内圧が負荷される薄肉円筒の変形量
内圧が負荷される薄肉円筒の変形量
(Deformation of a thin-walled cylinder subjected to internal pressure)
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均一な材料でできた薄肉円筒が内圧を受けるときに、円筒の直径と長さが増加します。
本コンテンツでは、応力解析を行うことにより、変形量について記述します。
Contents
1. 加圧時の薄肉円筒の変形
1.1 仮定と前提条件
・ 円筒は薄肉構造である(厚さ t が半径 r に比べて十分に小さい)。
・ 内圧 P が円筒に均等に付加される。
・ 材料は均質で等方性であり、弾性範囲内で変形する。
1.2 薄肉円筒に発生する応力
内圧 P が加わる場合、薄肉円筒には、周方向、軸方向にそれぞれの応⼒が発生します。
・ 周方向応力(hoop stress): \( \sigma_{ \theta } = \displaystyle\frac{P r}{t} \)
・ 軸方向応力(axial stress): \( \sigma_{ z } = \displaystyle\frac{P r}{2t} \)
ここで、
\( L \) = 薄肉円筒の長さ(mm)
\( r \) = 薄肉円筒の半径(mm)
\( t \) = 薄肉円筒の厚さ(mm)
\( P \) = 内圧(Pa = 1×10-6 N/mm2)
\( E \) = 薄肉円筒材料のヤング率(縦弾性係数)(N/mm2)
\( \nu \) = ポアソン比(-)
1.3 薄肉円筒の変形量
変形量は、薄肉円筒に発生する応⼒と材料の弾性特性(ヤング率 \( E \) とポアソン⽐ \( \nu \))に基づいて計算されます。
(1)半径方向の変形量( \( \Delta r \) ):
半径⽅向の変形量は、周⽅向応⼒と軸⽅向応⼒の影響を受けます。半径⽅向のひずみ \( \varepsilon_{ r } \) は次のように表されます。
\( \varepsilon_{ r } = \displaystyle\frac{ \sigma_{ \theta }}{ E } – \nu \displaystyle\frac{\sigma_{ z } }{ E } \)
従って、半径⽅向の変形量 \( \Delta r \) は、
\( \Delta r = r \left( \displaystyle\frac{ \sigma_{\theta}}{ E } – \nu \displaystyle\frac{ \sigma_{z}}{ E } \right) = r \left( \displaystyle\frac{ P r }{ t E } – \nu \displaystyle\frac{ P r }{ 2t E } \right) = \displaystyle\frac{ P r^2}{ tE } \left( 1 – \displaystyle\frac{ \nu }{ 2 } \right) \)
(2)軸方向の変形量( \( \Delta L \) ):
軸⽅向の変形量についても、半径方向の変形と同様、軸⽅向応⼒と周⽅向応⼒の影響を受けます。軸⽅向のひずみ\( \varepsilon_{ z } \) は次のように表されます。
\( \varepsilon_{ z } = \displaystyle\frac{ \sigma_{ z }}{ E } – \nu \displaystyle\frac{\sigma_{ \theta } }{ E } \)
従って、軸⽅向の変形量 \( \Delta L \) は、
\( \Delta L = L \left( \displaystyle\frac{ \sigma_{ z }}{ E } – \nu \displaystyle\frac{ \sigma_{ \theta }}{ E } \right) = L \left( \displaystyle\frac{ P r }{ 2t E } – \nu \displaystyle\frac{ P r }{ t E } \right) = \displaystyle\frac{ L P r }{ 2tE } \left( \displaystyle\frac{ 1 }{ 2 } – 2 \nu \right) \)
(3)体積の増加量( \( \Delta V \) ):
半径方向と長さとの変形により、薄肉円筒の体積も増加します。内圧による薄肉円筒の体積増加は、次式で示されます。
\( \Delta V = 変形後の体積 – 元の体積 \)
\( = \displaystyle\frac{ \pi }{ 4 } ( 2 r + \Delta d )^2 ( L + \Delta L ) = \displaystyle\frac{ \pi }{ 4 } \times (2 r)^2 L \)
\( = \pi ( r^2 \Delta L + r L \Delta L ) \)
2. 例題
直径210mm(半径105mm)板厚10mm、長さ1000mmの合金鋼製の薄肉円筒があります。
この薄肉円筒に内圧10MPa(= 10N/mm2)が負荷されたときの、径、及び長さの増加量、及び体積の増加量を計算してください。両端の閉止条件は無視するとします。また、ヤング率は2.05 × 105 N/mm2、ポアソン比は\( \nu \) =0.3 とします。
[解答]
・半径方向の変形量を求める。
\( \Delta r = \displaystyle\frac{ P r^2 }{ tE } \left( 1 – \displaystyle\frac{ \nu }{ 2 } \right) \)
\( = \displaystyle\frac{ 10 \times 105^2 }{ 10 \times 2.05 x 10^5 } ( 1 – 0.3/2 ) \)
\( = 0.04571 mm \)
・軸方向の変形量を求める。
\( \Delta L = \displaystyle\frac{ L P r }{ 2tE } \left( \displaystyle\frac{ 1 }{ 2 } – 2 \nu \right) \)
\( = \displaystyle\frac{ 1000 \times 10 \times 105 }{ 2 \times 10 \times 2.05x 10^5 } ( 1 / 2 – 2 \times 0.3 ) \)
\( = 0.1024 mm \)
・体積の増加量を求める。
\( \Delta V = \pi ( r^2 \Delta L + r L \Delta L ) \)
\( = \pi ( 105^2 \times 0.1024 + 105 \times 1000 \times \times 0.04571 ) \)
\( = 18\ 625 mm^3 \)
参考文献
A Textbook of Machine Design R.S.KHURMI , J.K.GUPTA EURASIA PUBLISHING HOUSE (PVT.) LTD. 2005年
Mechanics of Materials Ferdinand P. Beer, E. Russell Johnston Jr., John T. DeWolf, and David F. Mazurek
ORG:2024/06/07