4.17縦弾性係数と横弾性係数

4.17縦弾性係数と横弾性係数
(Modulus of elasticity and transverse modulus of elasticity)

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1. ひずみ

1.1 縦ひずみ(longitudinal strain)、横ひずみ(lateral starain)

図1に示す、長さ\( t_{ 0 } \)、直径\( d_{ 0 } \)の丸棒(もしくは、幅\( d_{ 0 } \)の正角棒)を軸方向に引っ張った場合、棒は負荷が作用する方向に\( \Delta l \) だけ伸びて\( l  ( = l_{ 0 } + \Delta l ) \)になり、直角方向には荷重は作用しませんが、直径(幅)\( d_{ 0 } \)が\( \Delta d \)だけ縮んで\( d  ( = d_{ 0 } + \Delta d ) \) となります。
そこで、単位長さあたりの伸びあるいは縮みを、ひずみ(歪:strain)と定義し、ギリシャ文字\( \epsilon \) で表します。

\( \epsilon = \displaystyle\frac{ l – l_{ 0 } }{ l_{ 0 } } = \displaystyle\frac{ \Delta l }{ l_{ 0 } } \)    (1)

\( \epsilon ‘ = \displaystyle\frac{ d – d_{ 0 } }{ d_{ 0 } } = \displaystyle\frac{ \Delta d }{ d_{ 0 } } \)    (2)

図1縦ひずみと横ひずみ  出典参考:現代材料力学  平 修二  オーム社 

(1)式で表されるひずみを縦ひずみ、(2)式で表されるひずみを横ひずみといいます。別コンテンツで示されるポアソン比など特別な場合をのぞき、単にひずみといえば縦ひずみのことをいうのが普通です。

例えば、長さ100mmの棒が、引張荷重を与えられて101mmに伸びた場合、縦ひずみは次式のようになります。

\( \epsilon = \displaystyle\frac{ 101.0 – 100.0 }{ 100.0 } = 0.01 \)

ひずみは、一般的には無次元数で表示されますが、%で表示される場合もあります。

 

1.2せん断ひずみ(shearing strain)

図2 に示すように、直方体ABCDEFGHを考えます。その一面\( □ ABEF ) \) にせん断力が作用すると、直方体は側面が\( □ A’B’CD ) \) のように変形します。
この場合の変形量は、角度 \( \gamma \) \( ( = \angle ADA’ = \angle BCB’ ) \) で示されます。これをせん断ひずみといい、ギリシャ文字\( \gamma \) で表します。
せん断ひずみは、平行な2平面に生じる相対すべりの長さ\( ( AA’ = BB’ ) \) を平面間の距離\( ( AD = BC ) \) で除したもので表され、単位長さに対するすべりの割合を示します。
これは、\( \tan \gamma \) になりますが、\( \gamma \) が小さければ

\( \gamma = \tan \gamma \)      (3)

になります。

図2せん断ひずみ  出典参考:現代材料力学  平 修二  オーム社

 

このように、物体の変形は、伸びとすべりとから成り立っています。

 

 

1.3体積ひずみ(volumetric strain)

図3に示すように、体積\( V \)、各辺の長さが\( a,b,c \) の六面体を考えます。六面体の各面に垂直応力\( \sigma_{ x }, \sigma_{ y }, \sigma_{ z } \) が作用して\( x、y、z \) 各方向にそれぞれ\( \epsilon_{ x }、\epsilon_{ y }、 \epsilon_{ y }、\epsilon_{ z } \) のひずみを生じて、その結果体積が\( \Delta V \) 変化したとします。
\( V \)、\( \Delta V \) は、それぞれ次式のように表されます。

\( V = abc \)

\( \Delta V = a ( 1 + \epsilon_{ x } ) \cdot b ( 1 + \epsilon_{ y } ) \cdot c ( 1 + \epsilon_{ z } ) – abc \)

   \( = abc { ( \epsilon_{ x } + \epsilon_{ y} + \epsilon_{ z } ) + \epsilon_{ x } \epsilon_{ y } + \epsilon_{ y } \epsilon_{ z } +\epsilon_{ z } \epsilon_{ x } + \epsilon_{ x }  \epsilon_{ y } \epsilon_{ z } } \)

であるから、ひずみ\( \epsilon_{ x }, \  \epsilon_{ y }, \ \epsilon_{ z } \) が大きくなければ

\( \Delta V \approx abc ( \epsilon_{ x } + \epsilon_{ y } + \epsilon_{ z } ) \)

が成立しますので、

\( \epsilon_{ v } = \displaystyle\frac{ \Delta V }{ V } = \epsilon_{ x } + \epsilon_{ y } + \epsilon_{ z }  \)

の関係が成り立ちます。

この\( \epsilon_{ v } \) を体積ひずみ、または体積膨張率(cubic dilatation)といいます。

図3体積ひずみ  出典参考:現代材料力学  平 修二  オーム社 

 

2. 縦弾性係数(modulus of elasticity)

垂直応力\( \sigma \)と縦ひずみ\( \epsilon \)とが比例関係にある場合、比例定数を\( E \) とすると、次式で示されます。

\( \sigma = E \epsilon \) 

と表されます。
この関係は、フックの法則と呼ばれるものです。この比例定数\( E \) を縦弾性係数、あるいはヤング率(Young’s modulus)といいます。

 

3. 横弾性係数(modulous of rigidity)

せん断応力\( \tau \) とせん断ひずみ\( \gamma \) との間には比例関係が有り、比例定数\( G \)とすると、次式で示されます。

\( \tau = G y \) 

で表されます。この場合の、比例定数\( G \) を、横弾性係数、剛性率(modulous of rigidity)、あるいはせん断弾性係数(shear modulus)といいます。

 

4. 縦弾性係数、横弾性係数の例

少し古い文献ですが、縦弾性係数、横弾性係数の例を示します。

表4 縦弾性係数、、横弾性係数の例  原出典:標準機械設計図表便覧 改新増補5版

 

参考文献
現代材料力学  平 修二  オーム社 
標準機械設計図表便覧 改新増補5版 小栗富士雄他 共立出版 2005年

引用図表
図1縦ひずみと横ひずみ  出典参考:現代材料力学  平 修二  オーム社 
図2せん断ひずみ  出典参考:現代材料力学  平 修二  オーム社 
図3体積ひずみ  出典参考:現代材料力学  平 修二  オーム社 
表4 縦弾性係数、、横弾性係数の例  原出典:標準機械設計図表便覧 改新増補5版

ORG:2024/10/06