フッ素樹脂の種類
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フッ素樹脂の種類(Type of fluororesin)
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ターボポンプ屋をしている頃は、フッ素樹脂と言えば、もっぱらテフロンと商標名でPTFE(四フッ化エチレン樹脂)を使っていました。ですから、化学プラントのライニングと聞いても、もっぱらPTFEだと思っていました。
最近、タンクや配管用のコーティングについて調べる機会がありインターネットで当たってみると、フッ素系のコーティング剤には色々な種類があることがわかりました。残念ながら自分自身の経験からの内容なあまり無く、インターネットや文献からのまとめ記事になりますが、興味のおもむくまままとめてみました。
以下のフッ素樹脂について概説します。
・PTFE=ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化)
・PFA=テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体
・FEP=テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化)
・ETFE=テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体
・PVDF=ポリビニリデンフルオライド(2フッ化)
・PCTFE=ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化)
・ECTFE=クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体
1.PTFE
名称:四フッ化エチレン樹脂 (4フッ化)
化学名:ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)
商品名:テフロンPTFE(ケマーズ)、ポリフロンPTFE(ダイキン⼯業)、フルオンPTFE(旭硝⼦)、ダイニオンPTFE(3M)、アルゴフロンPTFE(Solvay)
用途:
・ガスケット、軸受、シートライニング材、シート、チューブ、ホース、電気部品、ネジシール⽤⽣テープ、パイプライナー、電線被覆材、コーティング
・ガラスクロスやカーボンクロスなどに含侵または塗布して、潤滑性や非粘着性をを付与したシート
・PTFE(モールディングパウダー、ファインパウダー)にガラスファイバや、カーボンファイバ、グラファイト、青銅などの充填剤を加えることにより機械特性や圧縮特性や、耐クリープ性、耐摩耗性をさせた機械部品や摺動材
概要: PTFEは、1946年にデュポン社により商品化されました。フッ素樹脂と言えばPTFEをさすことが多く、生産量、使用量ともに最も多いです。耐薬品性、耐熱性はフッ素樹脂の中で最も優れています。
耐熱性や、耐薬品性、⾮粘着性、⾃⼰潤滑性、電気特性に優れています。PTFEの摩擦係数は、今まで発見された物質の中で最も摩擦係数が小さいといわれています。
PTFEには、懸濁重合品と乳化重合品があります。懸濁重合品はモールディングパウダーと呼びます。乳化重合品は粉末化したものをファインパウダー、界⾯活性剤を加えて濃縮したものをディスパージョンおよびエナメルと呼びます。
モールディングパウダーは、シートやパイプ等の加⼯⽤素材の圧縮成形⽤,ラム押出⽤原料として用いられます。
ファインパウダーは電線被覆や押出しチューブ等のペースト押出⽤原料として用いられます。
ディスパージョンおよびエナメルは、ガラスクロスへの含浸,コーティング⽤途の材料として使⽤されます。
PTFEは、他のフッ素樹脂と異なり、加熱して融点以上になってもゲル状(ゴム状弾性体)になるだけで、完全には溶融しません。従って通常の熱可塑性樹脂に用いられる射出成形や溶融押出成形等が適用できず、 金属の粉末冶金やセラミックに似た特殊な成形法(圧縮成形)が用いられます。
耐熱性、耐薬品性、電気特性、⾮粘着性、⾃⼰潤滑性に優れています。
2.PFA
名称:四フッ化エチレン・パーフルオロ
アルキルビニルエーテル共重合樹脂(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)
化学名:パーフルオロアルコキシアルカン(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)(perfluoro alkoxy alkane)
商品名:テフロンPFA(ケマーズ)、ネオフロンPFA(ダイキン⼯業)、フルオンPFA(旭硝⼦)、ダイニオンPFA(3M))アルゴフロンPFA(Solvay)
用途: チューブ、ホース、継⼿、容器、フィルム、コーティング、ライニング、電線被覆材、半導体関連製品
概要: PFAは、アルコキシ置換基により溶融成形できるようになったため、射出成型や押出成形などの溶融加工・成形や溶接加工が可能になりました。分子レベルでは鎖長が短く、他のフッ素樹脂より鎖の絡み合いが大きいです。
PFAは、PTFEの場合に存在する室温転移点が無く、PTFEに匹敵する機械的、化学的、電気的特性を持っており、特に高温時の弾性率、耐クリープ性はPTFEより優れています。連続使用温度が200℃以上の高温でも、耐熱性や、耐薬品性、非粘着性、低摩擦性、耐屈曲性などの機械的性質に優れています。
また、官能基に酸素を含んでいるのでフィルムのような成形品の場合は無色で透明性がありますが、厚みを持つと半透明になります。
PFAには⼤別して通常品と⾼純度品があります。⾼純度品は、化学的、熱的に安定化させたり、⾦属不純物を極⼒削減したもので、多くは半導体や液晶向けなどで使⽤されています。
3.FEP
名称:四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂(4.6フッ化)
