2. 圧力の種類と定義

2. 圧力の種類と定義(Types and definitions of pressure)
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Contents
1. 圧力の種類
圧力計測において、絶対圧力、ゲージ圧力、差圧の3つの基準があります。それぞれの圧力の定義と用途について、記述します。
1.1 絶対圧力(Absolute pressure)
絶対圧力は、真空状態を基準として圧力をいいます。基準点は、完全真空(ゼロ圧)になります。従って測定対象の圧力は、どのような環境であっても、常に正の値としてあらわされます。
絶対圧力のSI単位は、Pa(パスカル:= N/m2 )になります。この他、非SI単位ですが慣用的に、bar(バール:1bar = 0.1MPa )が使われることもあります。
宇宙工学分野や真空技術分野では、絶対圧力の使用が重要です。例えば、人工衛星や真空チャンバーでの試験などでは、真空に対する圧力差を正確に測定する必要があります。
さらに、絶対圧力は、大気圧や真空の状態が関係するプロセスでの使用が一般的です。特に、化学プラントや製造業では、蒸気の圧力や真空度の管理に絶対圧力の測定が不可欠です。
また、気象分野では絶対圧力で圧力を表示します。海面での大気圧は、おおよそ1013 hPa(ヘクトパスカル)であり、これは慣用単位の1気圧に相当します。この1013hPaは絶対圧力になります。
1.2ゲージ圧力(Absolute pressure)
ゲージ圧力は、大気圧(一般的には、1013hPa)を基準とした圧力です。零点は大気圧で、大気圧より高い圧力を「正圧」、大気圧より低い圧力を「負圧」として表示されます。一般的な圧力計が示す圧力はゲージ圧力になります。
自動車のタイヤ圧や工業用のボイラーの圧力は、一般的にゲージ圧力で測定・示されます。これらは周囲の大気圧を基準としており、特に日常的な圧力管理や安全性管理に役立ちます。また、気密性の確認やパイプライン内の圧力測定もゲージ圧力で行われます。
工業関係でゲージ圧力の重要性は、作業者が直感的に圧力を判断できる点にあります。例えば、真空状態であればゲージ圧力が負の値を示し、高圧であれば正の値を示します。これにより、システムが正常に作動しているかどうかを、直ちに判断することができます。
1.3差圧(Differential pressure)
差圧は、異なる2点間の圧力差を示すものです。例えば、配管の入口と出口の圧力差や、フィルター前後での圧力差などがこれに該当します。差圧計は、これらの圧力差をリアルタイムで読み取ることができ、システムの異常やフィルターの詰まり、流量の変動などを監視するために使用されます。
工業プロセスにおいて差圧計は非常に重要です。例えば、化学プラントでは、プロセス中の流体の流れの状態、フィルターの状態、またオリフィスなどの差圧式流量計などで、差圧計を用いて監視することで、設備の運転状態を把握し、異常が発生した場合には迅速に対応できます。また、空調設備やクリーンルームでも、フィルターの差圧を管理することで、正常な空気流動を維持します。
差圧を測定することで、システム全体の効率や安全性を向上させることが可能です。例えば、フィルターが詰まると、差圧が大きくなり、その結果、ポンプやファンに負荷がかかります。このような異常を早期に検出することで、機器の長寿命化やエネルギー消費の低減が期待できます。
絶対圧力、ゲージ圧力、差圧の関係を、図1 に示します。
図 1 絶対圧力、ゲージ圧力、差圧の関係 参考:国立科学博物館 技術の系統化調査報告 第15集
2. 圧力単位と変換方法
圧力は、さまざまな単位で表されます。適用される産業分野や地域によって異なる単位が用いられます。圧力の理解を深めるためには、これらの単位を適正に変換できることが重要です。
2.1 圧力の単位
圧力の最も一般的な単位は「Pa(パスカル)」であり、国際単位系(SI)では組立単位になります。1パスカルは、1平方メートルあたり1ニュートンの力が作用する圧力を表します(1 Pa = 1 N/m2 )。いろいろな分野で、徐々にSI単位に置き換えられつつありますが、現在でも、いろいろな産業分野で、Pa(パスカル)以外にもさまざまな単位が使用されています。
・ bar(バール)(bar):
バールは1 bar = 1 × 105 Pa = 0.1 MPa と定義され、工業圧力の計測で広く用いられています。特にヨーロッパは、bar単位が一般的です。管理人は液体系機器のポンプを取扱っていました。油圧機器は、MPaを適用していましたが、ターボポンプの設計をしていたときには、barを用いていました。
・ atm(アトモスフィア):
アトモスフィアは、標準大気圧(1 atm = 101325 Pa)を基準とする単位です。大気圧と比較したい場合に使用されることが多いです。日本では、一般的にアトムと言っています。
・ Torr(トル):
トルは、1 atm = 760 Torrと定義されています。特に、真空計測に使用されます。真空技術においては、Torrの単位が広く用いられています。
・ kgf/cm2(キログラム毎平方センチメートル):
日本やアジア圏での工業用圧力計測には、今でも使われています。1 kgf/cm2 = 0.980665 MPaです。
2.2 圧力の変換方法
圧力の単位は異なる基準に基づいているため、適切な変換が必要です。以下に良く使われる圧力単位同士の変換係数表を示します。
表 2 各種圧力単位系の変換係数 出典:ORIGINAL
2.3 圧力の単位選択の重要性
適切な圧力単位を選択することは、作業効率や安全性の向上に直結します。例えば、非常に高い圧力を測定する際には、MPa(メガパスカル)やbar(バール)を用いることが一般的です。他方、真空領域ではTorr(トル)が良く用いられます。
それぞれの単位には、それぞれ特徴があり、使用する装置・機器や環境に応じて使い分けることが重要です。
また、圧力単位の理解は、国際的な取引や技術交流においても重要です。国や地域によって使用される単位が異なるため、単位の変換能力が求められます。特に、設備の設計や輸入品の仕様書では、異なる単位が混在することがあるため、正確な変換が必要です。
参考文献
Fundamentals of Industrial Instrumentation and Process Control William C. Dunn McGraw-Hill 2005年
機械工学便覧 第6版 日本機械学会
引用図表
図 1 絶対圧力、ゲージ圧力、差圧の関係 参考:国立科学博物館 技術の系統化調査報告 第15集
表 2 各種圧力単位系の変換係数 出典:ORIGINAL
ORG:2024/10/01