2.28 アルミニウム合金

2.28 アルミニウム合金(Aiminum alloy)
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本コンテンツでは、アルミニウム合金の性状について記述していきます。
Contents
1. アルミニウム合金の多様性
純アルミニウムは、軟らかいが比重が小さいという特徴があります。ただ、機械的特使については構造用材料として適用するには、少し能力的に不足しています。強度などの機械的特性を改善するために、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)やニッケル(Ni)などを添加して、アルミニウム合金とすることで、軽量性、耐食性、加工性を向上させることができ、自動車、航空機、電子機器など、幅広い分野で活用されています。その特性は、合金成分の組み合わせや製造方法によって大きく変化します。
本コンテンツでは、アルミニウム合金の製造方法の中でも、特に重要な展伸法と鋳造法について、その特徴や用途、について記述します。
2. 展伸法によるアルミニウム合金
2.1展伸法とは
展伸法によるアルミニウム合金は、主に圧延、押出、引抜などの加工方法を用いて製造されます。展伸法では、アルミニウム合金を高温で加熱し、圧力をかけて所望の形状に成形します。展伸法によるアルミニウム合金は、軽量でありながら高い強度を持つため、航空機、自動車、建築材料など、さまざまな分野で広く使用されています。
アルミニウム合金の場合、溶融状態ではなく、常温もしくは固体状態での加工になります。基本は冷間加工ですが、。場合により加熱しますが、通常は400℃以下に抑えます。
(1)圧延
圧延は、アルミニウム合金をロール間に通して薄く引き延ばす方法です。この方法により、薄い板材や箔が製造されます。圧延によって得られる製品は、均一な厚さと高い表面品質を持つため、包装材料や電子機器の部品などに利用されます。
(2)押出し
押出しは、加熱したアルミニウム合金をダイと呼ばれる金型に押し出して成形する方法です。この方法により、複雑な断面形状を持つ製品が製造されます。押出しによって得られる製品は、建築用の窓枠やドアフレーム、自動車の部品などに使用されます。
(3)引抜き
引抜きは、アルミニウム合金をダイに通して引き伸ばす方法です。この方法により、細長い棒や線材が製造されます。引抜きによって得られる製品は、電線やケーブル、自転車のフレームなどに利用されます。
2.2展伸法の特徴
展伸法により製造されるアルミニウム合金の特徴を以下に示します。
・ 高強度と緻密な組織: 冷間での加工により、結晶粒が微細化し、機械的性質や硬さが向上します。
・ 複雑形状の加工性: 押出成形、深絞りなど、複雑な形状の製品を製造できます。
・ 寸法精度が高い: 精密な寸法管理が可能です。
・ 良好な表面品質: 表面が滑らかで、美しい外観が得られます。
2.3展伸法によるアルミニウム合金の種類と用途
展伸法によって製造されるアルミニウム合金は、JIS規格に基づいて様々な種別が定義されています。これらの合金は、その成分と熱処理の方法によって、異なる特性を持ち幅疲労用途に使用されます。
展伸法により製造されるアルミニウム合金は、A1000系からA8000系までに分類され、それぞれの系列ごとに特定の規格番号、組成、用途が定められています。
JIS規格によるアルミニウムおよびアルミニウム合金の材質記号の表し方は以下のとおりです。
材質記号: 材質を表わす記号は以下のとおりです(JIS H4000:2022)。
A × × ×× × - △△
1位 2位 3位 4位 形状 調質記号
第1位: A;アルミニウムおよびアルミニウム合金を表わす。
第2位: 純アルミニウムについては数字1、アルミニウム合金については主要添加元素により数字の2 ~ 9を次の区分により用います。
A 1 × × ×× ; Al 99.00% またはそれ以上の純Al系
A 2 × × ×× ; Al – Cu 系合金
