10.5 テルミット溶接(Thermit welding)

10.5 テルミット溶接(Thermit welding)

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テルミット溶接は、粉末のアルミニウムと酸化鉄とを混合したものを、反応容器(るつぼ)内に入れて、過酸化バリウムやマグネシウムなどの混合粉末をのせて点火します。そうすると、酸化還元反応により、強烈な発熱反応を起こして、純粋な溶融鉄とアルミナに変換されます。この反応をテルミット反応といい、これを鉄鋼の溶接に応用したものがテルミット溶接です。

テルミット反応は、以下の3つのパターンの反応があります。
3Fe3O4 + 8Al → 9Fe + 4Al2O3 + 702.5kcal
Fe2O3 + 2Al → 2Fe + Al2O3 + 851.5kcal
3FeO + 2Al → 3Fe + Al2O3 + ?

主には、Fe2O3とAlとの反応です。

テルミット溶接は、車軸や、船舶の船尾材、鉄道のレールの溶接など、断面の大きな部材の突合せ溶接に用いられます。

ここでは、鉄道総合技術研究所の山本先生が著わされた、レールの溶接方法の工法として使用されているテルミット溶接法について、引用します。元の論文のURLは以下に示します。

テルミット溶接法は、使用する機器が簡便であり、また溶接時間が比較的短いことから、列車運行時間外に実施される線路内溶接の手段として適している。現在日本では、1979 年にドイツより導入された短時間予熱による迅速テルミット溶接法(呼称:ゴールドサミット溶接法)が主に適用されている。当法で JIS60kg 普通レールを溶接する際の作業工程は以下のとおりである。

1.レールを切断した後、25mm 程度の間隔を設けてレールをセットする。
2.レールにルツボ(反応容器)および予熱バーナー設置用のジグを取り付ける。
3.レールにモールドを取り付け、砂詰めを行う。
4.ルツボをモールド上部に設置した後、ルツボ内へテルミット溶剤を装填する。
5.モールド内に予熱バーナーを差し込み、予熱作業を実施する(2 分間)。
6.予熱作業後、モールド上部にプラグを差し込む。その後、ルツボ内のテルミット溶剤に着火することでテルミット反応を開始させ、溶鋼をモールド内へ注入する(図 9)。
7.溶鋼注入から 4 分程度静置した後、モールド上部を倒し、レール上方の溶接金属を押抜きせん断機で除去する。
8.レール頭部の仕上げ作業を行い、溶接部の冷却後、仕上り検査を実施する。

レールのテルミット溶接

テルミット溶接法では、溶接工程において比較的大きい余盛(コブ)を形成させるが、レール腹・底部については余盛をそのまま残した状態で実用に供するため、疲労強度が他の溶接部に比べて劣っている。

引用論文URL:https://www-it.jwes.or.jp/we-com/bn/vol_8/sec_1/1-1.pdf
“日本におけるレールの溶接”  公益財団法人鉄道総合技術研究所 軌道技術研究部 レール溶接研究室
山本 隆一
WE-COMマガジン 第8号 (2013年4月)