鋳造(casting)

鋳造(casting)

 

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1. 鋳造とは

鋳造は、金属を溶解して型に注ぎ込み、冷却・凝固させることで形状を作り出す製造プロセスです。

製造業でのものづくりにおいて、鋳造は幅広く利用されており、鋳造方法には多くの種類があります。

それぞれの方法には独自の原理、長所、短所があり、製品の要求や用途に応じて適切な鋳造方法が選択されます。

 

 

2. 鋳造法の種類

2.1鋳造法の分類

鋳造法については、鋳型の材質、成形プロセス、および鋳型(mold)に溶融金属を供給する方法によって、大きくは次に示す3つに分類されます。

2.1.1 消耗鋳型鋳造:

消耗鋳型鋳造は、鋳物を取り出すときに鋳型を破壊する必要があり、各鋳造ごとに新しい鋳型を製作する必要がある鋳造法です。鋳型は砂、石膏や、セラミックスなどの材料で製作されます。通常は、特性を向上するために、さまざまなバインダーまたは結合剤と混合されます。

これらの材料は基本的に耐火材料で、溶融金属の高温に耐えることができます。溶融金属が冷却・凝固した後、本方法では鋳型を壊して製品である鋳物を取り出します。

消耗鋳型鋳造は、非常に複雑な形状の部品や高融点の材料に適しています。ただし、生産速度は、鋳造自体よりも、鋳型の製作時間によって、制限されることがよくあります。

主な消耗鋳型法には次のものがあります。砂型鋳造法、シェル型鋳造法、インベストメント鋳造法、消失模型鋳造法、石膏型鋳造法、セラミック型鋳造法、真空鋳造法などがあります。

 

2.1.2 永久鋳型鋳造:

鋳型は、高温でも強度を維持する金属またはその他の耐久性のある材料で製作されます。鋳造後、鋳物から簡単に取り外しできて、繰り返し鋳造に使用できます。

金属製の鋳型は消耗型非金属鋳型よりも、熱伝導性が高く、溶融金属はより早い冷却速度で凝固し、鋳物の微細構造や結晶粒度に影響します。

永久鋳型鋳造には次のようなものがあります。重力鋳造法、スラッシュ鋳造法、圧力鋳造法、ダイカスト法、遠心鋳造法、スクイズ鋳造法などがあります。

 

2.1.3 複合鋳型鋳造:

鋳型は、砂、グラファイトや、金属など2つ以上の異なる材料で作られ、各材料の長所を組み合わせて製作されます。複合鋳型には、消耗部分と永久部分があり、さまざまな鋳造プロセスで使用されます。

鋳型の強度を向上させ、冷却速度を制御し、鋳造プロセス全体の経済性を最適化するために使用されます。

 

以下に、これらの鋳造法から代表的なものについて、概要を示します。

 

2.2 消耗鋳型鋳造

2.2.1 砂型鋳造法:

砂型鋳造法は、鋳造方法の中で最も一般的に適用されます。比較的少量生産の部品や大型部品の製造に適しています。
この方法では、木型や金型を用いて、砂で作られた型を製作して、砂型の空洞部に溶融金属を注入して、冷却・凝固させて鋳物を製作します。

[長所]
・ 大型の部品を製造するのに適しています。
・ 複雑な形状の製品の製作が可能です。
・ 特に木型の場合は、型の製作コストが低く、少量生産に向いています。

[短所]
・ 砂型のもとになる木型や金型の製作には、比較的時間がかかります。
・ 特に木型の場合は耐久性が低く、保管・管理に注意が必要です。
・ 砂の粒度に影響されるため、表面粗さが比較的粗くなることが多いです。

2.2.2シェル型鋳造法:

シェル型鋳造法は、熱硬化性樹脂粘結剤をケイ砂表面にコーティングしたものを加熱して、金型表面に付着して型表面に軟化・密着した後、硬化して強固で寸法精度が高い精度の鋳型を製造する方法です。この方法は、砂型鋳造よりも精度が高く、複雑な形状の鋳物を製造するのに適しています。

[長所」
・ 高い寸法精度
・ 複雑な形状の鋳物が可能
・ 優れた表面仕上げ
・ シェル型の長期保管が可能

[短所」
・ 製造コストが高い。
・ 大量生産には不向きである。
・ 型の製作に時間がかかる。
・ 鋳造品のサイズと重量に制限がある。
・ 製造プロセスで匂いのあるガスが発生する。

 

2.2.3インベストメント鋳造法:

