ペロブスカイト太陽電池の現在位置

ペロブスカイト太陽電池の現在位置:2025.4
 (Current status of perovskite solar cells)

 

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本コンテンツは、2025年4月時点で、chatGPTのDeep Reserchにより生成したコンテンツを基本にしています。

1. 現在の技術的な到達点:2025年4月

1.1 発電効率(変換効率)

ペロブスカイト太陽電池は年々変換効率を向上させており、単接合セル(ペロブスカイトのみ)の研究記録は 26~27% に達しています。さらにシリコンとのタンデム型では、中国・隆基緑能科技(LONGi)社が34.6%という世界最高効率を発表するなど、単接合シリコンの理論限界(約29%)を超える成果が出ています。実用化レベルでも、英オックスフォードPV社が住宅用60セル(約1.6㎡)モジュールで26.9%の世界記録を樹立し(Fraunhofer ISE認証)、標準的なシリコンパネル比で20%以上高出力のタンデム製品を開発中です 。
一方、柔軟なフィルム型ペロブスカイトは現時点で変換効率10~20%程度の試作例が多く、例えば東芝は16.6%**のフレキシブルセルを達成しています。
総じて、研究段階の効率ではシリコン系に匹敵あるいは凌駕しつつあり、タンデム化による40~50%台への可能性も視野に入っています。

図 主要太陽電池とペロブスカイト太陽電池の主要指標比較
 出典:三井物産戦略研究所 技術・イノベーション情報部コンシューマーイノベーション室 趙健

1.2 耐久性(寿命・安定性)

耐久性の向上は、ペロブスカイト実用化への最大課題ですが、近年著しく改善しています。
積水化学は封止技術の応用で10年相当の耐用年数を実現し、2025年までに20年相当の耐久性達成を目指すと発表しています。
各国でIEC規格(国際標準の寿命試験)適合を目標に据えた研究が進んでいます。
中国のGCL社は、開発モジュールがIEC 61215/61730規格に合格し「シリコンと同程度の劣化パターン」を示したと報告しています。同社はペロブスカイト単独19%、タンデム26%のモジュールを製作し、2023年に世界初の1MW実証プラントを稼働させるなど実環境での長期テストを開始しています。
研究レベルでも、劣化原因の解明と安定化処理(結晶構造の工夫、封止材改良など)により1000時間連続照射で初期性能98%維持といった報告も出てきました。今後も耐熱・耐湿シール技術の改良や無鉛化など、安全性も含めた寿命向上が進む見通しです。

1.3 軽量性(単位出力あたり質量)

ペロブスカイト太陽電池の最大の長所は、軽量性です。セル自体は薄膜のため、従来の結晶シリコンパネルに比べて質量は約1/10程度と圧倒的に軽いとされています。一般的なシリコンパネルが1m2あたり12~15kgなのに対し、ペロブスカイト太陽電池は1m2あたり1~4kg程度と報告されています。この軽量性を利用して、地震時の荷重制限でシリコン系の太陽電池設置が難しかった古い建物の屋根や体育館、ビニールハウスの天井、ドローンや電気自動車の車体など、設置場所の自由度が飛躍的に高まります。またフレキシブル基板上に形成できるため曲面や壁面への貼付けも可能で、建築材一体型太陽電池(BIPV)として窓ガラスや外壁そのものに組み込む応用も期待されています。単位出力あたり質量の指標で見ても有利で、輸送・施工コストの削減や、緊急時にロール状パネルを持ち運んで展開するといった使い方も現実味を帯びています。

 

2. 日本企業ごとの取り組み状況

日本では素材・化学メーカーから電機メーカーまで多様な企業がペロブスカイト太陽電池の開発に参入しています。それぞれフィルム型・ガラス型・タンデム型など注力分野に特色があり、政府の支援(NEDOやグリーンイノベーション基金)を受けつつ試作と実証が活発です。主要企業の最新動向をまとめます。

