マノメータ

マノメータ(manometer)
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Contents
1. マノメータの基本原理と種類
マノメータは、液体の高さを利用して圧力を測定する最も基本的な圧力計の一つです。日本語では液柱型圧力計といいます。
その原理は、液柱の静水圧が圧力に比例するという物理現象に基づいています。マノメータは、構造が単純で取り扱いが容易なため、低圧の測定や基準器として広く利用されています。
マノメータの種類は、測定対象や用途に応じて多岐にわたりますが、代表的なものとして以下の種類があります。図1に示します。
・ U字管マノメータ:
最も基本的な構造で、U字型のガラス管に液体を入れ、両端の圧力差を液柱の高さの差として読み取ります。
・ 傾斜管マノメータ:
U字管の一方の脚を傾斜させることで、液柱の移動距離を拡大し、より高精度な測定を可能にします。
・ 単脚マノメータ:
液溜めと測定管から構成され、液溜めの液面変動が小さいため、長期間の安定した測定に適しています。ゲッチンゲン型マノメータともいいます。
・ 差圧マノメータ:
二つの異なる場所の圧力差を測定するために使用され、配管内の流量測定などに利用されます。
これらのマノメータは、それぞれ測定範囲、精度、取り扱いやすさが異なるため、用途に応じて適切な機種を選択する必要があります。例えば、高精度な測定が必要な場合には傾斜管マノメータ、現場での簡便な測定にはU字管マノメータが適しています。
図1マノメータの種類 出典:技術の系統化調査報告 圧力計技術の発展の系統化調査 他
2. 液柱マノメータの詳細:構造、作動原理、特徴
液柱マノメータは、液体の静水圧を利用して圧力を測定する圧力計であり、その構造、作動原理、特徴を理解することで、より効果的な利用が可能になります。
2.1 構造
液柱マノメータの基本的な構造は、U字管、傾斜管、単脚管などがあり、それぞれに特徴があります。
・ U字管マノメータ:
透明なU字型のガラス管に水や水銀などの液体を封入し、両端に異なる圧力を加えることで液面に差が生じ、その高さを測定します。
・ 傾斜管マノメータ:
U字管の一方の脚を傾斜させることで、液面の移動距離を拡大し、微圧測定に適した構造となっています。
・ 単脚マノメータ:
液溜めと測定管から構成され、液溜めの断面積が大きいため、液面変動が小さく、安定した測定が可能です。
2.2 作動原理
液柱マノメータの作動原理は、静水圧の原理に基づいています。圧力(\( P \))は、液体の密度(\( \rho \))、重力加速度(\( g \))、液柱の高さ(\( h \))を用いて以下の式で表されます(図2)。
\( P = \rho \cdot g \cdot h \)
この式から、液柱の高さ( \( h \) )を測定することで、圧力(\( P \))を算出できます。測定精度は、液体の密度(\( \rho \) )の正確さと液柱の高さ(\( h \))の読み取り精度に依存します。
図2マノメータの作動原理 出典:技術の系統化調査報告 圧力計技術の発展の系統化調査
2.3 特徴
液柱マノメータの主な特徴は以下の通りです。
・ 構造が単純で、取り扱いが容易である。
・ 原理的に高精度な測定が可能である。
・ 低圧測定に適している。
・ 基準器として使用できる。
・ 可動部分が少ないため、耐久性が高い。
・ 液体の種類によって測定範囲が異なる。
・ 液体の温度によって密度が変化するため、温度補正が必要な場合がある。
これらの特徴を理解し、用途に応じて適切なマノメータを選択することが重要です。例えば、微圧測定には傾斜管マノメータ、基準器として使用する場合にはU字管マノメータが適しています。
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3. マノメータの精度と校正
3.1 マノメータの精度の要因
マノメータは、適切な校正を行うことで、高精度な圧力測定を実現できます。マノメータの精度は、液体の密度、重力加速度、液柱の高さの測定精度に依存します。
・ 液体の密度:
使用する液体の密度は、温度によって変化するため、正確な温度管理が必要です。水銀は密度が安定しているため、高精度な測定に適していますが、毒性があるため取り扱いには注意が必要です。
・ 重力加速度:
重力加速度は、場所によってわずかに異なるため、正確な測定には場所の重力加速度を考慮する必要があります。
・ 液柱の高さ:
