4.3 低圧鋳造法(low pressure casting process)

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4.3 低圧鋳造法(low pressure casting process)

低圧鋳造法は、ほとんどアルミニウム合金鋳物に適用されています。重力金型鋳造とほぼ同程度の利用度です。ダイカストを含むアルミニウム合金全鋳造品生産量のうち18~20%が低圧鋳造法により生産されています。最近は、マグネシウム合金への適用も進められています。
図4.3.1に、低圧鋳造法の装置を示します。

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1) 密閉された溶湯保持炉内の溶湯表面に、0.01~0.06MPaの低圧の空気圧を付加して、溶湯中のストーク(給湯管)を通して溶湯を上部の金型内に流入させて、鋳造し低圧力下で凝固させます。
2) 湯口部の凝固が完了した時点で、加圧を停止しストーク内の溶湯をるつぼに戻します。

原則的には、押湯が無いので、鋳造品の鋳造歩留りが高く、重力金型鋳造の40~70%に対して、低圧鋳造では90%以上になります。砂中子を用いた薄肉の複雑形状の鋳造もでき、内部欠陥が少なく、寸法精度、鋳肌面の出来栄えが優れています。
加圧は3段階で行われます。
溶湯がストーク中を上昇し、湯口にまで到達する段階を第一段加圧、
さらに、溶湯が金型キャビティ内を流動する段階を第二段加圧、
溶湯の充てん完了後も加圧して凝固収縮に対する押湯効果をもつ段階が第三段加圧
になります。各段階での昇圧速度と加圧力の制御が重要になります。
ストークは、一般には鋳鉄製が多く、溶湯侵食防止のため塗型されますが、溶湯の鉄汚染の問題があり、最近ではセラミックス製に置き換えられています。
ストークを通しての溶湯供給が、押湯を兼ねるため、湯口の位置や数が制約され、重力鋳造に比べて自由度が少ないです。また、指向性凝固や湯回りを完全にするために金型温度が高くなる傾向があり、凝固完了までの時間がかかり、鋳造サイクルが長くなります。そのため複数個取りや鋳造機の自動化が進められています。
近年、冷却速度を上昇させ鋳造サイクルを上げる方法として、不活性ガスで保持炉と金型内を満たした不活性雰囲気低圧鋳造法や、鋳型内を減圧して溶湯をストークから吸引して充てんする差圧吸引鋳造法が開発されています。

 

 

参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章

引用図表
図4.3.1  低圧鋳造法                機械工学便覧 第6版 β03-02章

 

2016/11/4
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。