転がり軸受の内部すきま

転がり軸受の内部すきま(Internal clearance of rolling bearing)

 

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1.転がり軸受の内部すきまとは

軸受内部すきまとは、軸またはハウジングに取付ける前の軸受だけの状態で、図1 に示すように内輪または外輪のどちらかを固定して、固定されていない軌道輪を、ラジアル方向またはアキシアル方向に移動させたときの軌道輪の移動量をいいます。

移動させる方向によって、ラジアル内部すきままたは、アキシアル内部すきまといいます。

計算式は、

\( ラジアル内部すきま = \delta \)

\( アキシアル内部すきま = \delta_{ 1 } + \delta_{ 2 } \)

図1 軸受内部すきまの定義   NTNカタログ

 

軸受内部すきまを測定するには、軌道輪に適当な測定荷重を付加して、測定値を安定させます。そのため、すきまの測定値(測定すきま)は、付加される測定荷重による弾性変形量だけ、真のすきま値より大きくなります。

軸受の大きさにより、測定荷重は定められており、測定荷重による弾性変形量は測定荷重により内部すきま別に求められているので(深溝玉軸受の場合を表2に示します)、表に示す値だけ測定量より減らさねばなりません。

また、ころ軸受では、この弾性変形量は無視できる値です。

表2 測定荷重によるラジアル内部すきま補正量(深溝玉軸受)   NTNカタログ

 

ベアリングメーカが発行しているカタログを参照すれば、軸受系識別、内部すきま別に内部すきま量が示されています。表3 に深溝玉軸受のラジアル内部すきまの例を示します(表3:NTNカタログより抜粋)。

図3 深溝玉軸受のラジアル内部すきま

 

2.軸受内部すきまの種類と選定基準

軸受の運転状態でのすきま(運転すきま)は、取付け前の軸受単体での内部すきまより、はめあいおよび内輪と外輪との温度差によって、一般的には減少します。
運転すきまは、転がり軸受の寿命や、発熱、振動、騒音に影響するので、最適値を取るようにしなければなりません。

 

軸受の種類によってはない場合もありますが、内部すきまの小さいものから大きい順に

C1,C2,CN(普通すきま),C3,C4,C5

と決まられています。このほかに回転時の振動、騒音を低減させるため小形電動機用に、CMという内部すきまがあります。これは、C2とCN(普通すきま)との間のすきま値になります。

理論上は、軸受寿命が最大になるのは、定常運転状態で軸受の運転すきまが、わずかに負になるときです(図4)。ただ実際上、最適条件を維持することは非常に困難です。何らかの使用条件の変動により、負のすきま量が増加すると、急激に寿命が低下し、発熱を招きます。ですから、一般的には運転すきまがわずかに正のすきまを取るように、初期の軸受内部すきまを選定します。

通常の運転条件では、内部すきまが普通(記号;CN)を適用すれば、最適な運転すきまになります。

表5 にCN(普通すきま)以外の内部すきまを適用する例を示します。

図4 軸受すきまと寿命比   NTNカタログ

表5 CN(普通すきま)以外の内部すきまを適用する例   NTNカタログ

 

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3.  運転すきまの計算

軸受の運転すきまは、取付前のフリーな状態の軸受内部すきまから、はめあいによる内部すきま減少量および、内輪と外輪の温度差による内部すきま減少量を減じて、求めることができます。

\( \Delta_{ e } = \Delta_{ 0 } – ( \delta_{ f } + \delta_{ t } ) = \Delta_{ f } – \delta_{ t } \)   (式1)

ここで

\( \Delta_{ e } \) :運転すきま (mm)

\( \Delta_{ 0 } \) :軸受内部すきま(初期) (mm)

\( \Delta_{ f } \) :残留すきま(組込み後のすきま) (mm)

\( \delta_{ f } \) :はめあいによる内部すきまの減少量 (mm)

\( \delta_{ t } \) :内輪/外輪の温度差による内部すきまの減少量 (mm)

 

3.1 はめあいによる内部すきまの減少量

締め代を与えて、軸受を軸またはハウジングに取付けると、内輪は膨張し外輪は収縮するので、

軸受の内部すきまは減少します。

内輪または外輪の膨張量あるいは収縮量は、軸受形式,軸またはハウジングの形状、寸法および材料によって異なるます。

しかし、おおよそ有効締め代の 70 〜 90%になります。

\( \delta_{ f } = (0.70 ~ 0.90) \Delta_{ deff } \)   (式2) 

