ベローズ型圧力計

ベローズ型圧力計(Bellows type pressure gauge)

 

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1. ベローズ型圧力計とは

ベローズ型圧力計は、「アネロイド形圧力計」の一種です。ジャバラ(蛇腹)状の形状をした弾性のある金属容器(ベローズ)の変形を利用して圧力を測定する機器です(図 1)。圧力変化に対してベローズが伸縮し、その変位を機械的なリンク機構や電気的なセンサを介して圧力値に変換します。
ベローズは、1930年代に航空機の速度計や高度計といった精密計器に利用され始めました。航空機の発展に伴い、ベローズの加工技術も向上し、小型軽量化が進みました。

ベローズ型圧力計は、ブルドン管圧力計と並んで、広く産業界で使用されている圧力計の一つです。特に、低圧力の測定や微小な圧力変化の検出に優れている ことから、様々な分野で活躍しています。

図1ベローズ型圧力計の構造  出典:Pressure measurement_CHL207.pdf

 

2. ベローズ型圧力計の構造と動作原理

2.1 ベローズ型圧力計の構造

ベローズ型圧力計は、主に以下の要素から構成されています。
 ・ ベローズ: ジャバラ(蛇腹)状の形状をした弾性のある薄い金属容器で、圧力を受ける最も重要な部分です。材質には、リン青銅、ステンレス鋼、ベリリウム銅などが用いられます。 ベローズは、軸方向に伸縮可能な圧力容器であり、圧力に比例してほぼ線形に変形するので。その伸縮量から圧力を測定します。
ただ、ベローズだけでは弾力が弱いので、内部にスプリングを入れることにより、圧力に対する線形性を向上させる場合もあります。
 ・ 受圧口: 測定対象の流体(液体や気体)の圧力をベローズに伝えるための入口です。
 ・ リンク機構: ベローズのわずかな伸縮を拡大し、指針に伝えるための機構です。一般的に、ベローズ単体では十分な変位量が得られないため、リンク機構を用いて変位を拡大します。 リンク機構は、調整子、セクタ、ピニオン歯車などから構成されます。
 ・ 指針: 目盛板の上を動き、圧力値を示します。
 ・ 目盛板: 圧力値が刻まれた板です。
 ・ ケース: 上記の要素を保護するための外装です。

 

2.2 ベローズ型圧力計の動作原理

ベローズ型圧力計の動作原理は以下の通りです。
(1) 測定対象の流体の圧力が、受圧口からベローズに伝えられます。
(2) 圧力に応じてベローズが軸方向に伸縮します。ベローズ内部の圧力が高くなると、ベローズは伸び、圧力が低くなると縮みます。
(3) ベローズの伸縮は、リンク機構によって拡大され、指針に伝えられます。
(4) 指針が圧力値に比例して動き、目盛板上の値を読み取ることで圧力が測定できます。

 

2.3 ベローズの種類

ベローズは、その製法により、「成形ベローズ」と「溶接ベローズ」に分類されます。
 ・ 成形ベローズ: 板材を絞ってパイプ状とし、油圧成形により製作されます。材質は、リン青銅、ステンレス鋼が一般的です。
 ・ 溶接ベローズ: あらかじめ同心円状に打ち抜いた板材を溶接することにより製作します。変位特性に優れるが、コストが高いため、成形ベローズほど一般的ではありません。

図2ベローズの種類  出炭:圧力計測の種類と特徴(1)  長野計器(株)取締役 長坂 宏 センサイトHP

 

2.4 電気式ベローズ型圧力計

電気式ベローズ型圧力計は、ベローズの動きを電気信号に変換するために、ひずみゲージや差動トランスなどのセンサが組み込まれています。電気式は、機械式に比べて以下の様な長所があります。
 ・ 高精度: 電気信号に変換することで、より高精度な圧力測定が可能になります。
 ・ 信号処理: 電気信号は、増幅やデジタル変換などの信号処理が容易であり、データロガーやコンピュータとの連携が容易になります。
 ・ 遠隔監視: 電気信号は、長距離伝送が可能であるため、離れた場所から圧力を監視することができます。化学プラントなどで、遠隔制御・監視に適しています。

 

3. ベローズ型圧力計の特徴:長所と短所

ベローズ型圧力計は以下のような特徴があります。
(1) 高感度: ベローズはブルドン管に比べて変位量が大きく、高感度な測定が可能です。特に、低圧力領域や微圧の測定に適しています。
(2) 広い測定範囲: ベローズの材質や形状を変えることで、広範囲な圧力測定に対応できます。
(3) 高耐久性: ベローズは金属製であるため、耐久性に優れており、長期間の使用が可能です。

以下により詳しく見ていきましょう。

 