液柱の高さは、目視で読み取るため、視差による誤差が生じやすいです。正確な読み取りには、適切な目盛と視線の調整が必要です。
3.2マノメータの校正
マノメータの校正は、基準となる圧力計と比較することで行います。基準となる圧力計としては、重錘形圧力計や液柱形圧力計が用いられます。
校正手順は以下の通りです。
1. マノメータと基準圧力計を接続し、同じ圧力を加えます。
2. マノメータの指示値と基準圧力計の指示値を比較します。
3. 指示値にずれがある場合は、目盛の調整や校正曲線を作成し、補正を行います。
定期的な校正を行うことで、マノメータの精度を維持し、信頼性の高い測定を実現できます。
4. マノメータ使用上の注意点とトラブルシューティング
マノメータを安全かつ正確に使用するためには、注意点を理解し、トラブル発生時には適切な対応が必要です。
4.1 使用上の注意点
・ 液体の選択:
測定する圧力範囲に適した液体を選択します。低圧測定には水、高圧測定には水銀が用いられます。
・ 液面の清浄:
液面にゴミや油が付着すると、表面張力が変化し、測定誤差が生じます。定期的な清掃が必要です。
・ 気泡の混入:
液体中に気泡が混入すると、測定値が不安定になります。気泡が混入した場合は、慎重に除去します。
・設置場所:
振動や温度変化の少ない場所に設置します。水平な場所に設置し、傾きがないように調整します。
・ 液体の補充:
液体が蒸発したり、漏れたりした場合は、適切な液体を補充します。液量が不足すると、測定範囲が狭くなります。
4.2 トラブルシューティング
・ 測定値が不安定:
気泡の混入、液面の汚れ、振動などが原因として考えられます。原因を特定し、適切な対策を講じます。
・ 測定値がずれる:
液体の密度変化、目盛のずれ、基準圧力計の誤差などが原因として考えられます。校正を行い、補正を行います。
・ 液体が漏れる:
接続部分の緩み、ガラス管の破損などが原因として考えられます。漏れている箇所を特定し、修理または交換を行います。
これらの注意点を守り、トラブル発生時には適切な対応を行うことで、マノメータを長期間、安全かつ正確に使用できます。
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5. 産業応用事例:マノメータが活用される場面
マノメータは、その単純な構造と高精度な測定能力から、様々な産業分野で幅広く活用されています。
(1)空調設備:
差圧マノメータは、エアフィルタの目詰まりを監視するために使用されます。フィルタの前後の圧力差を測定し、圧力差が一定値を超えると、フィルタの交換時期であることを警告します。
(2)医療機器:
液柱マノメータは、血圧計や呼吸器などの医療機器に使用されます。患者の状態を正確に把握するために、高精度な圧力測定が求められます。
(3)気象観測:
水銀気圧計は、大気圧を測定するために使用されます。気圧の変動は、天気予報に不可欠な情報であり、正確な測定が求められます。
(4)プラント:
U字管マノメータは、タンクや配管内の液面や圧力を監視するために使用されます。プロセスの安定した運転を維持するために、リアルタイムな情報が必要です。
(5)研究開発:
傾斜管マノメータは、実験装置の微圧を測定するために使用されます。高精度な測定が可能なため、実験の信頼性を向上させることができます。
これらの応用事例は、マノメータが様々な分野で重要な役割を果たしていることを示しています。今後も、技術革新とともに、マノメータの新たな応用が期待されます。
6. おまけ
マノメータの歴史と発展過程は、圧力計測技術の進化と密接に関連しています。以下にその詳細を説明します。
6.1 マノメータの起源
マノメータの起源は、17世紀初頭にイタリア人物理学者のトリチェリ(Evangelista Torricelli)が発明した「水銀気圧計」にさかのぼります。
トリチェリは、ガリレオ・ガリレイの観察結果「ポンプは吸い込み高さが9m以上になると吸い上げられない」に興味を持ち、水の13.6倍の比重である水銀を用いたガラス管マノメータを考案しました。
トリチェリの実験により、大気圧が水銀柱760mm(水柱10.33m)であることが発見されました。この発見は、現代のマノメータの基礎となる重要な成果でした。
その後、17世紀にはロバート・ボイル(Sir Robert Boyle)が大気圧の実験を行い、マノメータの原理をさらに発展させました。ボイルは4階建てのレンガ造りの建物の外側に巨大な水の管を固定し、真空ポンプを使って水の上昇を観察しました。
6.2 産業革命期の貢献