化学名:パーフルオロエチレンプロペンコポリマー (テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)(perfluoro ethylene propylene copolymer, tetrafluoroethylene hexafluoropropylene copolymer)
商品名:テフロンFEP(ケマーズ)、ネオフロンFEP(ダイキン⼯業)
用途: チューブ、配管材料、電線被覆材、コーティング、ライニング、電気部品、パッキン、ガスケットなど
概要: FEPは、連続使用温度が200℃程度で、PTFEやPFAよりも耐熱性が劣ります。しかし、PFAと同様PTFEの場合に存在する室温転移点が無く、PTFEと同様に優れた耐熱耐寒性、耐⾷性、低摩擦性、電気的特性を持ちます。
またPFAと同様に、官能基に酸素を含んでいるのでフィルムのような成形品の場合は無色で透明性がありますが、厚みを持つと半透明になります。
4.ETFE=テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体EP
名称:四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂 (エチレン四フッ化エチレン共重合樹脂)
化学名:エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー (Ethylene-tetrafluoroethylene)
商品名:テフゼルETFE(ケマーズ)、ネオフロンETFE(ダイキン⼯業)、フルオンETFE(旭硝⼦)
化学式:
用途: チューブ、コーティング、ライニング、フィルム、電線被覆材など
概要: ETFEは、融点270℃の溶融加⼯・成形が可能な樹脂です。PTFE,PFA,FEPと比べると耐熱性や、耐薬品性が少し劣りますが、強度があり、耐クリープ性が良く機械的特性はPTFEや、PFA、FEPより優れています。電気絶縁性や、耐放射線性、耐薬品性、低温特性などの諸特性のバランスが良好です。
5.PVDF
名称: フッ化ビニリデン樹脂 (2フッ化)
化学名:ポリビニリデンフルオライド (polyvinylidene fluoride)
商品名:ネオフロンPVDF (ダイキン⼯業)、KFポリマー (クレハ)、ソレフPVDF・ハイラーPVDF (Solvay)
化学式:
用途: バルブ、ポンプ、化学装置部品、電気絶縁部品、コーティング、ライニング(半導体製造工場における熱超純水の送水ライン)、釣糸、弦楽器の弦
概要: PVDFは、機械的に強靭で、特に引張り強さ、圧縮強さとも優れています。耐候性、耐薬品性も良好で、溶融加⼯・成形が可能です。機械的性質が優れている一方、極性溶剤に対して侵されやすく、酸化性の強い雰囲気に弱く、PTFE,PFA,FEPなどのパーフルオロ系の樹脂と比較して耐薬品性は劣ります。
また、PVDFは強誘電性のポリマーであり、圧電性や焦電性を示すことからセンサなどに使用されています。
6.PCTFE
名称: 三フッ化塩化エチレン樹脂 (3フッ化)
化学名:ポリクロロトリフルオロエチレン (polychlorotrifluoroethylene)
商品名:ネオフロンPCTFE (ダイキン⼯業)
化学式:
用途: ⾼圧⽤ガスケット、機械部品、耐⾷⽤部品、のぞき窓、コーティング、ライニング、耐⾷包装フィルム
概要: PCTFEは、常温での機械的特性、低温での寸法安定性、耐衝撃性に優れています。耐食性に優れ、透明なのでのぞき窓などに用いられます。
PCTFEの耐薬品性は、PTFEと比較するとやや劣るものの、他の樹脂と比較するを優れています。紫外線によりほとんど劣化せず、また耐候性、耐放射能性に優れており、あらゆる樹脂の中で水蒸気透過性が最も小さく、ガスの透過性も非常に低いです。
優れた低温特性を生かした液体窒素や液体酸素、液化天然ガス用のバルブのシールや、コンプレッサ、ポンプの部材に用いられます。
7.ECTFE
名称: クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体
化学名:クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体 (chlorotrifluoroethylene ethylene)
商品名:ヘイラーECTFE (Solvay)
用途: 米国製プレナムケーブル(高難燃性ケーブル)
概要: ECTFEは、機械的特性や化学的特性、電気特性に優れており、溶融加工・成形が可能です。連続して高温にさらされても、優れた機械的強度を損ないません。
主な用途は米国製の最高難燃度のプレナムケーブルで、国内ではあまり使用されていません。
主なフッ素樹脂の機械的特性のまとめ
表1にフッ素樹脂の機械的性質をまとめます。
表1 フッ素樹脂の機械的性質
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参考文献
Pcking Land 様HP:https://www.packing.co.jp/PTFE/ptfe-pfa-fep-pctfe.htm
湯本電機工業(株)様HP:https://www.yumoto.jp/material-onepoint/plastic-ptfe-pfa-pvdf
明興工業(株)様HP:https://www.meikou.jp/technology/compression-molding.html#:~:text=%E3%83%91%E3%82%A6%E3%83%80%E3%83%BC%E7%8A%B6%E3%81%AE%E6%A8%B9%E8%84%82%E3%82%92,%E3%81%A7%E3%81%AE%E6%88%90%E5%BD%A2%E3%81%AF%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82
最近のフッ素樹脂について 小山利一、里川孝臣 有機合成化学 Vol.31 No.6 (1973)
図表
各種化学式: Wikipedia, 湯本電機工業(株)様HP
図1 フッ素樹脂の機械的性質 参考: 湯本電機工業(株)様HP, 有機合成化学 Vol.31 No.6
ORG:2020/7/29