図 ペロブスカイト太陽電池の種類 出典:次世代型太陽電池戦略 令和6年11月

2.1 積水化学工業 (Sekisui Chemical)

・ フィルム型ペロブスカイト太陽電池の先行企業です。樹脂フィルム上にペロブスカイト層を形成した軽量フレキシブルパネルを開発。液晶用封止材技術を応用して少なくとも10年の耐久性を実現し、実証実験も進めています。2024年には2025年までに20年相当の耐久を達成する方針を表明しています。
・ ロール・ツー・ロール方式による効率的製造技術は確立していますが、2025年中に現有設備での事業化を進めるとニュースリリースされています(2024/12/26)。経産省GI基金を活用して、大阪府・堺市の旧シャープ工場設備を取得して量産ラインを整備中です。2027年五10MW製造ライン稼働、2030年にはGW級の製造ラインの構築を目指しています。
・ 既に国内外で多数の実証案件を推進しており、ビル外壁への設置(本社ビル改修で国内初実装)、高層ビル壁面でのメガソーラー計画(世界初)、ガソリンスタンドの屋根やタンク壁面、高速道路の防音壁、農業用ハウス(営農型)、港湾施設(東京都との実証で国内最大規模を設置)、浮体式洋上発電、学校体育館の屋根、風力発電機の塔への巻き付け設置など、設置場所を選ばない薄く曲がる特性を活かしたプロジェクトが次々と行われています。
直近では、2024年12月には銀行(三菱UFJ銀行)店舗の窓ガラスにフィルム太陽電池を貼付けて国内初の実証開始、また2025年4月に始まった大阪・関西万博会場、西ゲート・バスシェルターに設置されるなど、実用化へのステップを着実に歩んでいます。

図 フィルム型ペロブスカイト太陽電池  出典:https://www.sekisui.co.jp/news/2022/1377721_39136.html

2.2 東芝 (Toshiba)

・ タンデム型とフィルム型の両面で研究を進めています。東芝エネルギーシステムズは2020年からペロブスカイト/シリコンの二端子タンデムセル開発に注力しており、変換効率16.6%(ペロブスカイト単接合セルとして当時世界最高;2022年9月時点)を達成した実績があります。このセルは「軽い・薄い・曲がる・割れない」という特徴を備え、従来困難だった工場や体育館の屋根、ビル壁面への設置を可能にするポテンシャルが示されました。
・ 2024年には阪神高速会社との共同研究で国内初のタンデム型ペロブスカイト太陽電池実証実験を開始しました。ペロブスカイト+シリコンの一体型セルを用いたパネルを高速道路の高架下や建物壁面に設置し、同サイズのシリコンパネルと出力を比較する試みで、2025年末まで長期検証が行われる予定です。実証実験では、日向部分と日陰部分とでの発電特性や耐久性データを収集し、将来の実用化への課題抽出を進めています。
・ フィルム型についても開発を進めており、2023年2月には桐蔭学園・東急等が行う駅施設での共同実証向けに大面積フィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールを提供すると発表しました。これは東芝が試作した柔軟パネルを公共施設で検証する取り組みで、実用サイズでの発電データや施工方法の検討に貢献しています。東芝は蓄電池技術との組合せやリサイクル技術の研究にも注力しており、ペロブスカイト太陽電池の社会実装に向けた包括的な体制を整えつつあります。

2.3 パナソニックホールディングス (Panasonic HD)