A 3 × × ×× ; Al – Mn 系合金
A 4 × × ×× ; Al – Si 系合金
A 5 × × ×× ; Al – Mg 系合金
A 6 × × ×× ; Al – Mg – Si 系合金
A 7 × × ×× ; Al – Zn 系合金
A 8 × × ×× ; 上記以外の系統合金
A 2 × × ×× ; 将来の予備
第3位: 数字0 ~ 9 を用い、0は基本合金を表わし、1 ~ 9は合金の改良形によって用いる。日本独自の合金あるいはAA(アメリカ・アルミニウム協会)以外の規格による合金はN とします。
第4位: 純AlはAl純度を小数点以下2ケタで表わし、合金については 旧アルコアの呼び方を原則としてつけ、日本独自の合金については合金系列、制定順に01 ~ 99をつけます。
形状: 管、板などの形状を示します。
-以降: 加工硬化や熱処理などの調質記号を記述します。
(1)1000番台
純アルミニウム系列。加工性、耐食性、電気伝導性、熱伝導性に優れていますが、強度は低いです。
その用途としては、アルミ箔、化学工業用タンク類、導電材、航空機用被覆機材などが挙げられます。代表的な材質記号として、以下のようなものがあります。
・ A1100: 耐食性に優れていますが、強度が低いため、航空機のジュラルミン構造材の表面上の被覆機材(アルクラッド材)に用いられます。
・ A1199: 電解用コンデンサに使用されます。
(2)2000番台
2000系は、主として銅を添加したAl – Cu系合金です。高い強度と優れた機械的性質を有しますが、耐食性は低いため、表面処理が必要となります。この系統の合金は、航空機の構造材や自動車の部品など、高強度が要求される用途に使用されます。
・ A2011: 快削アルミ材として知られています。機械切削性に優れますが、耐食性、対応力腐食割れ性に劣ります。
・ A2017: 熱処理系高強度アルミ合金で、ジュラルミンとして知られます。熱処理によって高強度化出来ます。一方、耐食性、対応力腐食割れ性は劣ります。また、溶接割れ感受性が高いため溶接性が劣ります。
・ A2024: 熱処理系高強度アルミ合金で、超ジュラルミンとして知られます。熱処理によって高強度化出来ます。一方、耐食性、対応力腐食割れ性は劣ります。また、溶接割れ感受性が高いため溶接性が劣ります。
・ A2117: 熱処理系高強度アルミ合金。ジュラルミン、超ジュラルミンと比較して、耐食性、対応力腐食割れ性が改善しています。熱処理によって高強度化が可能ですが、A2017、A2024ほどの高強度は得られません。溶接割れ感受性が高いため溶接性が劣ります。
・ A2219: 熱処理系高強度アルミ合金。A2017、A2024と比較して、溶接割れ感受性を低減し溶接性を改善しています。熱処理によって高強度化が可能です。耐食性に劣ります。鋳造は出来ません。
A2017やA2024などを、激しい腐食環境下で使用する場合は、耐食性に優れた純アルミニウムまたはアルミ合金板で被覆して用いることがあります(アルクラッド材)。
(3)3000番台
3000系は、主としてマンガンを添加したAl – Mn合金で、優れた耐食性と中程度の強度を持ちます。また、加工性にも優れているため、さまざまな用途に使用されます。この系統の代表的な用途としては、飲料缶や建築材料、熱交換器などがあります。
・ A3003: Mnを1.0 ~ 1.5%添加することにより、純アルミニウムの加工性、耐食性低下することなく、やや強度を増加させた合金です。
・ A3004: A3003に、さらにMnを0.5 ~ 1.3%添加することにより、さらに強度を高めることができます。カラーアルミ、屋根板、アルミ缶などに多く使用されています。
(4)4000番台
4000 系は、主にケイ素を添加したAl – Si合金で、熱膨張係数が低く、耐摩耗性、耐熱性に優れており、鍛造ピストンに用いられるA4032があります。また、溶融温度が低い特徴を生かして、溶加材やろう材として熱交換器の組立などに使用されます。ただし、プレス成形性は劣っているために板材成型用としては用いられません。さらに、添加量によって陽極酸化処理後の色調が白灰から黒灰色に変化するので自然発色合金としてビルの外装壁としても用いられます。