18世紀から19世紀にかけて、マノメータは産業革命において重要な役割を果たしました。特に、ジェームス・ワットの蒸気機関の開発・改良に水銀気圧計が使用されたことは、近代工業化の始まりを象徴する出来事でした。
6.3 19世紀末の技術革新
19世紀末には、ハーシェルがヴェンチュリーメータを開発する際に、10メートル以上の水柱マノメータを使用しました。これは、より高い測定感度を得るための工夫でした。
6.4 20世紀以降の発展
20世紀に入ると、マノメータの技術はさらに進化し、1932年には傾斜U字管型のマノメータが開発されました。また、1943年には川西航空機設計課の清水三郎技師を中心とした技術陣が、自動空戦フラップ用のマノメータ類似の装置を開発しています。
6.5 デジタル化とネットワーク化
1970年代以降、計測技術のデジタル化が進み、マノメータもこの流れの影響を受けました2。現代では、デジタルによるネットワーク化が主流となっていますが、同時に高度なデジタル技術に対応したより高度なアナログ技術の必要性も高まっています。
6.6 現代のマノメータ
現在、マノメータは依然として重要な計測器として使用されています。特に、高精度な測定が必要な実験室や産業現場で活用されています。また、デジタルマノメータの開発により、より正確で使いやすい機器が登場しています。
マノメータの歴史は、科学技術の進歩と産業の発展を反映しており、今後も新たな技術革新によってさらなる発展が期待されます。
7. 追加のおまけ
昔話です。
管理人は、修士を卒業して最初に勤めた会社で、ターボポンプの設計を業務としておりました。特に、転職する前、5年ほどはアクリル酸製造の新しい手法が、取引先の顧客で本格的に立上りはじめ、管理人がその担当をすることになりました。
その企業様は、日本の化学メーカとしては少し毛色が異なり、その製造法が本格的に稼働するまでは、企業規模もそれほどでもなかった可能性もありますが、自主的な先進的な独自技術を尊ばれる企業だったと思います。
管理人が所属していた企業は、石油精製、石油化学関係では小規模ながら、業界ではそれなりに名前は売れていましたが、なかなかオンサイトに使って頂くことは少なかったと思います。
営業の努力もあったかと思いますが、新しい製造方法で使われるポンプを受注することができました。管理人もほぼプロトタイププラント対応品から設計させて頂き、退社するまでにおおよそ30プラント分の設計をさせて頂きました。
対象とするポンプがどんどんスケールアップしていくのに、深い感動とともに大きなモチベーションも頂きました。
それはさておき、対象とするポンプは軸流ポンプで、ヘッドはほぼ1ケタ台ですので、マノメータの使用はいわば必然的でした。
最初は、極低圧のブルドン管圧力計を用いていましたが、さすがにそれはダメでしょうと、倉庫の隅からホコリまみれのU字管と、水銀を探し出しました。なぜ、会社がこれを持っていたのか誰も知る人はいませんでしたが、結構早い時期に切換えた記憶があります。
マノメータを用いる測定は、特に低圧では正確で読取り誤差もほとんどない優れものだと今でも思っています。
ただ、ごまかしは出来ませんので、管理人の設計レベルも上がりました。
という昔話でした。
どうでも良い、年寄り臭い話ですみません。
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参考文献
国立科学博物館 技術の系統化調査報告 圧力計技術の発展の系統化調査 (独法)国立科学博物館 2010年
Measurement & Instrumentation Principles 3rd ed. Alan S Morris
Fundamentals of Industrial Instrumentation and Process Control William C. Dunn
Measurement Instrumentation and Sensors Handbook CRC Press LLC
Lessons In Industrial Instrumentation Tony R. Kuphaldt Version 1.0 – Released September 28, 2009
Measurement and Control Basics, 3rd Edition Thomas A. Hughes ISA Press
引用図表
図1マノメータの種類 出典:技術の系統化調査報告 圧力計技術の発展の系統化調査 他
図2マノメータの作動原理 出典:技術の系統化調査報告 圧力計技術の発展の系統化調査
ORG:2025/03/04