ロストワックス法とも呼ばれ、禅精密鋳造品生産量の80%以上を占めています。インベストメント鋳造法には、ろう模型を耐火物スラリーに埋めて造型した後ワックスを溶かすソリッドモールド法、ろう模型の周囲に耐火物スラリーのコーティングを繰返して造型してセラミックシェルを形成した後、ワックスを溶かすセラミックシェルモールド法とがあり、工業的にはセラミックシェルモールド法がほとんどです。
この方法は、複雑な形状の小型部品の製造に適しています。

[長所]
・ 非常に高い寸法精度を有する。
・ 複雑な形状の鋳物製作が可能である。
・ 優れた表面仕上げを有する。

[短所]
・ 高コスト
・ 手作業が多く生産速度が遅い。
・ 大型部品には不向き

 

2.2.4消失模型鋳造法:

消失模型鋳造法は、発泡スチロールなどの発泡材料で製作した模型を、鋳砂中に埋め込んで鋳型とし、模型を抜き取ることなくそのまま溶湯を鋳造して、模型を溶湯熱により分解して気化消失させ,模型を溶湯で置換して鋳物を製造する鋳造方法です。鋳型の分割、中子造型などの作業が省略出来て、造型工数が従来法の半数以下に低減できます。

[長所]
・ 複雑な形状の鋳物が可能
・ 高い寸法精度
・ 少量生産から大量生産まで幅広く対応可能
・ 鋳型の製作コストが比較的安価

[短所]
・ 発泡スチロール模型の製作に時間がかかる。
・ 型の再利用ができない
・ 鋳造品のサイズと重量に制限がある。
・ 砂のリサイクルが難しい。
・ 発泡スチロールの燃焼ガスによる環境負荷がある。

 

2.2.5石膏型鋳造法:

石膏型鋳造法は、石膏を主成分として、珪砂や、タルクなどを配合した石膏を使用して鋳造する方法です。石膏鋳造法は、石膏と反応しない低融点の亜鉛合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金や、一部の銅合金の鋳造に用います。この方法は、複雑な形状や細かなディテールを持つ鋳物、例えばヒートシンクなどの製作に適しています。

[長所]
・ ダイカストと同等の高い寸法精度と細部の再現性に優れる。
・ 複雑な形状の鋳物が可能である。
・ 初期コストが低い。
・ 小ロット生産に適している。

[短所]
・ 大量生産には不向き。
・ 鋳型の乾燥・焼成に時間がかかる。
・ 通気性が不良で、湯回り不良対策が必要である。

 

2.2.6 セラミック型鋳造法:

セラミック型鋳造法は、耐火性の高いセラミック材料で作られた型を使用する鋳造方法です。高温に耐えるため、特殊な金属の鋳造に適しています。

[長所]
・ 高温合金の鋳造が可能
・ 高い寸法精度と表面仕上げ
・ 複雑な形状の鋳物が可能
・ 高耐久性

[短所]
・ 製造コストが高い。
・ 鋳型の製作に時間がかかる。
・ 大量生産には不向き。
・ セラミックの取り扱いが難しい。

 

2.2.7 真空鋳造法

真空鋳造法は、真空状態で溶融金属を鋳型に注入する鋳造方法です。真空状態で行うため、チタンのような活性金属にも適用できるし、通常の鋼や非鉄金属においても溶湯の酸化やガス吸収を抑制出来て高品質な鋳物を製作できます。

[長所]
・ ガス欠陥の無い高品質な鋳物の製作が可能。
・ 寸法精度が良好。
・ 優れた表面仕上げ状態。
・ 薄肉鋳物の製作が可能。

[短所]
・ 設備コストが高い。
・ 複雑形状の鋳物には不向き。
・ 生産速度が遅い。
・ 大量生産には不向き。

 

 

2.3 永久鋳型鋳造

 

2.3.1 重力金型鋳造法:

金型鋳造法は、砂型鋳造と同じく製品形状に相当する空隙を有する金型内に溶湯を注入して鋳造する方式です。金型鋳造と言えば、ダイカストや遠心鋳造など、鋳型に金型を用いるもの全ての総称です。特に、金型内で溶湯を重力を利用して注入して鋳造する場合を、重力金型鋳造といいます。金型鋳造法の最も基本的な方法です。金型鋳造でも、中子や鋳型の一部に砂型を利用できます。