・ A4032: Si;11 ~ 13.5% 添加されており、鍛造ピストンに適用されます。
・ A4043: Si;4.5 ~ 6% 添加されており、建築用パネルなどに用いられます。
(5)5000番台
5000 系は、Mgの固溶強化型材料で、1000系材料に次いで生産量が多いです。 Mg量の増加に伴って強度が増加しますが、さらに強度、加工性を改善するために、CrやMnが添加されます。 Mg添加量が多いほど成形性は改善されますが,セレーションと呼ばれるひずみ模様が発生しやすくなります。また、Mg添加量が増えると圧延性が低下し、パス回数が増えてコストも増加します。
この系統の合金は冷間加工のままでは経時変化によりわずかに強度が低下し,伸びが増加する変化を示しますので,120℃程度の温度で加熱する安定化処理(H3Y) が施されます。
船舶、車両、航空機・自動車用アルミホイール、建築用内外装、圧力容器、アルミ缶のフタ部分などに用いられます。
・ A5052: A1100、A3003より高い強度を示します。強度・耐食性・加工性・溶接性のバランスに優れた汎用性の高い材料です。板金加工材、アルミ缶のフタ材、車両、船舶に用いられます。
・ A5110A(旧記号:A5N01): 陽極酸化被膜処理後も優れた光沢を維持しますので、光輝合金として化粧板、カメラ部品、銘板に用いられます。
・ A5652; 過酸化水素に対して耐食性が優れ、過酸化水素用タンク材に用いられます。
・ A5083: 非熱処理合金の中で最も高い強度を持ち、耐食性、溶接性、低温特性、耐海水性に優れ、構造部材として多く使用されていますが、冷間加工のままでは応力腐食割れを起こすことがあるので、通常焼鈍材で使用されます。強度は A1100の 2倍以上あり,引張強さ300MPa ,伸び30% を保証するという意味で30-30材と呼ばれます。最近では30-35材が普通になってきています。
(6)6000番台
6000系は、Al-Mg-Si系合金になります。押出し用合金として用いられ、Mg2Siの析出により硬化させる熱処理型合金です。強度、耐食性が良好で、代表的構造材料として利用されています。ただし、溶接性が悪く、リベットやボルト接合で組立されます。
・ A6061: わずかにCuを添加させタ在主で、T6熱処理を施すことにより、耐力が245MPa以上で、SS400鋼材に相当する、バランスの取れたアルミニウム構造用合金であり、多くの自動車構造材料に使用されています。
・ A6063: 押出し成形性が良好で、押出しつつ空冷で焼きが入る特徴があり、住宅用サッシ、鉄道車両、オートバイ、ガードレール、コンテナなどに使われています。
・ A6005C(旧記号:A6N01): 強度低下を抑えながら、プレス成形性を改善した材種で、大型用車両に使用されます。
・ A6262: 低融点金属である鉛を0.4 ~ 0.7%添加したもので、切削性を改善したもので、カメラ、ガス機器、ブレーキ部品などに使用されます。ただし、アルミ合金のRoHS規制適用除外は鉛含有量0.4%以下以下ですので、RoHS規制には適合していません。
・ A6101:強度が必要でしかも電気特性に優れた材料として、ブスバー、電線などに使用されます。
(7)7000番台
7000系は、アルミニウム合金のなかで最も高強度をもつAl-Zn-Mg-Cu系合金と、Cuを含まない溶接構造用Al-Zn-Mg合金に分類できます。
Al-Zn-Mg-Cu系合金の代表的なものは、日本で開発された超々ジュラルミンの呼称で知られるA7075合金で、航空機、スポーツ用品類に使用されています。ただし、耐食性に劣るため表面処理が必要です。