 

ここで

\( \delta_{ f } \) :締め代による内部すきまの減少量 (mm)

\( \Delta_{ deff } \) :有効しめしろ (mm)

 

3.2 残留すきま

各軸受ごとの膨張率,収縮率を用いて締め代によるすきまの減少量を計算した場合、残留すきまはの計算は、2種類の方法で行われます。

 

1.各寸法が正規分布に従うとして計算

初期すきまや、軸受内輪内径、軸受外輪外径、軸外径、ハウジング内径が正規分布に従うと仮定して、残留すきまをある不良率の範囲として統計的に求める方法です。

各寸法とすきまが正規分布に従うとし、残留すきまの標準偏差をσ⊿fとすると、外れる範囲が0.26%(±3σ⊿f)の場合、残留偏差は次式で示す範囲で表されます。

 

\( \Delta_{ f } = \Delta_{ fm } \pm 3 \sigma_{ \Delta f } \)   (式3)

 

ここで

\( \Delta_{ fm } \):残留すきまの平均値 (mm)

\( \sigma_{ \Delta f } \):残留すきまの標準偏差 (mm)

 

残留すきまの平均値と標準偏差については,ベアリングメーカのカタログに記載されていますので、ご参照ください。

 

2.直和による計算

使用条件が厳しく、最悪状態で計算したい場合は、各寸法の最大値,最小値を用いて直和計算を行います。

\( \Delta_{ f max} = \Delta_{ o max} – \lambda_{ i } \Delta_{ d min } – \lambda_{ o } \Delta_{ D min } \)   (式4.1)

\( \Delta_{ f min} = \Delta_{ o min} – \lambda_{ i } \Delta_{ d max } – \lambda_{ o } \Delta_{ D max } \)   (式4.1)

 

ここで、
\( \Delta_{ f max }  \Delta_{ f min } \) :残留すきまの最大値,最小値 mm
\( \Delta_{ o max }  \Delta_{ o min } \):初期すきまの最大値,最小値 mm
\( \Delta_{ d max }  \Delta_{ d min } \):内輪しめしろの最大値,最小値 mm
\( \Delta_{ D max }  \Delta_{ D min } \):外輪しめしろの最大値,最小値 mm
\( \lambda_{ i }  \lambda_{ o } \) :内輪膨張率,外輪収縮率

 

 

4.標準すきま以外の隙間を使用する理由

4.1 C3すきま以上を使用する理由

C3すきま以上の大きなすきまを必要とする条件を、以下に示します。
(1)重荷重や衝撃荷重のため、締め代を大きくする必要がある場合。
(2)内輪、外輪の両方に締め代が必要なときや、内・外輪とも、或いは片方が固い嵌め合いにする必要がある場合、内輪外径、外輪内径とも、締め代の70~80%変化します。その分を考慮してラジアル内部すきまの大きな軸受を採用する必要があります。
(3)高温雰囲気の場合、特に内輪の方が外輪より温度が高い場合
(4)高速回転、例えば二極の高圧モータの軸受
(5)軸たわみが大きい場合、取付誤差を許容しなければならない場合

 

4.2 C2すきま以下を使用する理由

C2すきま以下の小さいすきまを、必要とする条件を、以下に示します。
(1)内輪、または外輪の締め代が小さい場合
(2)騒音や振動を低減したい場合

 

4.3 CMが使われる例

CMは電動機用軸受けのラジアル内部すきまで、深溝玉軸受と円筒ころ軸受に規定されています。
電動機で静粛を必要とする場合に用いられます。

 


 

まとめ

・転がり軸受は、組立時の寸法変化や、運転中の温度変化による締め代の減少などを考慮して、初期状態では内部すきまが存在しています。

・内部すきまの大きさは、一般的な運転条件の場合に最適な運転すきまになるCN(普通すきま)を挟んで、内部すきまの小さい側に、C2,C1が、大きい側にC3,C4,C5が決められています。

 

 

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参考文献
NTN総合カタログ
改訂・増補版 機械現場のQ&A   宗孝  化学図書出版  H18年

 

引用図表
図1 軸受内部すきまの定義   NTNカタログ
表2 測定荷重によるラジアル内部すきま補正量(深溝玉軸受)   NTNカタログ
図3 深溝玉軸受のラジアル内部すきま   NTNカタログ
図4 軸受すきまと寿命比   NTNカタログ
表5 CN(普通すきま)以外の内部すきまを適用する例   NTNカタログ

 

ORG:2021/09/08

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