6.2 旋盤の構造(Structure of lathe)

6.2 旋盤の構造(Structure of lathe)

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本項では、工作機械の内で、最も広く用いられている普通旋盤(lathe)についてその構造について見ていきましょう。

普通旋盤の外観と各部の名称を図Ⅱ.6.2.1に示します。この旋盤は電動機直結形旋盤(lathe of motor driven type)と呼ばれる、もっとも基本的な形のものです。

図Ⅱ.6.2.1 普通旋盤

旋盤は、工作物(work)をチャックでつかんで、これに回転運動を与える主軸台(headstock)がベッド(bed)上に固定されています。これに相対して工作物の他端を支持する芯押台(tailstock)をベッドの上に載せています。さらにベッド上を摺動することのできる往復台(carriage)があり、これにバイトを取付ける刃物台(tool post)を載せます。
ベッドは、適切な高さに保つ脚部で支持されています。

1. 主軸台

主軸台の外観の一例を、図Ⅱ.6.2.2に示します。また、構造の一例を、図Ⅱ.6.2.3に示します。軸台は工作物にチャックを通じて回転を与える役割があります。主軸台の内部は、電動機の回転を主軸に伝達するベルト、主軸の回転数を変換する歯車、往復台に運動を与える歯車などにより構成されています。主機句回転数や送り量の設定は、歯車の組合せにより決められます。

図Ⅱ.6.2.3(a)の例では、電動機は6段変速ですが、これにバックギアを使用して、低速部にさらに6段を加えて12段にします。また、図Ⅱ.6.2.3(b)の例では、ベルト車軸Ⅰから中間歯車軸Ⅱ、Ⅲを経て、主軸に動力が伝達されるまで、歯車のいろいろな組合せにより適当に変換されて(本図は12段)、必要な主軸回転数が得られます。軸の一部にはスプライン軸が用いられて、歯車を掛け換える際には、歯車を滑らせます。

なお、この主軸台から、往復台の自動送り用の送り軸を回す運動や、ねじ切り用の親ねじを回す運動も、歯車列で取られます。

主軸回転数の変化のさせ方は、通常等比級数が採用されています。主軸回転数の速度比の例を表Ⅱ.6.2.4に示します。

この他、歯車列により変速を行う全歯車式旋盤(all gear lathe) の他、無段変速機を使用した機構の旋盤もあります。

図Ⅱ.6.2.2 旋盤主軸台の例

図Ⅱ.6.2.3 旋盤主軸台の内部例

表Ⅱ.6.2.4 旋盤主軸回転数の速度比

2. 心押台

心押台の一例を、図Ⅱ.6.2.5に示します。また内部の構造の一例を図Ⅱ.6.2.6に示します。

心押台は、ベッド上に主軸台に対向して設置されて、ベッド上を前後に移動できます。また、工作物の長さに応じてベッド上の任意の位置に固定できるようになっています。心押台の心押軸にセンタを取付けて工作物を支持したり、ドリルを取付けて穴加工を行うこともできます。チャックと心押軸の両方で工作物を支持する(両端支持といいます)ことで、高い加工精度が得られます。

図Ⅱ.6.2.5 心押台の名称

図Ⅱ.6.2.6 心押台の構造

3. 往復台

図Ⅱ.6.2.7に往復台の例を示します。また、内部構造の例を図Ⅱ.6.2.8に示します。往復台はバイトに取付ける刃物台に縦送りを与えるもので主軸台と心押台の中間に位置します。往復台は、サドル、エプロン、刃物台、刃物台縦送り台、刃物台横送り台から構成されています。

図Ⅱ.6.2.7 往復台の名称

図Ⅱ.6.2.8 往復台の構造

4. ベッド

ベッドは、主軸台や心押台、往復台やその他の付属装置を支持する役割に加えて、切削の際に発生する大きな切削抵抗を受ける必要があり、十分な剛性が要求されます。また、加工物の出来栄えを確保するため、たわみや振動をできるだけ抑える必要があります。

材質は、一般的には高級鋳鉄が使用されています。摺動面だけを火炎焼入れしたり、焼き入れした鋼板を貼付けたりして、耐摩耗性を付与する場合もあります。また、鋳造品を使用する場合は、熱処理により内部応力を十分に除去するようにしています。昔(1980年代頃まで)は、日本でも枯らし(seasoning)と呼ばれる、鋳造品を屋外に10年単位で放置して、自然に応力を除去する方法が取られていましたが、熱処理技術の向上、資本の回転効率等の理由から枯らし技法は行われなくなっているようです。

また、ベッドのすべり面(slide way) は平削りした後、きさげ仕上げまたは研削仕上げが施されます。

 

 

 

参考文献
機械工学便覧第6版β05-09章    (社)日本機械学会
新編機械工作下巻     養賢堂
絵とき切削加工基礎のきそ     海野邦昭  日刊工業新聞社
三菱マテリアル工具カタログ

 

引用図表
[図Ⅱ.6.2.1] 普通旋盤   機械工学便覧 第6版
[図Ⅱ.6.2.2] 旋盤主軸台の例    絵とき切削加工基礎のきそ
[図Ⅱ.6.2.3] 旋盤主軸台の内部例   新編機械工作下巻
[表Ⅱ.6.2.4] 旋盤主軸回転数の速度比   新編機械工作下巻
[図Ⅱ.6.2.5] 心押台の名称     絵とき切削加工基礎のきそ
[図Ⅱ.6.2.6] 心押台の構造   新編機械工作下巻
[図Ⅱ.6.2.7] 往復台の名称   新編機械工作下巻
[図Ⅱ.6.2.8] 往復台の構造   新編機械工作下巻

 

ORG:2017/10/9