1.7 エロージョン現象の利用   ものづくり、ひとづくり

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1.7 エロージョン現象の利用

エロージョン現象は、材料の損傷という観点からは良くない現象です。しかし、これを積極的に利用する技術があります。例えば、切断、粉砕、サンド・プラスト、ショット・ピーニング、高圧水、スパッタリング、イオン・インプランテーション,スパーク加工などがあります。

ここでは、水を高圧または超高圧に加圧して、そのジェット噴流のエネルギーを利用する技術として、採鉱(mining)、切断(cutting)、洗浄(cleaning)を取り上げます。

1 水力採鉱(hydraulic mining)

エロージョンを利用する技術としては、歴史的には工業分野に始まります。1850年代アメリカのゴールドラッシュで、金の選別と輸送に水力が利用されてから、金や鉄鉱石、宝石の採鉱に高圧ジェットが利用されました。1930年代には旧ソビエト連邦で石炭の採掘に水力を利用する水力採炭の実用化研究が行われ現在まで安定した技術として使われています。採炭、採鉱時の水圧は、10MPaから350MPa程度の高圧水が使用されています。

石油井戸の掘削に水ジェットを使う技術が1958年にカーバイトノズルの導入により実用化されました。通常の掘削速度が10m/hrに対して、水圧70MPaの水ジェットで90m/hrまでに高速化されました。

2 切断(cutting)

(1)水力切断(hydraulic cutting)
カナダ(NRC)で、研究が開始され、55MPaの水圧で果実の切断が試験されました。それ以後は、木材切断(100MPa)、チューブの切断(275MPa)、靴皮の裁断などに利用されており、色々な用途に使用されています。切断時の取り代が少なくすることができることより食品の切断に使用されています。また、医療の手術用メスにも使用されています。

(2)アブレシブ切断(abrasive cuting)
研磨材を含んだ水ジェット切断は、昔から大理石の彫刻に0.69MPa程度の低圧のジェットが使用されてきたが、高圧の水ジェット発生機が実用化されるようになり、複合材料(FRPのボート、鉄筋コンクリートなど)の切断に威力を発揮しています。

3 洗浄(cleaning)

(1)水力洗浄(hydraulic cleaning)
水は従来からも洗浄剤として使用されてきています。更に、水ジェットとして比較的高圧の水が洗浄に使用されています。例えば、100MPaの高圧ジェットにより、鉄筋コンクリートのコンクリートを鉄筋から除去する作業に使用されています。
この他、熱交換器の伝熱管の汚れの除去、船舶の洗浄、滑走路に付着したタイヤゴムの除去などに使用されています。
また、低圧水のジェットは、下水溝や配水管の洗浄、成形型の洗浄などに使用されます。

(2)アブレシブ洗浄(abrasive cutting)
洗浄用には、15メッシュ以下の粒子が実用化されています。