3.5 境界潤滑と混合潤滑

3.5 境界潤滑と混合潤滑(Boundary lubrication and mixed lubrication)

スポンサーリンク

 

前項まで、主として境界摩擦状態について述べましたが、潤滑剤で潤滑された通常の摩擦面は、乾燥摩擦状態と、境界摩擦状態、さらに流体摩擦状態が混在している混合潤滑状態となります(図3.5.1)。この状態については、3.1項でも少し述べさせて頂きました。

図3.5.1 混合潤滑状態モデル

今、混合摩擦状態での摩擦面の負荷状態をモデル化したものを、図3.5.2に示します。これは、故曽田博士による混合潤滑面の解析モデルです。

図3.5.2 混合潤滑面の解析モデル

 

ここで、

P: 潤滑面に負荷される荷重

xi: 流体潤滑、境界潤滑、および乾燥摩擦状態の各部分の荷重の分担の割合

μ:それぞれの状態での摩擦係数

添字fbd : それぞれ、流体潤滑状態,境界潤滑状態,乾燥摩擦状態を示す。

 

さらに、摩擦係数について、μ:混合摩擦の状態,μb’:真実接触を含む境界潤滑による摩擦係数、とすると、

     (式3.5.1)

  (式3.5.2)

 (式3.5.3) 

これらの関係が成立します。これらの式から、それぞれの潤滑状態の荷重分担割合を求めます。

   (式3.5.4)

   (式3.5.5)

        (式3.5.6)

 

これらの式に、それぞれの状態の摩擦係数の数値を仮定して、荷重分比率割合と摩擦により発生する熱エネルギーの割合をを計算した例を、表3.5.3に示します。

表3.5.3 荷重分担と発生熱エネルギー比の計算例

この計算例から混合潤滑状態では、

・乾燥摩擦部分の荷重分担xdは極めて小さいのに比較して、流体潤滑部分の荷重分担xfが大部分を占めていること。
・反対に、発生熱エネルギーは、流体潤滑部分の割合が小さいこと。

がわかります。

これより、混合潤滑においては、流体潤滑部分での荷重分担と摩擦の低減(発生熱が少ない)が大きく影響していることがわかります。

 

 

 

 

 

参考文献
トライボロジー入門   岡本純三 他   幸書房

 

引用図表
図3.5.1 混合潤滑状態モデル トライボロジー入門
図3.5.2 混合潤滑面の解析モデル トライボロジー入門
表3.5.3 荷重分担と発生熱エネルギー比の計算例 トライボロジー入門改

 

ORG:2018/10/22