2.1.1 流れの支配則

2.1.1 流れの支配則(Flow governing laws)
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1. はじめに
非圧縮性流体の流れを支配する法則には、連続の式とベルヌーイの定理とがあります。
連続の式は、流れの質量保存則を示しており、ベルヌーイの定理は、流れのエネルギー保存則を示しています。
2. 連続の式
非圧縮性流体が流路を流れている場合を考えます。
流量が一定の場合、流路の何れの場所でも、体積流量が一定ですので、次式が成り立ちます。
\( A_{ 1 } v_{ 1 } = A_{ 2 } v_{ 2 } = Q \) あるいは \( Q = A v = const \)
ここで、
\( A \):流路の断面積(m2)
\( v \):流路の平均流速(m/s)
添字1,2:流路の任意の2点
3. ベルヌーイの定理
ベルヌーイの定理は、流体のエネルギー保存則になります。ニュートンのエネルギー保存則は、損失が無ければ、運動エネルギーと位置エネルギーとの和が一定であるというものですが、流体のエネルギー保存則の場合は、さらに圧力エネルギーを付加したものが一定であるというものです。
ベルヌーイの定理は本来、圧力損失も圧縮性も無い理想流体に適用されますが、圧力損失(損失水頭)を考慮することで、非圧縮性の実在流体に対してのベルヌーイの定理の式を次式で示します。
\( z + \displaystyle\frac{ p }{ \rho g } + \displaystyle\frac{ V^2 }{ 2 g } + h_{ L } = H_{ 0 } \)
ここで、
\( H_{ 0 } \) :全水頭 (m)
\( p \):圧力 (kg/m・s2 = N/m2)
\( \rho \):密度 (kg/m3)
\( V \):平均流速 (m/s)
\( g \):重力加速度 (m/s2)
\( z \):基準線からの高さ (m) =位置水頭 (m)
\( V^2 / 2 g \):速度水頭 (m)
\( p / \rho g \):圧力水頭 (m)
\( h_{ L } \):損失水頭 (m)
ベルヌーイの定理の式は、流れの1本の流線について適用できます。
位置エネルギーはもちろん、速度エネルギー、圧力エネルギー、損失エネルギーのすべてを高さで表します。これを水頭(またはヘッド)といいます。化学プラントのように流体を取扱う設備では、圧力より液柱の高さの方がイメージしやすいと考えます。
(管理人は、新卒で入社したターボポンプメーカ、その後転社した油圧機器メーカで大学卒業後、定年までポンプに関わりました。特にターボポンプの設計時は、水頭(ヘッド)の概念が普通でした。)
一流線上の任意の2点(添字1,2)について、ベルヌーイの定理の式を考えると、次式になります。ここで、\( h_{ L } \)は2点間の損失水頭を示します。
\( z_{ 1 } + \displaystyle\frac{ p_{ 1 } }{ \rho g } + \displaystyle\frac{ V_{ 1 }^2 }{ 2 g } = z_{ 2 } + \displaystyle\frac{ p_{ 2 } }{ \rho g } + \displaystyle\frac{ V_{ 2 }^2 }{ 2 g }+ h_{ L } \)
ベルヌーイの定理の式を図1により説明します。
図1ベルヌーイの定理の式と水力こう配線 出典:参考;「配管設計」実用ノート
1は水槽の液面位置での、全水頭すなわちエネルギー全てが位置水頭H0である状態です。
1から2の状態への推移は、全水頭H0の一部が水槽から管へ流れ出る際の縮流による損失水頭と、そして速度水頭とが発生します。
2から3の状態への推移には、圧力水頭の一部が、2~3間で生じた損失水頭が付加されて、圧力水頭が減少しています。
3から4の状態への推移は、管が下がった分位置水頭が圧力水頭に変換される一方、3~4間で曲り損失や管摩擦損失により、圧力水頭の一部が消費されます。
4から5の状態への推移は、2から3への推移と同様の変化が起こります。
5から6の状態への推移は、バルブポート部での絞りにより、流速と圧力損失が大幅に増加して、圧力水頭が切り崩されます。
6から7の状態への推移は、一旦バルブにより絞られた流れが、管路全体に広がることにより流速が元の状態に戻ります。これにより速度水頭の一部が圧力に戻り、圧力損失が若干回復します。
7から8の状態への推移は、レジューサにより流速の低下による速度水頭が減少し、その大部分は圧力水頭として回復し、損失水頭は若干増加します。
8から9の状態への推移は、下流にある水槽に入ることで、流速はゼロになりますが、これは最終的に熱損失に変化します。
流れの最下流の水槽の水面では、位置エネルギーのみがあるだけで、他の水頭は損失水頭として消失します。
4. 水力こう配線
流線上で、位置水頭と圧力水頭とを合わせたものを、水力こう配線といいます(動水こう配線とも言うそうです。恥ずかしながら管理人は知りませんでした。)。水力こう配線は、図1で液柱管の液面を結んだものです。この水力こう配線に、速度水頭を加えた線をエネルギーこう配線といいます。
参考文献
「配管設計」実用ノート 西野悠司 日刊工業新聞社 2017年
機械工学便覧 改訂第5版 8水力学および流体力学
引用図表
図1ベルヌーイの定理の式と水力こう配線 出典:参考;「配管設計」実用ノート
ORG:2024/10/16