1.4 フラクトグラフィ(fractography)

1.4 フラクトグラフィ(fractography)

破壊過程では、荷重の大きさや加わり方によって特徴的な幾何学的な模様や形状が破面に形成されます。この破面の状態を、目視や顕微鏡で観察して、破壊機構や、破壊の原因、負荷応力の大きさ/方向などを究明する方法を、フラクトグラフィといいます。 フラクトグラフィは、破面を観察する際の倍率に応じて、3段階に分類することができます。

(1)等倍から高々数十倍程度の低倍率で、mmレベルの観察を行う、マクロフラクトグラフィ(macrofractography)
(2)数千倍程度までの高倍率で、µmレベルの観察を行う、ミクロフラクトグラフィ(microfractography)
(3)さらに高倍率で、nm(ナノメートル)レベルの観察を行う、ナノフラクトグラフィ(nanofractography)

これらは、それぞれ得られる情報が異なるので、破壊原因を究明する際には、通常は複数の方法が組み合わせて用いられます。

1. マクロフラクトグラフィ(macrofractography)

マクロ破面の観察は、通常破面解析の第一歩となります。通常は最初に,肉眼あるいは、実体顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)による低倍率観察で行います。 マクロ破面の観察では、破面に現れる特徴的なパターンにより破壊機構が推定できます。また、破断部と構造物全体との関連も把握できるので非常に重要な役割を果たします。

2. ミクロフラクトグラフィ(microfractography)

ミクロ破面の観察は、一般的には走査型電子顕微鏡(SEM )や、共焦点型レーザ走査顕微鏡(LSM:con-focal laser scanning microscope)を用いて行います。SEM は倍率可変域が大きく(一般的には10~10,000倍程度)、マクロ破面とミクロ破面の関係付けが容易であり、また焦点深度が深いため凹凸の大きな破面の観察に適しています。 最近では分解能の向上等、改良が加えられた電界放出型SEM(FE-SEM:field emission SEM)や、三次元の形状計測が可能な三次元SEM(TOPO-SEM)が開発されており、破面解析に適用されています。 LSM(分解能;0.01 µm)は、 SEM(分解能;数 nm)に比べると解像度は劣りますが、 (1)大気中での高倍率観察が可能
(2)非電導性材料もそのまま観察が可能
(3)焦点深度が無限大
(4)三次元の表面形状を非接触で計測可能 などの特徴があります。

3. ナノフラクトグラフィ(nanofractography)

ナノメートルレベルの観察は、走査トンネル顕微鏡(STM:scanning tunneling microscope)や原子間力顕微鏡(AFM:atomic force microscope)等、走査プローブを使用する形式の顕微鏡が使用されています。 STM や AFM は分解能が他の形式の顕微鏡と比較して格段に高く(理論分解能:0.01nm)、極微小領域の高精度の三次元形状計測が可能になっています。

4. X 線フラクトグラフィ(X-ray fractography)

1項から3項までの方法を補完するものとして、 X 線フラクトグラフィと呼ばれる手法が用いられる場合があります。 破面近傍の塑性変形量や残留応力を、破面に X 線を照射して得られる X 線回折により求める方法です。計測には X 線回折測定装置が用いられます。

 

参考文献
100事例でわかる 機械部品の疲労破壊・破断面の見方  藤木榮 日刊工業新聞社
フラクトグラフィとその応用   小寺沢良一   日刊工業新聞社
機械部品の破損解析   長岡金吾   工学図書
Fractography   ASM Handbook Vol.12   ASM International