・ A7075: Zn;5.1 〜 6.1%、Mg;2.1 〜 2.9%、Cu;1.2 〜 2%添加されたもので、超々ジュラルミンとして日本で開発されたもので、アルミ合金の中で最高の強度を持ち、航空機関係の他、スポーツ用具類や金型用などに利用されています。この合金は耐食性,耐応力腐食割れ性に劣る欠点があります。
・ A7475: A7075の不純物量を規制して人生を改善しています。A7075からの代替用途に適しています。
・ A7050: A7075の焼入れ性を改善した合金で、耐応力腐食割れ性に優れています。
Cuを含まないAl-Zn-Mg合金は、焼入れ性が良好で常温時効で硬化する特徴があります。
・ A7204(旧記号:A7N01): Al-Zn-Mg合金の代表的なもので、強度が高く、耐食性が良好な溶接構造用合金です。溶接も可能で、溶接後の熱影響部も自然時効によって母材の強度に回復するので、優れた溶接効率が得られます。ただし,熱処理が適切でないと応力腐食割れを生ずることがあります。車両や構造物に適しています。
・ A7003: A7204より強度が低いが、押出し加工性がよく、大型薄肉形状の製造が容易で、鉄道車両やオートバイのリムなどに用いられています。
(8)8000番台
1000 ~ 7000系に属さないそれ以外の合金が属します。
・ A8090: Li元素を添加した合金で、Li添加による密度低下と、縦弾性係数が大きくなるため、航空機用材料として、エアバス等に使用されています。
・ A8021: Fe元素を添加した合金で、純アルミニウム系からの代替として、加工性を向上させた高機能アルミ箔用材料です。純アルミと比較して、成形性が良く引張強度が高い上に伸びが大きい特性があります。
この他、急速凝固粉末冶金が開発されて、国際登録されています。
2.4 形状および調質記号について
形状および調質記号については以下のように示されます。
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3. 鋳造法によるアルミニウム合金
3.1鋳造法とは
鋳造法によるアルミニウム合金製造方法は、溶融状態の金属を型に流し込み、冷却凝固させることで複雑な形状や大きい部品を一度で製造する方法です。
鋳造法によるアルミニウム合金は、自動車のエンジン部品や機械部品、家電製品の部品など、さまざまな分野で広く使用されています。
鋳造法には、砂型鋳造、金型鋳造、ダイカストなどの方法があります。
(1)砂型鋳造
砂型鋳造は、砂を使って型を作り、そこに溶融したアルミニウム合金を流し込む方法です。この方法は、比較的低コストで大きな部品を製造するのに適しています。砂型鋳造によって得られる製品は、エンジンブロックやシリンダーヘッドなどに使用されます。
(2)金型鋳造
金型鋳造は、金型により型を作り、溶融アルミニウム合金を流し込んで、製品を製造する方法です。この方法は、高精度で複雑な形状の製品を製造するのに適しています。金型鋳造によって得られる製品は、自動車のトランスミッションケースや電子機器の部品などに使用されます。
(3)ダイカスト
ダイカストは、高圧で溶融したアルミニウム合金を型に注入する方法です。この方法は、高速で大量生産が可能であり、薄肉で高強度の製品を製造するのに適しています。ダイカストによって得られる製品は、自動車のホイールやエンジン部品、家電製品の部品などに使用されます。
鋳造法によるアルミニウム合金は、その製造方法により、さまざまな形状や特性を持つ製品を製造することができます。また、鋳造法は、リサイクル性が高く、環境に優しい材料としても注目されています。
3.2鋳造法の特徴
鋳造法により製造されるアルミニウム合金の特徴を以下に示します。
・ 複雑形状の製品を製造可能: 砂型鋳造、ダイカストなど、複雑な形状の製品を製造できます。
・ 大きな製品の製造が可能: 大型の部品を製造できます。
・ 生産性が高い: 量産に適しています。
3.3 代表的な合金種と用途
前述のように、鋳物用アルミニウム合金は、各種鋳造法を利用して鋳物をつくるための合金ですが、適用する鋳造法によって要求特性が異なるので、規格では鋳造法別に分類規定されています。
