トヨタの組織文化について

◆トヨタの組織文化について(About Toyota’s organizational culture)

 

本コンテンツでは、トヨタ生産方式(=TPS)の背景となる、トヨタの組織文化について見ていきましょう。

 

1.トヨタの組織文化について

組織文化とは、「組織全員が“当たり前”と考えているものの考え方や見方及び行動の仕方」を言います(名城大学;伊藤健次先生論文より)。

・トヨタの場合、外部に公表されたものは4つあります(名城大学;伊藤健次先生論文より)。
  → 豊田綱領(1935年制定:豊田佐吉の死後,遺訓としてまとめられたもの)
  → トヨタ基本理念(1992 年制定,1997年改訂) 
  → トヨタウェイ2001(2001年4月制定)
  → トヨタ生産方式(正式に文書化されたものはない): トヨタマンの行動規範
     トヨタ生産方式の2本柱は、「ジャスト・イン・タイム」と(にんべんの付いた)「自働化」です。
     これらをより具体的に実行するための行動規範には、以下に示すものがあります(すべては網羅していません)。
     ・見える化
     ・ムダとり
     ・後工程はお客様
     ・品質は工程でつくり込む
     ・平準化
     ・流れ生産,1個流し
     ・かんばん
     ・5回のなぜ
     ・シングル段取り
     ・カイゼン
     ・少人化
     ・標準作業
     ・5S

 

2.トヨタ綱領

豊田綱領は、トヨタ文化の原点ともいうべきものです。豊田佐吉の考え方を、豊田利三郎、豊田喜一郎が中心となって整理し、豊田佐吉の5回目の命日にあたる1935年(昭和10年)10月30日に発表されました。トヨタグループの各社に受け継がれ、トヨタの全従業員の行動指針としての役割を果たしています。

豊田綱領は、次の5つの条文よりなります。

一、上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし
    会社の目的は社会貢献であり,全員が力を合わせて,その実現に努めること。

一、研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし
    研究と創造に力を注ぎ,常に先頭を走ること。

一、華美を戒め質実剛健たるべし
    外見にとらわれることなく,中身が重要である。

一、温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし
    家族に対するような人間的な温かさを大切にすること。

一、神仏を尊崇し、報恩感謝の生活を為すべし
    神仏を敬い,感謝して,その恩に報いること。

 

豊田綱領に対するオフィシャルな英訳もあります。

The Principles of Toyoda.
・ Always be faithful to your duties, thereby contributing to the Company and to the overall good.
・ Always be studious and creative, striving to stay ahead of the times.
・ Always be practical and avoid frivolousness.
・ Always strive to build a homelike atmosphere at work that is warm and friendly.
・ Always have respect for God, and remember to be grateful at all times.

 

3.トヨタ基本理念

トヨタ基本理念は、豊田綱領を時代に即した形で表現するために、21世紀を目前にした1992年1月に策定され、更にトヨタのグローバル化や、社会的役割・責任の拡大を受けて、1997年4月に改訂されました。

トヨタの企業行動指針として、

 1.内外の法およびその精神を遵守し,オープンでフェアな企業活動を通じて,国際社会から信頼される企業市民“Corporate Citizen”をめざす。

 2.各国,各地域の文化,習慣を尊重し,地域に根ざした企業活動を通じて,経済・社会の発展に貢献する。

 3.クリーンで安全な商品の提供を使命とし,あらゆる企業活動を通じて,住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む。

 4.様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め,世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する。

 5.労使相互信頼・責任を基本に,個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる。

 6.グローバルで革新的な経営により,社会との調和ある成長をめざす。

 7.開かれた取引関係を基本に,互いに研究と創造に努め,長期安定的な成長と共存共栄を実現する。

 

4.トヨタウェイ2001

トヨタウェイ2001は2001年4月に制定されました。トヨタの海外進出の過程で、日本人社員が”当たり前”とする基本的な考え方が、主体となる現地社員になかなか理解してもらえていないことに気付いて、それを理解してもらうために明文化したものをです。

2001とあるように、時代に応じて変更する意図があります。実際、2020年に「トヨタウェイ2020」が制定されています。

「トヨタウェイ2020」の情報については、管理人は未だ断片的にしか理解できていませんので、ここでは、「トヨタウェイ2001」について記述していこうと思います。「トヨタウェイ2020」については、あらためてまとめたいと考えます。