・ パナソニックホールディングスは、建材一体型である「発電するガラス」に特化して、開発を進めています。パナソニックはペロブスカイト層をガラス基板上に直接塗布形成する独自手法を開発し、建築用の窓ガラスやカーテンウォール一体型の太陽電池を目指しています。ペロブスカイト層を板ガラスにコーティングすることで透明性と発電能力を両立させ、透過率やサイズをニーズに合わせて調整できるセミカスタム型BIPVとして市場参入を図っています。競合が少ない建材用途に絞る戦略で、重量物を載せられない建物でも窓そのものを発電化するソリューションを提案中です。
・ 2024年10月のCEATEC展示会で、実用サイズ(約1m×1.8m)のガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池を初公開しました。このパネルは高い透明度を保ちつつ発電可能で、「世界最高クラスの変換効率を実用サイズで達成した」としています。パナソニックは当初2028年までに事業化と計画していましたが、技術進展により目標を2年前倒しして2026年に量産化すると表明しました(2024年7月)。2024年中に試作ラインを立ち上げ、市販製品レベルの性能検証を進める計画です。将来的には複層ガラスやビル外壁パネルとして提供し、省エネ建築市場での展開を狙っています。

 

3. 海外企業ごとの取り組み状況(中国以外)

海外でもスタートアップから大手まで多数の企業がペロブスカイト太陽電池に参入し、各社が独自の強みを活かした開発競争を繰り広げています。欧米のベンチャー企業は大学の先端研究を起点に高効率セルを武器とするところが多く、既存太陽電池メーカーは次世代技術として買収・協業を進めています。主要企業の動向を紹介します。

3.1 オックスフォードPV (Oxford PV)

・ タンデム太陽電池のパイオニア : 英国のベンチャーで、ペロブスカイト層を既存シリコン電池に重ねるタンデム型に特化しています。2018年に変換効率29.52%のタンデムセルで世界記録を樹立して注目されました。
・ 世界最高効率モジュールの実現 : 2024年6月、同社のタンデムセルを用いたフルサイズ太陽電池モジュール(60セル・表面積1.6m2)が26.9%という驚異的なモジュール効率を達成しました。この結果は独Fraunhofer研究所でキャリブレーションされ、「世界最高効率のソーラーパネル」として発表されています。モジュールは約25kgとシリコン並みの重量ですが出力は同サイズシリコン板より20%高く、72セル版で最大545Wに達するとされています。
・ 商用化と量産投資 : ドイツ・ブランデンブルク州にて量産工場の建設を進めており、欧州のシリコン太陽電池生産ラインを改造してペロブスカイト層を追加する形で年数百MW規模の生産開始を計画しています。2023年には欧州投資銀行や大手化学メーカーから資金調達し、まず家庭用屋根向けパネルから市場投入予定です。

図 ペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池モジュール 出典:Image: pv magazine/Nicole Schaeffer

3.2 Saule Technologies (Sauleテクノロジーズ)

・ インクジェット印刷方式の草分け : ポーランドのスタートアップで、創業者オルガ・マリンキエヴィッチ氏がペロブスカイトインクを用いたインクジェット印刷製造技術を発明しました。2014年創業以来、小型軽量セルを次々開発し、世界初の工業的ペロブスカイト量産ラインを2021年に稼働させています。このパイロットラインではフレキシブルフィルム上に連続印刷でセルを形成でき、少量生産ながらIoT機器電源やウェアラブル用途に製品提供を開始しました。
・ IoT・BIPVへの応用展開 :高効率よりも低照度環境や曲面での発電に適した特性を活かし、従来電池が使いにくかった用途を開拓中です。2024年には日本のH.I.S.およびローソンと提携し、コンビニ店内の**電子棚札(電池レス電子ペーパー価格表示)にペロブスカイトセルを導入する実証を開始しました。また、2025年開催の大阪・関西万博では同社のフィルム太陽電池が会場のスマートポール(多機能街路灯)**に採用される予定で、実環境での耐久性や発電性能をアピールする場となります。Saule社は2024年に欧州発明家賞を受賞するなど国際的評価も高く、今後パイロットラインの拡張によってコスト低減と本格的市場投入を図る計画です。

