1.3 コロージョンからエロージョンへの遷移

1.3 コロージョンからエロージョンへの遷移

コロージョンもエロージョンも流体が作用して発生します。ただ、これらは損傷の形態が大きく異なります。コロージョンが化学的な損傷であるのに対し、エロージョンは機械的な損傷です。これらは、工学的には対となって使用されます。
もう少し詳しく説明します。
コロージョンは、常温では水や水溶液中で金属は電池作用(電気化学的反応)により陽イオンとして溶け出します(湿食)。また高温のガス中では酸化などの化学反応によって損耗、劣化していきます(乾食)。日本語では腐食といいます。
これに対して、エロージョンは、固体材料(金属とは限りません)が、流体から動的な機械作用を受けて、材料表面から物質が除去されていく現象です。その除去量は腐食と比較してはるかに大きいスケールになります。当然損傷の度合いはコロージョンと比較して大きくなります。

図1:流速と腐食速度

図1:流速と腐食速度

エロージョン・コロージョンが、流体の流速の影響を調べた実験結果を、図1に示します。図1は軟鋼製の円柱試験片を淡水中で回転試験をさせた場合の腐食速度と流速との関係を示しています。
(1)流体が静置している場合や低流速域(層流域)では、流速が増加すると流体の境界層厚さが減少して、酸素の供給速度が増加して腐食速度が大きくなります。
(2)乱流域になると、乱れにより酸素の供給は増加するので腐食速度は増加します。しかし、一方で金属表面に腐食生成物を生じて、これが保護皮膜を形成し全体としては腐食速度は減少します。
(3)さらに流速が増大すると、流速が皮膜破壊開始速度(breakway velocity)に到達します。そうなると水流によるせん断力や水流の衝突エネルギーによって、保護皮膜がはぎ取られて、金属表面が露出して、水流との反応物質や生成物質の物質移動(拡散)が促進されるようになります。その結果腐食が加速されます。この現象が、エロージョン・コロージョンになります。乱流腐食、衝撃腐食と呼ばれるものもこのエロージョン・コロージョンの現象を表しています。

ここで、注意しなければならないのは、ステンレス鋼やNi,Al、Cu,Pb及びその合金は皮膜によって耐食性を保証していますので、このエロージョン・コロージョンの不具合を発生しやすいことです。

 

図2:流速と腐食/潰食速度

図2:流速と腐食/潰食速度

また、図2に銅合金の場合について、コロージョンからエロージョン・コロージョンへの遷移についての流速の影響を示します。5つの領域に分けられており、領域Aが層流域、領域Bが乱流域になります。領域Cの開始点が皮膜破壊開始速度で、領域Dでは金属表面が腐食環境にさらされるようになり、領域Eでは皮膜が完全に破壊されて再不働態化が出来なくなって金属自体が腐食されるようになります。領域CからEが、エロージョン・コロージョンの発生範囲で、エロージョンにより腐食が加速される腐食が支配因子となる現象です。
流速が速くなり領域Eを超えると皮膜だけでなく金属自体が機械的に除去されるようになりエロージョンが優勢となります。従ってコロージョンの影響は相対的に小さくなります。

流速が増加することにより、コロージョン→エロージョン・コロージョン→エロージョンと発生する現象は変化します。流速が15m/secを超える流速になると、気-液系のキャビテーション・エロージョンが発生するようになります。
また、固-液系のスラリー流では高速でなくてもエロージョン・コロージョンやエロージョンが発生します。