1.1 機械部品の損傷(Damage of machine parts)

1.1 機械部品の損傷(Damage of machine parts)
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1.製品の破損、破壊
機器装置や構造物が、使用中に突然破損したり、場合によっては原形をとどめない程度まで破壊されることがあります。それらの製品は、法定で決められたり、実績に基づいた安全係数を考慮して設計されるのが通常です。従って、破損や破壊は本来発生するものではないはずです。
しかし、実際には社会的に大きな問題となる事故も少なくありません。破損や破壊の原因は、色々あります。破壊の仕方によっても、静的破壊や、動的破壊、疲労破壊、遅れ破壊、応力腐食割れなど、多種多様な形があります。
最近では、省資源、省エネルギー化の要求から、軽量/高速化した製品の需要が高まっています。また、設計時の解析技術の進展、新素材の開発、実用化から、製品の取り扱いに対する尤度が減少して、破損、破壊現象も複雑化しているように思われます。
従って、破損、破壊原因の解明や、再発防止に対して、従来以上の広い視点で、物理的、化学的、冶金学的、設計、加工、材料に至るまで、あらゆる観点からの調査、検討が必要です。
2.機械部品の損傷
使用中の機械部品が、使用できなくなる要因として、大きくは4つの現象が考えられます(表1.1.1)。 順に見ていきましょう。
(1)疲労:
部材に付加される繰返し負荷応力により破壊する現象。破損/破壊現象の90%を占めるといわれています。疲労による破壊は、通常目で見て大きく変化するものではなく、突然破壊が起きるため事故を予測することが非常に困難です。
(2)摩耗:
部材が焼付いたり、すり減って使用できなる現象。比較的損傷の進行が遅く、目で見て確認できるので、比較的対応しやすい損傷形態です。
(3)錆び:
鉄材の赤錆や、腐食ピット(孔食)の発生などにより使用できなくなる現象。摩耗と同様、比較的損傷の進行が遅く、また目視確認も通常は容易にできるので、比較的対応しやすい損傷形態です。
(4)衝撃:
部材が衝撃荷重を受けて破壊する現象。疲労破壊と同様、破壊を目視で確認できないため非常に危険性の高い損傷形態です。
3.破壊の要因
使用中の部材が、破損/破壊する場合、ほとんどが何らかの形で、その部材の破壊部分に降伏強度以上の力が静的もしくは動的に作用しています。設計上に不備が無い限り無負荷状態で破壊することはほとんどありません。
また、破壊現象のおおよそ90%が環境も含めた繰返し負荷による疲労破壊で、残り10% が落下による破損もしくは不注意による破損といわれています。従って、疲労破壊を防止することができれば、破壊のほとんどは回避できます。
古い資料ですが、航空機用構造部品192例について、破壊の原因を調査したところ、設計ミスによるものが56%、材料に起因するものが30%、切削加工、組立、使用条件の不適合によるものが12%、熱処理が不適切によるものが3%の結果が得られています。
また、機械部品470例について、設計ミスによるものが37%、過負荷によるものが28%、切削加工、溶接、組立ミスによるものが17%、熱処理が不適切によるものが13%、材料の金属学的な不適合が8%という報告があります。
何れも、設計ミスによるものの占める割合が大きいことが読み取れます。機械加工の適切性も含めた、製品設計が重要なことがわかります。
表1.1.2に、アメリカ金属学会による、部材の破壊損傷原因を、不良要因別に分類したものを示します。
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参考文献
100事例でわかる 機械部品の疲労破壊・破断面の見方 藤木榮 日刊工業新聞社
フラクトグラフィとその応用 小寺沢良一 日刊工業新聞社
機械部品の破損解析 長岡金吾 工学図書
Fractography ASM Handbook Vol.12 ASM International
引用図表
[表1.1.1] 機械部品の損傷要因 機械部品の疲労破壊・破断面の見方
[表1.1.2] 不良要因別にまとめた破壊損傷原因 機械部品の疲労破壊・破断面の見方