3.1長所

 (1) 高感度: ベローズは、ブルドン管と比較して、微小な圧力変化に対して大きな変位を示すという特性があります。このため、ベローズ型圧力計は、特に低圧力領域や微圧の測定において高い感度を発揮します。ブルドン管圧力計では測定が難しい、繊細な圧力変化を捉えることができるため、より正確な測定が必要とされる領域で活躍します。
 (2) 構造の単純さ: ベローズ型圧力計は、構造が比較的単純ですので、小型化・軽量化が容易です。 これは、持ち運びのし易さや設置場所の制限がある場合に大きなメリットとなります。また、シンプルな構造は、製造コストの低減にもつながり、結果として、比較的手頃な価格で購入できるという利点も生まれます。
 (3) 優れた耐久性: ベローズは金属製であるため、高い耐久性を持ち、長期間の使用に耐えることができます。 これは、メンテナンスの頻度を減らし、長期的に見てコストを抑えることにつながります。また、過酷な環境下でも安定した測定が可能です。
 (4) 耐腐食性: ベローズ材料に、ステンレス鋼など比較的耐食性のある金属や、PTFE等の耐薬品性材料を用いられるので、腐食性流体に対して使用可能です。
 (5)高粘性流体に適用可能: 粘性の高い流体に対して、測定が可能です。

 

3.2短所

 (1) 温度の影響を受けやすい: ベローズは、温度変化によって膨張・収縮するため、温度変化が大きい環境下では、測定誤差が生じる可能性があります。 この問題を解決するために、温度補償機構を組み込んだベローズ型圧力計も存在しますが、構造が複雑化し、コストも高くなる傾向があります。
 (2) 振動の影響を受けやすい: ベローズは、振動によって共振しやすく、場合によってはベローズの変形が生じます。そのため、測定値が不安定になる可能性があります。 振動の影響を最小限に抑えるためには、振動吸収ダンパーを使用したり、設置場所を工夫したりする必要があります。
 (3) 測定圧力範囲の狭さ: ベローズ型圧力計は、ブルドン管圧力計と比較して、測定可能な圧力範囲が狭いデメリットがあります。 この理由は、ベローズの強度や変形量の限界によるものです。高範囲の圧力の測定には、ブルドン管圧力計やその他の圧力測定器が適しています。
 (4) 圧力変化に対する応答性が遅い: 圧力変化に対して応答性が比較的遅いので、急激な圧力変動がある場合の測定には適していません。
 (5) 高価格: ベローズの製造コストが、ブルドン管と比較して高価になる傾向があります。

 

3.3 まとめ

ベローズ型圧力計は、上記に示す長所・短所があります。そのため、ベローズ型圧力計を使用する際には、これらの長所・短所について理解して、測定対象や使用環境に最適な圧力計を選定することが重要です。

 

4. ベローズ型圧力計の用途例

ベローズ型圧力計は、その特徴である高感度、耐腐食性を必要とする、様々な産業分野で利用されています。
 ・ プロセス産業: 化学プラント、石油化学プラント、食品工場、医薬品工場など、様々な産業プロセスにおいて、圧力の監視や制御に不可欠な要素です。これらの産業では、正確な圧力管理が製品の品質、生産効率、そして安全性の確保に直結するため、ベローズ型圧力計の高感度な測定能力は非常に重要です。例えば、反応プロセスにおいて、わずかな圧力変化が生成物の品質に影響を与える場合、ベローズ型圧力計はその変化を敏感に検知し、適切な制御を行うことができます。
 ・ 空調設備: ビルや工場などのダクト方式の空調設備において、ダクト内の圧力測定に用いられます。 空調設備では、適切な空気の流れを作り出すために、ダクト内の圧力を一定に保つ必要があります。ベローズ型圧力計は、微細な圧力変化にも敏感に反応するため、安定した空調管理に貢献します。また、空調設備は一般的に稼働時間が長いため、ベローズ型圧力計の高い耐久性も大きなメリットとなります。
 ・ 医療機器: 人工呼吸器、麻酔器、輸液ポンプなど、医療機器においても、圧力の監視や制御は欠かせません。 これらの機器では、人体に直接影響を与える圧力を正確に制御する必要があります。ベローズ型圧力計は、高精度な測定が要求される医療現場においても、その性能を発揮します。
 ・ 航空宇宙: 航空機や宇宙船において、高度や気圧の測定は、安全な運航に不可欠です。 ベローズは、その小型軽量性から、航空機や宇宙船といった重量制限の厳しい環境での利用にも適しています。 ベローズ型圧力計は、高高度における低圧力の測定にも対応できるため、過酷な環境下でも正確な測定データを提供します。

 