鋳物用アルミニウム合金には、砂型・金型鋳物用合金とダイカスト用合金の二つの系統があります。
3.3.1 砂型・金型鋳物用合金
別項のダイカストとは異なり、鋳型に溶湯(溶解したアルミニウム)を鋳込む際に、圧力を付加しないため、重力鋳造法とも呼ばれています。合金の種類によって鋳造性、強度、耐摩耗性、高温強さなどの特性が異なるため、その特性を生かす用途に使用されています。
(1)Al-Cu系合金(AC1B)
鋳物用アルミニウム合金の中で靱性に優れた合金であり、切削性がよく、電気伝導性に優れているため、架線用導電部品、自転車用部品、航空機用油圧部品等に使用されます。しかし、耐食性が劣るため、腐食環境での使用は適していません。
(2)Al-Cu-Si系合金(AC2A、AC2B)
Al-Cu系の合金よりもCuの添加量を減らして、靱性を若干犠牲にしても、Siを添加することにより鋳造性を改善した合金です。自動車用エンジン部品などに多く使用されてます。
(3)Al-Si系合金(AC3A)
この合金は、Siだけを合金元素として添加したもので、鋳造性に優れています。強度は高くありませんが、伸びは大きく、熱膨張係数が小さく、耐食性も良好という特長があります。したがって、強度はあまり必要とせず、薄肉で複雑な形状や模様がある住宅エクステリア製品やカーテンウォールなどに適用されています。
(4)Al-Si-Mg系合金(AC4A、AC4C、AC4CH)
この系の合金は、Al-Si系合金のSi量を減らして、Mgを少量加えた合金であり、優れた鋳造性を維持したまま、機械的性質を改善した合金です。おもな用途には、エンジン部品、車両部品、船舶用部品などが挙げられます。
AC4CH合金は、AC4C合金の靱性の向上を意図して不純物の量を厳しく規制したものであり、自動車用ホイールなど保安的要求が高い部品に多く使用されています。
(5)Al-Si-Cu系合金(AC4B)
この合金は、Al-Si系合金のSi量を減らして、Cuを添加した合金です。耐食性はCuを含有するため劣りますが、
鋳造性に優れ、強度も高いので、自動車用、電気機器用、産業機械用部品など広い分野で利用されています。
(6)Al-Si-Cu-Mg系合金(AC4D)
この合金は、Al-Si-Mg系AC4C合金のSi量を若干低くして、Cuを添加した合金です。鋳造時の引け特性に優れているため耐圧性、耐熱性があり、シリンダーブロックやクランクケースなどエンジン部品や油圧機器部品に使用さ
れています。
(7)Al-Cu-Ni-Mg系合金(AC5A)
この合金は、高温下での使用でも硬さを保つように改善した合金であり、耐食性は劣りますが切削性や耐摩耗性に優れています。従来はエンジン用部品に適用されていましたが、現在は、切削性と耐摩耗性に注目され、精密加工を要するしゅう動部品などに使用されています。
(8)Al-Mg系合金(AC7A)
この合金は、代表的な耐食性合金で強さも伸びも高く、切削性に優れています。しかし合金の化学組成から熱処理によって強度を向上させることはできません。また、溶湯は酸化しやすく、ガスを吸収しやすいため鋳造性が悪い欠点があります。おもな用途は、架線金具、船舶用品、建築金具、事務機器部品などです。
(9)Al-Si-Ni-Cu-Mg系合金(AC8A、AC8B、AC8C)
この系の合金は、Al-Cu-Ni-Mg系合金のピストンとしての不十分な特性を改善するため、Cu量を半減させSi添加量を大幅に増やして熱膨張係数を小さくし、耐摩耗性を高めた剛性の高い合金です。エンジン用ピストンなどに使用されます。
(10)Al-Si-Cu-Mg-Ni系合金(AC9A、AC9B)
この系の合金は、Si量が最も多く、AC9A合金は23%Si、AC9B合金では19%Siを含有しています。前述のAl-Si-Ni-Cu-Mg系合金よりもさらに熱膨張係数を小さくした合金であり、高い剛性と耐摩耗性があります。2サイクルエンジン用ピストンやディーゼルエンジン用ピストンなどに使用されています。
3.3.2ダイカスト用合金
