受注生産と見込み生産

受注生産と見込み生産
（Make-to-order and make-to-stock）

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1. 受注生産（MTO：Make to Order）とは

受注生産とは、顧客から注文を受けてから製品を生産する方式です。この方式では、製品の設計や仕様が注文ごとに異なることが多く、顧客の要求に応じた柔軟な対応が求められます。特にカスタムメイド製品や特注部品を扱う製造業に適した生産方式です。

受注生産の特徴：

受注生産の特徴として、以下のような点が挙げられます。
　・ 柔軟な生産対応：顧客の要求に応じた製品を生産するため、仕様の変更や特注対応が可能。
　・ 低在庫運用：在庫を持たず、受注後に生産を行うため、在庫管理コストが削減できる。
　・ 長いリードタイム：注文後に生産が開始されるため、納品までの時間が長くなる傾向がある。
　・ 小ロット生産：大量生産が難しく、コストが上昇しやすい。

受注生産のメリット：

　・ 顧客ニーズに完全対応可能：既存製品の仕様変更や、個別仕様の特注製品の提供に柔軟に対応できる。
　・ 高付加価値製品の提供：特注品を製造することで、高付加価値の製品を提供できる。
　・ 生産計画の最適化：注文内容が確定した後に生産を行うため、無駄な生産を避けられる。
　・ 在庫リスクの低減：生産は受注後に開始されるため、余剰在庫を抱えるリスクが少なく、保管コストの削減につながる。

受注生産のデメリット：

　・ 生産リードタイムが長い：注文後に材料調達・製造を行うため、納期が長くなる傾向がある。
　・ 生産コストが高くなる場合がある：小ロット生産が多くなるため、大量生産と比較してコストが高くなりやすい。
　・ 生産負荷の変動が大きい：注文の時期によって生産負荷が変動し、リソースの最適化が難しく、効率的な運用が難しい。

2. 見込み生産（MTS：Make to Stock）とは

見込み生産とは、市場の需要を予測し、あらかじめ製品を生産して在庫として保管し、注文が入った際に即座に出荷できる生産方式です。標準化された製品を大量生産する企業に向いており、消費財や汎用部品などに広く採用されています。

見込み生産の特徴：

見込み生産には以下のような特徴があります。
　・ 大量生産が可能：標準化された製品を一括で大量生産することにより、スケールメリットを活かせる。
　・ 即時出荷が可能：すでに在庫を保有しているため、顧客の注文に迅速に対応できる。
　・ 在庫管理が重要：需要予測の精度が低いと、過剰在庫や欠品のリスクが高まる。

見込み生産のメリット：

　・ 短納期対応：在庫を持っているため、注文が入ると迅速に出荷対応が可能である。
　・ 生産の安定化・生産効率向上：一定の生産量を確保したり、同じ製品を大量に生産するため、設備や人員の稼働率を安定させて、生産効率を向上させる。
　・ スケールメリットの活用：大量生産によってコストの削減が可能である。

見込み生産のデメリット：

　・ 在庫リスク：市場の需要を正確に予測しないと、余剰在庫や欠品発生のリスクが高まる。
　・ 市場変化への対応力の低下：標準化された製品を生産するため、市場のニーズが急激に変化すると、余剰在庫が発生する。
　・ 倉庫・保管コストの増加：在庫を持つ必要があるため、倉庫管理や管理コストが増加する。

3. 受注生産と見込み生産の使い分け

製品特性に基づく選択：

受注生産と見込み生産のどちらを採用するかは、製品の特性や市場環境によって異なります。
　・ 受注生産が適している製品：カスタム製品、多品種少量製品、高付加価値製品。
　・ 見込み生産が適している製品：標準化製品、大量生産品、低価格製品。

生産コストと納期のバランス：

　・コスト優先：大量生産によるコスト削減を重視する場合は見込み生産。
　・ 納期優先：短納期での納品が求められる場合は見込み生産。
　・ 個別対応が必要な製品：顧客要望に応じた製品を提供する場合は受注生産。

4. ハイブリッド方式（BTO：Build to Order）

受注生産と見込み生産の特性を組み合わせた方式として、BTO（Build to Order）があります。

BTOの特徴

　・標準部品は見込み生産し、最終組立は受注後に実施する方式。
　・柔軟な対応が可能でありながら、在庫リスクを抑えることができる。
　・生産計画の最適化が求められる。

5. 受注生産・見込み生産の導入事例

受注生産の事例：

　・ 精密機械・特注部品メーカ：航空機部品や特殊な金属加工品は、顧客ごとの仕様が異なるため、受注生産が一般的。
　・ 産業機械メーカ：工場設備や生産ライン向けの機械は、顧客ごとに仕様が異なるため、受注生産が適用される。

見込み生産の事例：

　・ 家電製品メーカ：標準的な冷蔵庫や洗濯機などの製品は、大量生産して在庫として確保し、需要に応じて出荷する。

6. 中小企業における受注生産・見込み生産の選択

中小企業の課題：

中小企業は大企業に比べて生産リソースが限られているため、受注生産と見込み生産のどちらを選択するかは慎重に判断する必要があります。
　・ 資金繰り：見込み生産を行う場合、大量の在庫を抱えるリスクがあるため、適切な需要予測と資金管理が必要。
　・ 生産能力の最適化：受注生産では、リソースの最適な配分が求められる。
　・ 顧客ニーズへの対応：市場の変化を敏感に察知し、最適な生産方式を選択するためにフレキシブルな対応が求められる。

中小企業向けの戦略：

　・ ニッチ市場を狙う：大手企業が参入しづらい特注品市場に特化し、受注生産で競争力を高める。
　・ 生産管理システムの導入： ERPやMRPを活用し、受注・生産・在庫管理を効率化する。
　・ サプライチェーンの最適化：外注先との連携を強化し、柔軟な生産対応を実現する。

7. まとめ

受注生産と見込み生産は、それぞれにメリット・デメリットがあり、企業の業態や市場環境に応じて適切に選択することが重要です。特に中小企業では、リソースの最適化と市場のニーズを踏まえた柔軟な生産方式の選択が求められます。最適な生産方式を選択し、競争力を強化することが、中小企業の成長につながる鍵となります。

ORG:2025/02/03