5.5粘度分類と用途別潤滑油

5.5粘度分類と用途別潤滑油(Lubricants by Viscosity Classification and Application)

 

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粘度分類

潤滑油の粘度の分類については、大きく分けて工業用潤滑油と自動車用潤滑油に分けられます。

5.5.1. 工業用潤滑油

工業潤滑油は、動粘度でクラス分けされています。これは、これは粘度分類と言われているのですが、粘度グレードとその動粘度の範囲が規定されています(表5.5.1)。
粘度グレードが同じ場合でも、用途に応じて性質の異なる添加剤が用いられている油種が複数ある場合があります(表5.5.2)。
また、油圧作動油のように、JIS規格ではまだ決められていない油種もあります。

なお、現在のJIS規格(JIS K2001 「工業用潤滑油-ISO粘度分類」)では20種類定められていますが、昔は補助粘度グレードとして、多くの粘度グレードが市販されていました。


図5.5.1 工業用潤滑油の粘度グレード

 

表5.5.2 工業用潤滑油、粘度分類と規格油

 

5.5.2. 自動車用潤滑油

自動車用の油の代表としてエンジンオイル(内燃機関油)があります。エンジンオイルの粘度分類として、SAE(アメリカ自動車協会)の粘度分類が用いられます。
エンジンオイルは、数字にWの記号が付加された低温粘度特性を定めたものと、Wの記号が付加されていない数字だけの高温粘度特性を定めた、2系列の粘度グレードで規定されています(表5.5.3)。
多くの場合、Wの記号が付加された低温粘度グレードと、Wの記号がつかされていない高温粘度グレードとの両方の条件を満足するマルチグレード油が使用されます。

表5.5.3エンジン油のSAE粘度グレード

(1)低温粘度特性

低温冷間時(エンジンスタート時)の潤滑油の特性を示すものです。Wは”Winter grade” の略です。規格(JIS K2010、ISO/DIS 10369)では、0W,5W,10W,15W,20W,25Wの6つのグレードが規定されています。数値が小さいほど低温状態での粘度(粘性係数)が低く、いわゆる「軟らかいオイル」と呼ばれ、低温時のエンジンの始動特性はよくなります。

Wの記号がつく油種については、100℃での動粘度の最小値も規定されています。

(2)高温粘度特性

エンジン運転中の潤滑性の目安を示すものです。規格(JIS K2010、ISO/DIS 10369)では、20,30,40,50,60の5つのグレードが規定されています。100℃での粘度(動粘度)を規定しています。数値が大きいほど動粘度の範囲が高く、いわゆる「硬いオイル」と呼ばれるもので、耐摩耗性に優れます。

(3)シングルグレードとマルチグレード

気温やエンジン負荷のかけ方に変動が無い場合、オイル交換を適切に行える場合などは、用途に応じて低粘度特性を重視した10W,15WなどのW付きのものを、高粘度特性を重視した30,40,50を用いて、シングルグレードを使います。

一方、季節要因や、エンジン負荷のかけ方にバリエーションがある場合は、低温粘度特性と高温粘度特性の両方を規定したマルチグレード油を用います。

一般的によく見かけるのは、5W-20や10W-30などがあげられます。2つの数字の幅が広いほど使用可能な温度範囲が広くなります。

図5.5.4に外気温度によるエンジンオイルの適用例を示します。

図5.5.4外気温によるエンジンオイル適用例

 

 

 

 

参考文献
トライボロジー入門  岡本純三他  幸書房
潤滑故障例とその対策     日本潤滑学会  養賢堂
JIS K2001-1993:工業用潤滑油―ISO粘度分類   日本産業規格
JIS K2010-1993:自動車エンジン油粘度分類   日本産業規格
エンジンオイルの粘度について 【通販モノタロウ】HP   https://www.monotaro.com/note/productinfo/enginoil_nendo/

 

引用図表
図5.5.1 工業用潤滑油の粘度グレード   出典:JIS K2001-1993
表5.5.2 工業用潤滑油、粘度分類と規格油   ORIGINAL
表5.5.3エンジン油のSAE粘度グレード   出典:JIS K2010-1993
図5.5.4外気温によるエンジンオイル適用例   参考:https://www.monotaro.com/note/productinfo/enginoil_nendo/

 

ORG:2023/02/01