ダイカスト用アルミニウム合金は、加圧力を作用させて金型に高速で溶湯(溶解したアルミニウム)を注入させるのに都合の組成のものが選択されます。複雑な形状の部品を、一工程でニアネットシェイプ(最終製品に近い形状)につくるため、溶湯には高い流動性が求められ、また、金型への焼付きを予防するため、砂型・金型用合金では不純物とされる少量のFeを故意に添加しています。
なお、ダイカストは溶湯を高速で金型内へ射出注入するため、空気を巻き込みやすく、製作された鋳物を加熱すると、巻込まれた空気が膨張してブリスターと呼ばれる内部欠陥を発生するため、通常は熱処理をしないで使用されています。
ダイカスト用金型は冷却能が大きく、速い冷却速度で成形(急冷凝固)されることによって微細な組織が得られ、高い機械的性質の製品をつくることができます。また、急冷凝固は機械的性質に及ぼす不純物の影響を受け難くしているので、再生地金が多く使用されます。
(1)Al-Si系合金(ADC1)
この合金は、砂型・金型鋳物用合金のAC3Aと同じような組成の合金であり、鋳造性と耐食性に優れ、高い強度を要求しない薄肉・複雑形状の鋳物に適しています。
(2)Al-Si-Mg系合金(ADC3)
この合金は、砂型・金型用鋳物合金のAC4Aと同じような組成の合金であり、機械的性質と耐食性がよいため自動車や自転車用部品として使用されることがあります。
(3)Al-Mg系合金(ADC5、ADC6)
この合金は、砂型・金型鋳物用合金のAC7Aと同じような組成の合金であり、適度な強度と伸びを有し、衝撃値が高く、耐食性もよいので、釣具や自動車の車体部品などに適しています。
(4)Al-Si-Cu系合金(ADC10、ADC12)
この系の合金は、砂型・金型鋳物用合金のAC4Bに相当する合金で、多量のSi添加で鋳造性を改善し、Cuの添加で強度を高めた合金です。ダイカスト用合金の中で特性を総合して見た場合、鋳造性に優れた高力合金として位置づけられており、その用途は広く、使用量も多くなっています。自動車エンジン部品や電気機器部品におけるシェアが高くなっています。管理人は、油圧機器に携わっていましたが、アルミハウジングの材料はADC12ばかり使用していました。
(5)Al-Si-Cu-Mg系合金(ADC14)
この合金は、当初はエンジンブロックの軽量化を目的として開発されたものです。強度、耐摩耗性に優れ、熱膨張係数が小さいのが特長です。自動変速機用オイルポンプボディーやハウジングクラッチなどに使用されています。
4. 展伸法と鋳造法の比較
4.1展伸法と鋳造法の特性比較
展伸法と鋳造法について、その特性を比較すると下表のようになります。
表3 展伸法と鋳造法との比較 出典: Gemini
4.2展伸法と鋳造法との選定ポイント
アルミニウム合金製品の製作について、展伸法と鋳造法のどちらを選択すべきかは、製品の形状、寸法精度、強度、表面品質、生産量、コストなど、求められる特性に応じて決まります。
例えば、
・ 高い強度と寸法精度が要求される場合 ・・・ 展伸法
・ 複雑な形状の製品が必要な場合 ・・・ 鋳造法
・ 大量生産が必要な場合 ・・・ 鋳造法
・ コストを重視する場合 ・・・ 鋳造法
5. アルミニウムおよびアルミニウム合金の分類について
アルミニウム合金の種類について示します。
表4 アルミニウムおよびアルミニウム合金の種類 出典: アルミニウムとは (一社)日本アルミニウム協会
参考文献
アルミニウムとは (一社)日本アルミニウム協会
航空機用アルミニウム合金の系統的調査 国立科学博物館技術の系統化調査報告 Vol.31 2022年
JIS H4000:2022 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条
引用図表
表1 形状記号 出典: JIS規格
表2 質別記号 出典: JIS H0001
表3 展伸法と鋳造法との比較 出典: Gemini
表4 アルミニウムおよびアルミニウム合金の種類 出典: アルミニウムとは (一社)日本アルミニウム協会
ORG:2024/08/16