「トヨタウェイ2001」はトヨタの組織文化を端的に示しています。全従業員の「行動規範」に結びつくもの担っています。
「トヨタウェイ2001」の日本での使い方は、小グループでの読み聞かせ、討論を通して、「形式知」から「暗黙知」のレベルまで落とし込みます。
「トヨタウェイ2001」は、”知恵と改善”、”人間的尊重”の2つのくくりの中に5項目が決められています。5項目は、それぞれ補足見出し、トヨタマン語録見出しがつけられています。トヨタマン語録見出しには、トヨタの目指す方向が示されています(非公開)。

1.知恵と改善(continuous improvement)

(1)Challenge
   「モノづくり」を核とした付加価値の創造挑戦のスピリット:(夢への情熱,進取の気風)、(尊厳性,独立自尊,自負心)、(競争の受容)
   長期志向:(先見性,長期的予見)、(現実を直視した長期計画)
   熟慮と決断:(実証重視,必要性の納得)、(リスクへの覚悟)  

(2)Kaizen
   改善,革新の追及:(絶え間ない改善)、(創意くふう,ベンチマーキング)、(ブレークスルーの追及,タブーの排除)
   リーンなシステムの構築:(原価低減による利益追求)、(ムダ,ムラ,ムリの排除)、(後工程尊重,ジャストインタイム)、(問題の顕在化,自働化)
   組織的学習の徹底:(状況の共有化)、(失敗からの学習)、(成功の標準化,横展)

(3)GenchiGenbutu
   現地現物主義:(課題把握と真因追及)、(事実の徹底確認)、(早期検討)
   効果的合意形成:(コンセンサス重視)
   実践主義,達成指向:(愚直,空理空論の排除)、(粘り強さ,飽くなき問題解決)

 

2.人間性尊重(respect for people)

(4)Respect
   ステークホルダーの尊重:
   会社と社員の「相互信頼」と「相互責任」:
   誠実なコミュニケーション:(オープン,異質性の受容)、(フェア,聞く耳をもつ文化)、(自己表現,自信,イニシアチブ)、(言行一致,有言実行)

(5)Teamwork
   人材育成の重視:(部下育成)、(リーダーシップ)、(人の能力への信頼と,権限委譲)
   個人の人間性尊重と,チームの総合力発揮:(個人の人間性尊重)、(チームワーク,相互貢献)

図1 トヨタウェイ2001

5.トヨタ生産方式

トヨタ生産方式の2本柱である、「ジャスト・イン・タイム」と(にんべんの付いた)「自働化」とを、具体的に実行するためのトヨタマンの行動規範になる考え方です。

  1)見える化(目で見る管理)(→問題,課題の顕在化と意識化)
  2)「在庫は諸悪の根源である」
  3)ムダ取り:7つのムダ(作りすぎ,手待ち,運搬,加工,在庫,動作,不良),“3ム”または“ダラリの帯”(ムダ・ムラ・ムリ)
  4)後工程はお客様:後工程引き取り,顧客満足度,高いQCD水準への向上
  5)品質は工程でつくり込む(QA,不良分析/ パレート図,不良要因図/ 魚の骨図)
  6)平準化
  7)流れ生産,1個流し,「かんばん」
  8)標準化,標準作業,表(おもて)にする,標準の見直し,文書化
  9)内部管理(特に原価低減活動)
  10)「なぜ? なぜ? を5回繰り返す」
  11)リードタイム短縮(シングル段取り)
  12)(P-D-C-A)の管理サイクルを回す
  13)愚直さ,謙譲,感謝,努力
  14)カイゼン(革新):原理的には,改革・革新活動への展開(“4つの革新活動”),
            (“4つ”:現場→設備→製品→事業へと順を追って遡る考え方と活動)
  15)その他:5 S,少人化,真の能率,各種の管理指標,横展開など        

 

 

参考文献
トヨタの組織文化と豊田章夫社長   伊藤賢次  名城論叢 Vol.13 No.1 2012年7月
 

 

引用図表
図1 トヨタウェイ2001  不明

 

MOD: 2021/07/11