5. ベローズ型圧力計の選定ポイント

ベローズ型圧力計を選定する際には、測定対象、用途、環境などを考慮し、最適なものを選ぶことが重要です。以下に示す内容は、何れの形式の圧力計にいえることですが、一般的には以下のような点を考慮する必要があります。。
 ・ 測定流体: ベローズ型圧力計は、測定する流体の性質によって、材質や構造が異なります。腐食性のある流体を測定する場合には、耐食性の高い材料(ステンレス鋼など)を選ぶ必要があります。また、粘度の高い流体の場合には、圧力伝達機構の動作不良を防ぐために、適切な構造のものを選ぶ必要があります。
 ・ 測定圧力範囲: ベローズ型圧力計は、測定可能な圧力範囲が決まっています。測定する圧力範囲に適したものを選ぶ必要があります。一般的に、ベローズ型圧力計は、低圧力の測定に適しています。
 ・ 精度: ベローズ型圧力計の精度は、用途によって求められるレベルが異なります。高精度な測定が求められる場合には、高精度タイプのものを選ぶ必要があります。
 ・ 温度: ベローズ型圧力計は、温度変化によって測定誤差が生じる可能性があります。使用環境の温度変化が大きい場合には、温度補償機能付きのものや、温度の影響を受けにくい材料製のものを選ぶ必要があります。
 ・ 振動: ベローズ型圧力計は、振動によって測定値が不安定になる可能性があります。振動の大きい環境で使用する場合には、振動対策が施されたもの、例えば、耐振性を高めた構造のものや、グリセリンなどの粘性流体を封入して振動を抑制するものなどを選ぶ必要があります。
 ・ 接続方法: ベローズ型圧力計は、配管への接続方法がいくつかあります。ねじ込み式、フランジ式、溶接式など、設置条件に適した接続方法のものを選ぶ必要があります。
 ・ 表示方法: ベローズ型圧力計は、圧力の表示方法については、アナログ式、デジタル式などがあり、用途に合わせて見やすい表示方法のものを選ぶ必要があります。
 ・ 出力方法: 指針による指示が必要か、電気信号での出力が必要かによって選定する必要があります。
 ・ 価格: ベローズ型圧力計は、機能、性能や材質によって価格が大きく異なります。必要な機能を満たし、予算に合ったものを選ぶ必要があります。
 ・ その他: ベローズ型圧力計を選定する際には、上記の他に、メーカーの信頼性、アフターサービスなども考慮する必要があります。

ベローズ型圧力計は、様々なメーカーから販売されています。 これらの選定ポイントを参考に、用途に最適なベローズ型圧力計を選定することが重要です。

 

6. まとめ

6.1ベローズ型圧力計の特徴

 ・ 高感度: ベローズは、薄い金属板を成形や溶接により、ジャバラ(蛇腹)状に成形した弾性素子です。このジャバラ(蛇腹)構造により、微小な圧力変化に敏感に反応して軸方向に大きく伸縮します。ベローズ単体では大きな変位を得ることが難しい場合もありますが、他のバネと組み合わせることで、より広範囲の圧力計測に対応できます。
 ・ 低圧力計測: ベローズ型圧力計は、一般に低圧力の測定に適しており、5kPa〜2MPa程度の範囲で使用されます。
 ・ 耐腐食性: ベローズの材質には、ステンレス鋼などの耐腐食性に優れた金属材料やPTFEなどが用いられることが多いため、腐食性のある流体の圧力計測にも対応できます。

 

6.2 ベローズ型圧力計の用途

ベローズ型圧力計は、その特徴を生かして、様々な産業分野で利用されています。
 ・ プロセス産業: 化学プラントや食品工場など、圧力管理が製品の品質や安全に直結するプロセス産業において、正確な圧力監視や制御に貢献します。
 ・ 空調設備: ビルや工場のダクト空調設備では、ダクト内の圧力測定に用いられます。安定した空気の流れを作り出し、快適な環境を維持するために役立ちます。
 ・ 医療機器: 人工呼吸器や麻酔装置など、人体に影響を与える圧力を精密に制御する必要がある医療機器において、その高精度な測定が必要な場合に性能を発揮します。
 ・ 航空宇宙: 航空機や宇宙船では、高度や気圧の測定に利用されます。小型軽量という特性が、重量制限の厳しい航空宇宙分野においては大きなメリットとなります。

 

6.3 ベローズ型圧力計の選定

ベローズ型圧力計を選定する際には、測定対象となる流体の性質(腐食性、粘度など)、測定圧力範囲、必要な精度、使用環境の温度や振動などを考慮する必要があります。実際に詳細な選定を行う際には、専門的知識が必要となりますので、メーカーのカタログや技術資料を参照するか、エキスパートに相談することをお勧めします。

 

6.4 ベローズ型圧力計の進化と可能性

ベローズ型圧力計は、今後も更なる高精度化、高機能化、そして小型化が進むと考えられます。また、近年発展が目覚ましいIoT技術やAI技術との融合により、より高度な圧力管理システムへの応用も期待されます。

 

参考文献
圧力計測の種類と特徴(1)  長野計器(株)取締役 長坂 宏 センサイトHP https://sensait.jp/14779/
Pressure measurement_CHL207.pdf  DAV University, India  Text
Measurement & Instrumentation Principles Third edition Alan S Morris Butterworth-Heinemann 2001年
DOE FUNDAMENTALS HANDBOOK INSTRUMENTATION AND CONTROL Volume 1 of 2 U,S. Department of Energy
FUNDAMENTALS OF INDUSTRIAL INSTRUMENTATIONAND PROCESS CONTROL William C. Dunn  McGraw-Hill 2005年

引用図表
図1ベローズ型圧力計の構造  出典:Pressure measurement_CHL207.pdf
図2ベローズの種類  出炭:圧力計測の種類と特徴(1)  長野計器(株)取締役 長坂 宏 センサイトHP

ORG:2024/10/08