2.5.4 回路の圧力損失とポンプ吐出し圧力

2.5.4 回路の圧力損失とポンプ吐出し圧力(pressure loss of hydraulic circuits and discharge pressure of pump)

 

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1. 油圧回路の圧力損失の求め方

実際の油圧回路で、回路の損失を求めるためには、以下に示す項目が決められていなければなりません。

(1)油圧回路
(2)回路を構成する機器の種類と寸法
(3)配管の径・長さ、曲がりや分岐の数、油圧ホースの径、長さ
(4)油圧作動油の種別
(5)運転時の油温

などです。

今、シリンダ駆動回路(開回路)を回路例(図2.5.4.1)として、圧力損失を求めます。

この油圧回路の構成部品に記号を付けると、
①機器:サクションフィルタ
②配管:サクションフィルタから油圧ポンプ吸込口まで
③機器:油圧ポンプ
④配管:油圧ポンプ吐出口から切換弁入口まで
⑤機器:切換弁
⑥配管:切換弁出口から油圧シリンダ入口まで
⑦機器:油圧シリンダ
⑧配管:油圧シリンダ出口から流量調整弁入口まで
⑨機器:流量調整弁
⑩配管:流量調整弁出口から切換弁戻り入口まで
⑪機器:切換弁
⑫配管:切換弁戻り出口からタンクまで

 

図2.5.4.1 油圧シリンダ駆動回路   

これらを大別すると、配管部分と機器部とに分けることができます。

1.1 配管部分

配管部分は、上記の②,④,⑥,⑧,⑩,⑫ が該当します。

基本的に配管部分の圧力損失は、
(1)流量と、管・ホース寸法から求めた管内径断面積で、管内流速を求めます。
(2)油圧作動油の温度-動粘度図表、及び温度-密度線図から、運転時の油温に対する作動油の動粘度と密度とを求めます。
(3)管内流速と、動粘度・管内径とからレイノルズ数を求め、層流か乱流かを見極めます。続いて、管摩擦係数を求めます。
  リンク先;管摩擦係数(Moody 線図)
(4)管の圧力損失を求めます。
  リンク先:回路の諸損失
(5)曲がりや分岐は、相当管長の考え方で管の長さに変換して、圧力損失を求めます。

1.2 機器部

配管部分は、上記の①,③,⑤,⑦,⑨,⑪ が該当します。このうち、③の油圧ポンプは、内部では圧力損失が発生しますが、油圧回路に圧力と流量を供給するので、油圧回路の設計では圧力損失を考える機器からは対象外になります。

機器については、それぞれ機器の製造メーカのカタログ・技術資料などにより、設計流量における損失圧力を求めます。

⑨の流量調整弁については、圧力補償機構が正しく作動するために、流量調整弁の入口と出口との圧力差を、0.7~1MPa程度必要であるとして計算をすすめます。

リリーフ弁については、主回路の圧力がリリーフ弁の設定圧力以上に上昇した時に、作動油が通過するのみで、全量圧力損失になるので、主油圧回路の圧力損失を計算する際には、計算対象から除外します。

 

2. 油圧ポンプの吐出し圧力

油圧ポンプが必要とする吐出し圧( p \)は、油圧シリンダを駆動するのに必要な圧力\( p_{ 1 }‘ \)に、油圧ポンプ吐出し口からタンクに戻るまでの全圧力損失\( \Delta p \)を加えたものになります。

\( p = p_{ 1 }’ + \Delta p \)   (式2.5.4.1)

油圧ポンプの動力は、油圧ポンプ吐出し圧力\( p \)に、油圧ポンプ吸込側の損失圧力\( \Delta p’ \)を加えた圧力に、油圧ポンプの吐出し量\( Q \)を乗じたものが、ポンプ出力動力\( L_{ p } \)になります。

さらに、ポンプ出力動力\( L_{ p } \)を、ポンプの全効率\( \eta_{ p } \)で除したものがポンプ軸動力\( L_{ s } \)になります。

\( L_{ p } = ( p + \Delta p’ ) Q \)   (式2.5.4.2)

\( L_{ s } = \displaystyle \frac{ L_{ p }}{ \eta_{ p }} \)   (式2.5.4.3) 

さらに、ポンプ軸動力\( L_{ s } \)とアクチュエータ(油圧シリンダ)が外部に供給している動力\( L \)との比が、油圧装置の全効率\( \eta \)になります。

\( \eta = \displaystyle \frac{ L }{ L_{ p }} \times 100 (%) \)  (式2.5.4.4)

ここで、
\( p \):油圧ポンプが必要とする吐出し圧力(MPa)
\( p_{ 1 }’ \): 油圧シリンダを駆動するのに必要な圧力(MPa)
\( \Delta p \):油圧ポンプ吐出し口からタンクに戻るまでの全圧力損失(MPa)
\( \Delta p’ \):油圧ポンプ吸込側の圧力損失(MPa)
\( Q \):油圧ポンプの吐出し量(L/sec)
\( L_{ p } \):油圧ポンプ出力動力(kW)
\( L_{ s } \):油圧ポンプ軸動力(kW)
\( L \):アクチュエータが外部に供給している動力(kW)
\( \eta_{ p } \):ポンプの全効率(-)
\( \eta \):油圧装置の全効率(-)

 

 


 

まとめ

・油圧回路の圧力損失は、配管部分と機器部とに分けて、それぞれの圧力損失を求めます。

 

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参考文献
油圧教本[増補改訂版]   塩崎義弘他  日刊工業新聞社  S53年
実用油圧ポケットブック(2012年版)   (一社)日本フルードパワー工業会  2012年

引用図表
図2.5.4.1 油圧シリンダ駆動回路   ORIGINAL

 

ORG:2021/08/25