3.3 First Solar (ファースト・ソーラー)

・薄膜太陽電池の巨頭 : アメリカのFirst Solar社は従来型のテルル化カドミウム(CdTe)薄膜太陽電池で世界最大手ですが、近年ペロブスカイトを組み合わせた次世代タンデムの研究開発に本格参入しました。2023年5月にはスウェーデンのペロブスカイト企業Evolar ABを買収し、その技術と人材を自社R&Dに取り込みました。
・ 研究施設とパイロットライン投資 : 同社は米オハイオ州に最先端の太陽電池R&Dセンターを開設し、タンデムセルの試作ラインを備えた大規模研究施設で開発を加速しています。ドイツの太陽電池研究所ZSWとも提携し、ペロブスカイト/薄膜CIGSやCdTeとのタンデム性能向上に取り組んでいます。First Solar社は「次世代タンデム技術が将来の太陽電池市場を定義する」と述べており、2030年代に向けて変換効率30%以上・低コストの新製品創出を目指しています。現時点で商用ペロブスカイト製品はありませんが、シリコンフリーのタンデムパネル実現に向けたキープレイヤーとして注目されています。

 

4. 中国における開発動向

海外勢として特筆すべきは中国企業の急速な追い上げへの懸念です。前述のように隆基緑能科技がタンデムセル効率の世界記録を打ち立てたほか、保利協鑫エナジー(GCL)や仁烁光能(Microquanta)などが巨額投資でパイロット生産ラインを構築しています。GCLは100MW規模の試験生産ラインを運用しつつ、2023年に純ペロブスカイトモジュールだけで1MWの実証ソーラー発電所を建設するなど、大面積モジュールの実地検証で先行しています。その純ペロブスカイトモジュールは効率19%で、さらにシリコンと貼り合わせたタンデムモジュールでは26%超を達成し、既に複数のIEC規格認証も取得済みです。中国勢は2025年頃からの量産開始を公言しており、広東省や江蘇省で数百MW~1GW級のペロブスカイトパネル工場建設計画が進行中です。コスト面でも「シリコンモジュールの半分以下(W単価0.075ドル)の製造コストが可能」との試算が示されるなど、大規模生産による安価な製品投入が現実味を帯びています。こうした中国企業の台頭は、日本を含む各国メーカーにとって大きな脅威であると同時に、ペロブスカイト太陽電池の市場化を加速する原動力となっています。

 

5. まとめと展望

ペロブスカイト太陽電池は短期間で飛躍的な技術進歩を遂げ、高効率・軽量という特長からカーボンニュートラル実現の鍵を握る次世代太陽電池として期待されています。日本企業はフィルム型やガラス型など独自分野で存在感を示し、2025年前後の商用化を目指す動きが活発です。一方で海外ではタンデム型による記録更新や大型パネルの量産準備が進み、特に中国勢の追撃が熾烈です。今後は耐久性とコスト競争力の向上が成否を分けるポイントとなり、「安価でどこにでも貼れる太陽電池」というペロブスカイトのビジョンが現実のものとなるか、まさにこれから数年が正念場と言えるでしょう。

 

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参考文献
ペロブスカイト太陽電池のGW級量産に進む中国 ―タンデム型で変換効率30%突破を目指す―
     三井物産戦略研究所 技術・イノベーション情報部コンシューマーイノベーション室 趙健 2024年
ペロブスカイト太陽電池で目指すグリーンエネルギー社会の実現  若宮淳志 京都大学科学研究所
     (株)エネコートテクノロジーズ  未来社会創造事業 2023年
次世代型太陽電池戦略 令和6年11月 次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会

引用図表
図 主要太陽電池とペロブスカイト太陽電池の主要指標比較
 出典:三井物産戦略研究所 技術・イノベーション情報部コンシューマーイノベーション室 趙健
図 ペロブスカイト太陽電池の種類 出典:次世代型太陽電池戦略 令和6年11月
図 フィルム型ペロブスカイト太陽電池  出典:https://www.sekisui.co.jp/news/2022/1377721_39136.html
図 ペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池モジュール 出典:Image: pv magazine/Nicole Schaeffer

ORG:2025/05/04

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