水素利用クリーンエネルギーシステム

水素利用クリーンエネルギーシステム(clean energy system using hydrogen)

 


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管理人が、水素に最初に興味をもったのは、太田時男先生(元横浜国立大学学長)が書かれた「水素エネルギー」(講談社現代新書)です。いつ頃読んだかはあまり覚えていないのですが、流体工学を専攻していたのと、親戚の石油・ケミカル向けのターボポンプメーカに就職する予定でしたので、石油枯渇問題に興味があり、エネルギー問題全般に関心があったため、水素について書かれたこの本を読んで、すごくワクワクしたものです。

多分この本で読んだのだと思いますが、赤道付近で大量のいかだを浮かべ、太陽熱を利用した熱化学サイクルで水素を製造し、日本にタンカーで持ってくる話がありました。なぜかその頃は、そんなことをすると赤道付近でエネルギーを消費してしまい、日本に来る台風が減り、水不足になるのではと心配した記憶があります。まだ、今のように地球温暖化の話は一般的ではない時代でした。今でしたら赤道付近でネエルギーを消費すると、日本にお化け台風は来ないので、良いんじゃないかと、変な妄想をしています(今なら、太陽電池かな)。

妙に長い妄想を述べてしまいました。ここからが本文です。

 

水素を燃焼すると、排出される物質は水だけです。石油や天然ガス、石炭などの炭素を含む燃料は、CO2をはじめNOx、Soxと呼ばれる環境に悪い影響を与える物質を発生するのに対して、水素の燃焼では、原則として環境負荷を与える物質が発生しないことから、ゼロエミッション燃料として、期待されています。また、燃料電池のように水素を反応させることにより、燃料から直接的に発電することにより、熱などの中間のエネルギー形態を経ずに、電気を得ることができます。
このように水素は、エネルギーマテリアルとして、非常に興味がある物質です。

しかし、水素は非常に化学的活性が強く、地球上では単体として存在しません。従って、何らかの原料から製造しなければならない二次エネルギーになります。古くから水素を生成する方法として知られていたのは、水の電気分解や、石油精製に伴う副生ガスとしてでした。

現代は、電気エネルギーを媒体とするエネルギーシステムが根幹になっています。地球温暖化への危惧から再生可能エネルギーへのシフトを進めようとしていますが、現在でも化石燃料を用いるエネルギー輸送システムが主要なエネルギー供給手段になっています。しかし化石燃料は環境負荷への悪影響が大きいことや、資源の偏在と枯渇の問題に直面しています。

化石燃料に代わるエネルギーの輸送媒体として、水素の利用が以前から考えられてきました。水素の利用について、従来から利用されている一次エネルギーから生成する分については、あまり状況は変わりませんが、現在では多くの革新的ともいえる技術が発表され、実用化が進んでおり、これらを導入することにより、源流から最終利用までの流れで、総合的な効率や利便性を著しく改善する効果が得られるめどが着きつつあります。

また、再生可能エネルギーは、国や地域により偏在していますが、エネルギーの供給と消費の場所的・時間的なずれを、マッチングさせるさせるための手段として、また、水というありふれて環境に及ぼす影響が少ない物質を循環させることにより、極めてスマートなエネルギー循環システムが形成される可能性が大きいです。

 

ただ、水素はその性質から、取扱いが難しく、越えなければならないハードルも多々あります。
例えば、水素は常温で気体であることより、エネルギー密度が低いこと。燃料としての水素の取扱いが歴史的にハードルが高いものであること。これは、今の若い方にはあまりなじみがないかもしれないですが、ドイツの飛行船ヒンデンブルグ号の爆発事故が影響していると考えられます。
この他、分子の大きさが小さく、漏洩しやすいこと。材料設計者にはなじみがあるかもしれませんが、水素脆性による材料劣化など、エネルギー媒体としてのデメリットも多くあり、その潰し込みに多くの技術者が取組んでいます。

 

日本での水素エネルギーの研究は古くから行われており、1973年には、太田時男先生らが中心となって、水素エネルギー協会が設立されました。水素エネルギーに関する大々的な研究開発は、1974年に始まったサンシャイン計画(Sunshine program)に始まります。その後、1992年からのニューサンシャイン計画(New Sunshine program)に続いて、水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET :world energy network system)の 研 究 開 発 第 Ⅰ 期(1993~1998年 度)お よ び 第 Ⅱ 期(1999~2003年度)計画を経ていました。この第Ⅱ期は2002年度に前倒しで終了し、2003年度からは、NEDOが担当する、水素安全利用等基盤技術開発(Development of Safe Utilization Technology and an Infrastructure for Hydrogen Use)が、2003年から2007年までの5か年計画として実行されました。
その後については、燃料電池向けなどの特定用途の研究が進みましたが、近年はカーボンニュートラルの流れから、いろいろな用途への研究と、製造方法についても多岐にわたる研究が進められています。

水素は、クリーンエネルギーの代名詞のように官民挙げて推進していますが、製造,輸送,貯蔵,利用のすべてを包括するトータルシステムとして、地球環境保全性について、長期的な観点から十分な優位性が認められなければなりません。また、既に50年以上研究が進められていますが、まだまだ経験の乏しいエネルギー媒体を用いるという意味では、最新技術を踏まえた標準の制定や関連法規の整備なども重要な課題となってきます。

図1に示すように水素エネルギーはエネルギーシステムの中核を担う重要な存在であり、大きな可能性を秘めています。

石油などの旧来のエネルギー資源について、そのほとんどを海外からの輸入に頼らざるを得ない日本にとって、水素利用技術の開発は、世界のエネルギー事情、環境保全を、改善・リードできる立場にあるといえます。

 

図1水素利用クリーンエネルギーシステム系統図

 

 

 

引用文献
機械工学便覧6th ed γ05-07章
「水素エネルギー」は何がどのようにすごいのか?  経済産業省資源エネルギー庁HP
     https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/suiso.html

 

引用図表
図1水素利用クリーンエネルギーシステム系統図 機械工学便覧6th ed γ05-07章掲載図を一部改変

 

ORG:2023/03/09

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