1.硬さとは

1.硬さとは(What is hardness?)

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1.硬さとは

工業的、特に機械の製作の分野では、硬さは、金属材料、非金属材料を問わず、材料を評価するうえで、引張試験と、同じくらい重要な役割があります。引張試験を行うには、大掛かりな装置が必要ですが、硬さ計は、
はるかに安価です(それでも、100万円単位はしますが)。
硬さという概念は、材料の物理的特性に広範囲に関連しています。例えば、磨耗に対する抵抗や、引っかきに対する抵抗、弾性係数、耐力(降伏点)、破壊強さ、展延性、ねばり、もろさなどの性質と関係の深い尺度を示すので、これらの代用特性として、いろいろな硬さの測定方法が実用化されています。
図1にミツトヨのカタログに示されている硬さの種類を示します。

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図1 硬さの種類   出典:ミツトヨカタログ

ここで注意しなくてはならないのが、硬さは、長さや、時間、質量のような物理量では無いことです。硬さは、他の機械特性と同様に工業量(物理量の組合せで定義される量)、または比較値(モース硬度など)になります。
そこで、ある物体の硬さとは、”対象となる物体が、他の物体により変形を与えられた際に示す抵抗の大小を表す尺度” とするところが妥当なところかと思われます。

硬さを数値化して示す試験方法は、変形の与え方、抵抗の表わし方に多種多様な方式が考案されています。それでは少し見ていきましょう。

 

2. 引っかき硬さ

もっとも古くから使われている硬さは、引っかき硬さです。

(1)モース硬度(Mohs hardness)

中学校の教科書にも載っていますが、モース硬度があります。モース硬度は、別の項で詳しく説明しますが、標準試料として10種類の鉱物からなるモース硬度計の、各鉱物との引っかき硬さの比較による相対硬さです。
もっとも軟らかい滑石を1、最も硬いダイヤモンドを10としています。
主に鋼物材料を、それぞれ硬度の標準試料の鉱物で引っかいて、傷が付くか付かないかで、その材料の硬さを知ります。
モース硬度には、15種類の鉱物の標準試料からなる、新モース硬度もあります。
ここで硬さと、硬度を混在して使用しましたが、硬さは一般的には工業材料の硬度を示す場合に使われます。モース硬度は、主に鉱物の硬さを調べるのに使用されますので、硬度というタームを使用します。この他、水などの性質、硬水、軟水の程度を示す指標も硬度といいます。

モース硬度は、工業的には使用されることはありませんが、屋外で色々な物の硬さを簡易的に判断する場合には面白いと思われます。

学校でも使用されるものなので、ネットで販売しているところもあります。一度訪問されても面白いと思います。

(2)やすり硬さ(file hardness)

やすり硬さとは、やすりが滑る材料はやすりより硬い、やすりが食い込む材料はやすりより軟らかいとの観察結果を利用したものです。これもモース硬度と同じで引っかき硬さの一種です。

一般に市販されている製品は、HRC40~65まで、HRC5刻みの6本セットです。他のポータブル硬さ計と比較しても安価に、工業的な硬さの推定が可能です。

昔は、どこの現場でもありましたが、徐々に硬さ試験機などの精密に測定できる検査機器に置き換わっています。

ただし、大型の工作物や、屋外設置構造物のように、硬さ試験機にのせられないものなどには今でも使用されています。
また、切削加工前に被削材の硬さをチェックする場合に便利です。

(3)マルテンス硬さ(Martens hardness)

これは形状が対面角90°のピラミッド状のダイヤモンド圧子の先端で、検査するものを引っかきます。硬さは0.01mm幅のひっかき傷を生じさせる荷重で示します。記号はHMです。

傷の大きさが小さいので、たとえば安全カミソリの刃などの硬さを検査するときに使用されます。

 

3.押込み硬さ

工業的に、材料特性の評価として最もよく使用されるものです。金属材料や、エラストマーなど色々な材質の測定に使用されます。

(1)ブリネル硬さ(Brinell hardness)ロックウェル硬さ(Rockwell hardness)ビッカース硬さ(Vickers hardness)

金属材料に対して、JISで決められているものには、ブリネル硬さ、ロックウェル硬さ、ビッカース硬さがあります。
それぞれ、圧子の形状や、圧痕の測定方法により差異があります。これらの測定値には互換性がり、換算表もあります。

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表2:押込み硬さ試験方法の比較   ORIGINAL

(2)デュロメータ硬さ(Shore durometer)

デュロメータ硬さは、ゴムやプラスチックなどのエラストマーの硬さを測定するのに用いられます。
デュロメータ硬さ計も、被測定物の表面に圧子(頂角35°の円すい)を押し込んで、被測定物を変形させて、その変形量(押込み深さ)を測定、数値化します。

押込み荷重を得る方法としては、スプリングを用いた「デュロメータ硬さ」と、分銅等による一定の静荷重を用いた「国際ゴム硬さ(IRHD;International Rubber Hardness Degree)」が一般的です。この2つの硬さ試験のうちデュロメータは、ハンディタイプの簡便な硬さ計ですので、非常に普及しています。

 

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4.反発硬さ(Rebound hardness)

反発硬さは、被測定物に圧子を落下させてその時の反発状態により材料の硬さを示すものです。反発硬さとして、JISに規定されているのは、ショア硬さです。

・ショア硬さ

ショア硬さ試験機の原理は、先端にダイヤモンドの半球を取り付けたハンマを試料に対して直角にして落とし、その跳ね上がりの高さを測定して、元の高さで割った値で算出されます。跳ね上がりの高さが高いものほど硬いということになります。原理的に100を超えることはありません。
ショア硬さ試験機には、跳ね上がりの高さを直接目盛りで読むC形とダイヤルの指示を読むD形とがあります。使いやすいのはD形といわれています。

ショアの測定は、製品に傷がつかない特徴があります。また、他のJIS規格に準拠する計測器と比較して安価なので、現場レベルや、小企業でよく使用されています。

 

5 硬さと硬度

硬さと硬度は、どちらも物体の硬さの程度を意味する言葉ですが、硬度には水の性質である軟水・硬水の程度を示す、水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンの量の意味に使用されます。これを区別するために物体の硬さの程度を示すには硬さを用いるのが一般的です。JIS規格では硬さで統一されます。ちなみに塗装膜に強さをあらわす場合、硬度の異なる鉛筆を使って測定しますが、この場合は硬度(鉛筆硬度)を使用しています(JIS K5600を参照してください)。

 

 

 

 

参考文献
ミツトヨ硬さ計カタログ:  https://www.mitutoyo.co.jp/products/katasa/menu/katasa_teigi.pdf

引用図表
図1:硬さの種類  https://www.mitutoyo.co.jp/products/katasa/menu/katasa_teigi.pdf
表2:押込み硬さ試験方法の比較   ORIGINAL

Corr:2024/02/12
ORG:2016/11/23