[長所]
・ 設備コストは低い。
・ 操作が簡単。
・ 大量生産に適している。
・ 幅広い金属材料に対応可能です。

[短所]
・ 複雑な形状の鋳物には不向き。
・ 鋳造品の品質が一定しない場合がある。
・ 高精度な寸法が得にくい。(砂型に比較すると高精度である。)
・ 表面仕上げが粗い場合がある。

 

2.3.2 スラッシュ鋳造法:

スラッシュ鋳造法は、溶融金属を鋳型に注ぎ込み、鋳型表面で部分的に凝固した後、一定時間後に鋳型を反転させて、内部の未固化の金属を排出することで、中空の鋳物を製作する方法です。鋳物の厚みは、鋳型から未固化の金属を排出するまでの時間で制御されます。
一般的に、亜鉛やスズなどの低融点金属に適用されます。

[長所]
・ 中空の鋳物が容易に製作可能。
・ 高速での生産が可能。
・ 材料の節約ができる。
・ 設備コストが比較的低い。

[短所]
・ 複雑な形状には不向き。
・ サイズに制限がある。
・ 高精度な寸法が得にくい。
・ 表面仕上げが粗い場合がある。

 

2.3.3低圧鋳造法:

低圧鋳造法は、溶融金属を低圧力で押上げて上部に置かれた金型に注入して、湯口部の凝固が完了後加圧を止めて固化していない溶湯を炉内に戻す鋳造方法です。ほとんどアルミニウム合金鋳物に適用されています。重力金型鋳造法と比較して鋳造歩留まりが高いのが特徴です。

[長所]
・ 高密度で強度の高い鋳物の製作が可能。
・ 高い寸法精度。
・ 優れた表面仕上げ。

[短所]
・ 設備コストが高い。
・ 複雑な形状には不向き。
・ 金型温度を高めにする必要があるため、鋳造サイクルが長め。

 

2.3.4 ダイカスト法:

ダイカスト法は、金属製の永久鋳型(ダイ)に溶融金属を高圧で注入して製品を作る方法です。ダイは通常二つの半分で構成され、閉じると鋳造したい形状の空洞が形成されます。

[長所]
・ 高い生産速度が実現可能です。
・ 表面の面粗度が向上します。
・ 薄くて複雑な形状の製品が製作可能です。

[短所]
・ ダイカスト機器とダイの初期コストが高い。
・ 主に非鉄金属に限られ、鉄鋳造には適していません。
・ ダイのメンテナンスと操作には特別な技術が必要です。

 

2.3.5 遠心鋳造法:

遠心鋳造法は、回転する型に溶融金属を注ぎ込み、遠心力を利用して金属を型内に均等に分布させる方法です。この方法は、パイプやシリンダーライナーのような中空で回転対称の部品の製造に適しています。これにより、高密度で方向性のある凝固が促進されます。

[長所]
・ 高密度で欠陥の少ない鋳物が得られます。
・ 鋳物の方向性凝固が促進されます。
 大型の中空部品の製造が可能です。

[短所]
・ 専用の設備が必要であり、初期投資が高い。
・ 複雑な形状には向いていません。
・ 量産には向かない場合があります。

 

2.3.6 スクイズ鋳造法:

スクイズ鋳造法は、鋳型内に溶融金属を注入後、機械的外力により加圧状態で凝固させる鋳造方法です。圧力をかけることで、凝固収縮やガスによるポロシティが少なく鋳物の密度が高くなり、機械的性質が向上します。

[長所]
・ 高密度で強度の高い鋳物が可能です。
・ 高い寸法精度を有します。
・ 優れた機械的性質。
・ 複雑な形状の鋳物製作が可能です。

[短所]
・ 設備コストが高い。
・ 圧力装置のメンテナンスが必要。
・ 大量生産には不向きです。
・ 初期投資が高い。

 

 

3. 鋳造方法の比較

各鋳造方法には独自の特性があり、製品の要求に応じて最適な方法が選ばれます。
例えば、大型かつ複雑な形状の部品には砂型鋳造法が適していますが、高精度で薄肉の部品にはダイカスト法が有利です。遠心鋳造法は高密度で強度の必要な部品に向いています。
鋳造法の選択は、製品の形状、材料、数量、および予算によって決定されるべきです。

 

参考文献
A Textbook of Machine Design   R.S. Khurmi, J.K. Gupta   Eurasia Publishing House (PVT.) LTD. 2005年
Metal Casting Processes: Expendable, Permanent Mold, and – Course Sidekick
https://www.coursesidekick.com/material-science/3909579
機械工学便覧 第6版 β03-02章

 

ORG:2024/06/14