番号は

Sch.No. = 3/(370/4) × 1000 = 32.4

となり、スケジュール番号40 の鋼管を選択する必要があります。

このように、配管設計をする際、使用圧力と材料強度を決めると、外径によらずスケジュール番号で配管を決めることができます。

製造方法は、継目なしと電気抵抗溶接管の2種類が規定されています。

 

(4)STPT:高温配管用炭素鋼管(JIS G3456)

規格上は、適用範囲は450℃までの高温に使用できますが、427℃以上で長期間使用すると、黒鉛化によるぜい化の懸念があるため、実質上は425℃以下で使用されます。
強度レベルは、370MPaと、410MPa、480MPaの3水準が規格化されています。Siキルド鋼(粗粒組織)を使用して、継目なしか電気抵抗溶接で製造されます。ただしSTPT480については、継目なしのみが規定されています。
肉厚系列については、STPGと同様スケジュール番号による肉厚系列が規定されていますが、より厚肉の系列まで規定されています(表3.2.7)。

 

(5)STS:高圧配管用炭素鋼管(JIS G3455)

STPGよりも高圧用途に使用されます。温度区分は350℃以下の使用になります。強度レベルは、370MPaと、410MPa、480MPaの3水準が規格化されています。Si-Alキルド鋼(整細粒組織)を使用して、継目なしで製造されます。
肉厚系列については、STPGと同様スケジュール番号による肉厚系列が規定されていますが、スケジュール番号40から160の7系列が規定されています(表3.2.7)。

 

(6)STPL:低温配管用鋼管(JIS G3460)

STPLは、SGPや、STPG、STSの下限から、-45℃までの温度区分で使用されます。これより低い温度範囲については、オーステナイト系ステンレス鋼管が使用されます。
強度レベルは3水準規定されていますが、それぞれ使用材料が異なります。STPL380は炭素鋼、STPL450は3.5Ni鋼、STPL690は9Ni鋼を使用しています。STPL380は継目なしか電気抵抗溶接で製作されます。STPL450,STPL690については、継目なしでの製造のみです。
肉厚系列については、STPGと同様スケジュール番号による肉厚系列が規定されていますが、スケジュール番号40から160の7系列が規定されています(表3.2.7)。

 

(7)大径鋼管を必要とする場合

規格上は650Aまで規定されていますが、実質的には500A以上の管を必要とする場合は、板材を巻いて長手継手を完全溶込み溶接により溶接鋼管として製作されます。
STPGの使用範囲では、SM400、SM490の板材を使用します。STS、STPTの使用範囲では、SB410及び、SB450、SB480の板材を使用します。
これらの溶接鋼管については、JIS規格が規定されていないので、JPI規格の管を使用するか、JPI、ASTM規格などを参照して、独自に製造仕様書を作成して発注する必要があります。
溶接鋼管の長手継手は、完全溶込み溶接でかつ100%RT(放射線透過試験)を満足すれば、溶接効率を1として、強度的には継目なし鋼管と同等の扱いをします。

少し記憶があいまいですが、管理人が設計したポンプで溶接鋼管を多く使用しました。このときは20%RTで溶接効率を80%で設計したと記憶しています。

 

3.2 STPA:配管用合金鋼管(JIS G3458)

合金鋼管は、高温強度や耐食性を高めるために合金元素としてCrや、Mo、Niなどを1種類以上添加した鋼です。低合金鋼は、0.5~9%のCr、0.5~1%のMoを含んでいます。Crは耐食性、耐酸化性を高め、Moも微量で高温強度を高めます。
配管としては、STPA材が該当します。STPA12がモリブデン鋼以外は、STPA22以上の鋼管はクロムモリブデン鋼を用いています。何れも継目なしで製造されます。
表3.2.8に種類と合金成分とを示します。また、STPAについても肉厚系列はスケジュール番号により規定されます。スケジュール番号10から160の10系列が規定されています(表3.2.7)。

表3.2.8 合金鋼管の種類と合金成分   参考:配管設計実用ノート

 

4.水・水蒸気系の配管材料

最も一般的な用途の水・蒸気系の配管材料の選択例を表3.2.9 に示します。STPT 材、SB材については、427℃以上で長時間使用すると黒鉛化してもろくなる性質があります。

表3.2.9 水・蒸気系の配管材料選択例   配管設計実用ノート

 

 

 

参考文献:
配管設計実用ノート  西野悠司  日刊工業新聞社
Pipe Drafting And Design 2nd ed.  R. A. Parisher, R.A.Rhea   Gulf Professional Publishing
JFE技報 No.17  2007年8月

 

引用図表
図3.2.1 シームレス管の製造工程    Pipe Drafting And Design
図3.2.2 電縫管の製造工程     Pipe Drafting And Design
図3.2.3 スパイラル鋼管の溶接前の形状   Pipe Drafting And Design
図3.2.4 それぞれの鋼管の出来上がりの状態    Pipe Drafting And Design
表3.2.5 鋼管の主要な用途とその製造方法   参考:JFE技報
表3.2.6 主な炭素鋼管、合金鋼管   参考:JFE技報
表3.2.7 各種鋼管の肉厚系列
表3.2.8 合金鋼管の種類と合金成分   参考:配管設計実用ノート
表3.2.9 水・蒸気系の配管材料選択例   配管設計実用ノート

 

ORG:2020/12/23