28.1 はじめに(歯車)

28.1 はじめに(歯車)(Introduction of gear)

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歯車は、確実に動力を伝達したいときや、速度を変えたいとき、大きなトルクを伝達したいときなどに用いられる、機械要素です。

小さな歯車は時計やOA機器に、中型の歯車は自動車やエレベータ・エスカレータなどの産業用機械に使用されています。さらに大型の歯車は船舶や風力発電所のタービンの減速機に使用されています。

歯車のような伝達機構は、紀元前2600年頃(諸説あり)から各地で、水くみ上げ用の機構として木製のピンの歯による伝達機構が認められています(図28.1.1)。

図28.1.1 木製の原始的な歯車機構

紀元前350年頃、古代ギリシャのアリストテレスはその著書で、歯車が多くのアプリケーションで非常に一般的に使用されていると述べています。紀元前250年頃、古代ギリシャのアルキメデスは、ウォームギアと円筒歯車とを用いた、5段の歯車列により、おおよそ200倍の出力を得ることができる巻上げ機を考案しています(図28.1.2)。この装置で、4200トンの戦艦を少人数で進水させることが出来たとの記録が残っています。アルキメデスは、イタリアシチリア島のシラクサで、数多くの工学的な発明(アルキメデスのネジなど)をしています。

図28.1.2 アルキメデスのウォームギアを利用した巻上げ機

紀元前1世紀頃、ローマの建築家ヴィトルビスの著書には、ウォームギアを用いた距離測定用のオドメーター(図28.1.3)や、歯車装置つきの水力製粉機(図28.1.4)について述べられています。水力製粉機には直交軸歯車が使用されており、水車部分の横軸から垂直軸への変換により製粉がスムーズになりました。

図28.1.3 オドメーター

図28.1.4 水力製粉機

西暦 850 年頃、イタリアのパシフィカスとシルベステルⅡ世が歯車式時計を発明しました。さらに 西暦1250 年頃にフランスの建築家ヴィラールドオヌクールが歯車の回転を制御する脱進機構の図を記録しています。12 世紀の初めには、イタリアのジェバニデドンディが内歯歯車や楕円歯車を用いた時計を考案しています。このころから、機械式時計がヨーロッパ各地で作られるようになりました。

15 世紀後半には、イタリアのレオナルド・ダ・ビンチが、各種歯車のスケッチを残しています(図28.1.5)。彼は、これらの歯車を縦横に駆使した巧妙な機械装置を考案して、歯車技術史上特筆すべき成果を残しています。

図28.1.5 レオナルド・ダ・ビンチが考案した歯車装置

18世紀のイギリスの産業革命では、蒸気エンジンを利用した灌漑装置や動力機械が発明されましたが、図28.1.6は、ワットの蒸気機関に用いられた遊星歯車による往復運動から回転運動に変換するための機構です。

図28.1.6 ワットの蒸気機関に使用されている遊星歯車

西洋の工業化に不可欠な要素として、歯車技術は急速に進歩してきました。

 

参考文献
A Text Book of Machine Design by R.S.Khurmi, J.K.Gupta
Machine design Ⅱ  by Prof. K. Gopinath et al 講義資料 Indian Institute of Technology Madras
歯車の歴史とその発展経緯に関する考察   松岡洋二他  2008 年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集

 

引用図表
[図28.1.1] 木で作られた原始的なピン歯車  歯車の歴史とその発展経緯に関する考察
[図28.1.2] アルキメデスのウォームギアを利用した巻上げ機  歯車の歴史とその発展経緯に関する考察
[図28.1.3] オドメーター  Machine design Ⅱ
[図28.1.4] 水力製粉機  Machine design Ⅱ
[図28.1.5] レオナルド・ダ・ビンチが考案した歯車装置    歯車の歴史とその発展経緯に関する考察
[図28.1.6] ワットの蒸気機関に使用されている遊星歯車   Machine design Ⅱ

ORG: 2017/9/2